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ミスター・セラピー  作者: Satoru A. Bachman
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第2章 小学校時代(Ⅳ)

 第2章 小学校時代(Ⅳ)


 あるとき、隼人はお小遣いをもらってルンルン気分で桜舞町の住宅地を駆け抜け、千葉市街から成田方面へと続く国道51号線に出て、その通り沿いにある駄菓子屋のどどん屋を目指した。3枚の100円玉を大事に握って、どどん屋に着くと、大好きなスーパービッグチョコとブタメンのベビースターとフィリックスの10円ガムを3つ買った。駄菓子屋を出て、スーパービッグチョコをむしゃむしゃとむさぼり食いながら国道を離れて住宅地を歩き、特に理由もなく桜舞貝塚公園に向かって歩いた。真っ赤に染まった紅葉の木々が見える公園の前の曲がり角から5人の隼人よりも大きな少年たちが曲がってきた。その連中が誰かはすぐに分かった。同じ学校に通う忌まわしい上級生たちだった。グループの中心にいた豊丸慶が隼人を見てにんまりとした。彼は頭部に包帯を巻いていた。

「よう、頭なでなで野郎」

その隣にいたデブの平林もにやにや笑いながら右手の拳を握って左手の掌にパチンと叩き付けた。2人は先日の復讐をしようとしている。

「うわぁっ、やべ」

隼人はそう言い、踵を返し、一目散に走った。

「おい、待てよ!クソガキ」

後ろから豊丸が叫ぶ声がした。

隼人は町の北へ向かって突っ走って桜舞霊園に辿り着くと、墓地のところどころに生えているコウヤマキの木の陰に隠れてぜえぜえ言っていた呼吸を整えた。走って逃げている途中に手に持っていたスーパービッグチョコはどこかへ行ってしまった。そんなことを残念に思っている暇は無かった。

「おい、出てこいよ、郷野!」

くそったれの上級生たちも霊園まで来て隼人を探していた。隼人は木の陰から離れ、無数の墓石が並ぶ列の間の通路に入り、かがんで歩いた。墓石の陰から顔を出し、上級生たちの様子を伺おうとした。それが痛手だった。追いかけてきていた豊丸の仲間の1人と目が合ってしまった。そいつは佐野晃一といい、顔は醜くて頭も悪いがいつも運動会でリレー選手に選ばれていたチーター並みの足を持つ男だった。

「いたぞ!」

佐野が叫んだ。

終わった。隼人はそう思った。あんな奴から逃げ切れる訳が無い。それでもできる限り突っ走った。醜い顔のチーター男に追い付かれ、Tシャツの襟をつかまれた。他の連中も駆けてきて、隼人はまず豊丸に背中を思い切り蹴られた。そして平林が左頬を殴ってきて、隼人の視界が一瞬、真っ白になった。佐野が髪の毛を引っ張ってきて、他の奴らにも更に一発ずつ蹴りを入れられた。隼人はその場で大声を上げて、顔を押さえて泣き崩れた。上級生の連中は隼人のポケットに入っていたブタメンのベビースターとフィリックスの10円ガムを奪って去っていった。





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