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ミスター・セラピー  作者: Satoru A. Bachman
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第3章 頭なでなで野郎(Ⅲ)

 第3章 頭なでなで野郎(Ⅲ)


 数秒の間、息が出来ず、げほげほ咳き込んだ。強打した腹と擦りむいた腕や足が痛み、隼人の目からぼろぼろと涙がこぼれた。泥だらけになって芝生の上に倒れ込んだ隼人をピーが捕まえると、馬場とスカンクも走って息を切らしながらすぐにそこへ来た。

「ほら、立てよ、頭なでなで野郎」

ピーがそう言い、乱暴に隼人の胸倉をつかんで立たせた。

「なに泣いてんだよ、だっせえな」

額を隼人の顔に寄せてそう言うピーの嫌な臭いがする息が顔に吹きかかる。タバコの臭いと便臭が混じったような刺激臭。

いじめる獲物を見つけて嬉しそうににんまりと笑う馬場が近寄ってきて、隼人の腹や顔を殴りつけた。再び芝生の上に倒れこむ隼人。うつ伏せになった隼人の髪を馬場が引っ張り上げた。頭が持ち上がるほど引っ張り上げた。

「いてーよ、いてーよ…」

泣いて弱々しく震える声を上げる隼人の顔に向かってスカンクが尻を向けた。隼人の額に当たってしまいそうなくらい目の前に迫ったスカンクの尻。ただでさえ、うんこ臭いその尻から“ぶぼぼっ”と大きな屁が放たれた。腐った卵と蒸した豚肉と糞が混じったような悪臭に思わず「おえええっ」と先ほど食べたチョコレートバーを戻しそうになったが、なんとか堪えた。隼人のそんな様子を見て馬場とピーとスカンクはげらげら笑っていた。

パァァンッ!!

川岸のほうから銃声のような凄まじい音が響き渡った。



「またいじめかよ、馬場。かっこ悪いな」

煙を吹く火薬銃を手に持った清野信也が言った。その隣にはガスガンを構えたエド・ケリーと杉田知宏がいた。信也、エド、ともは隼人のクラスメイトだ。馬場とピーとスカンクの笑い声がたちまち止んだ。

「もうやめろよ、泣いてるだろ」

「やり過ぎなんだよ、お前らは」

エドとともも3人の悪ガキに言った。

馬場がつかんでいた隼人の頭から手を放し、

「なんだよ、てめえら!正義ぶってんじゃねえよ」

と怒鳴り立てて信也たちに向かって中指を立てた。

スカンクがそばに転がっていた石ころを拾い、川岸の小道に立つ信也たちのほうへ投げた。それはエドの足元に落ちて彼のスニーカーのつま先をかすった。

「やったな。一発仕返しさせろ」

エドはそう言うと、構えていたデザートイーグルのガスガンの引き金を引いた。銃のスライドがブローバックし、発射されたBB弾がスカンクの右腿に命中した。ピチンッとズボン越しに弾が皮膚に当たる痛々しい音が響いた。

「あううっ…」

スカンクが右腿を押さえて苦痛のうめきを漏らした。

ともも構えていたコルト・ダブルイーグルの空気銃をぶっ放した。信也は火薬銃を乱射した。

パァンッ!パァンッ!パァンッ!

悪ガキたちは後退りながらも石を拾っては信也たちのほうへ投げつけ、応戦した。

エドがまたデザートイーグルの引き金を引いた。弾は馬場の耳たぶに命中した。

「ああっ!」

耳を押さえて高く裏返った悲鳴を上げる馬場。

パァンッ!パァンッ!

「うわあああっ、やめろよー!」

火薬銃の音にビビッてピーピー泣きながら逃げるピー。

「てめえら、おぼえてろ!ぶっ殺すからな」

馬場がそう叫んだ。

そうして悪ガキたちは走り去っていった。

「絶対にぶっ殺すからな!」

遠く離れていきながらまた馬場が叫んだ。





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