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ミスター・セラピー  作者: Satoru A. Bachman
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第2章 小学校時代(Ⅲ)

 第2章 小学校時代(Ⅲ)


 桜舞第二小学校の校庭には、林に囲まれた岩石園という庭園がある。文字通り、岩石がところどころにあり、子供たちが探検したり、遊んだりできるような林道になっている。2年生の秋頃、隼人はそこで歩き回るのが好きだった。たくさん並んだ岩の足場を片足でぴょんぴょん跳んで岩石園を一周してみたり、そのそばの鯉が泳いでいる池に石を投げたりした。鯉は一目散に逃げていく。当然、それを先生に見られて怒られることもあった。

 放課後、学童の時間にも隼人は1人で岩石園を探検していると、学年が2つ上の豊丸慶と平林敏生が絡んできて、小さな石を隼人のほうへ投げてきた。豊丸は日に焼けた威張りん坊の野球少年。平林は気の強いデブ。2人は意地の悪い奴らで、隼人はそんな2人が大嫌いだった。その悪ガキたちも変わり者で問題ばかり起こす隼人をいつも目の敵にしてくる。

「よう、頭触り虫!」

豊丸が叫んだ。

「これでも喰らえ!」

肥満児の平林が醜悪な太い腕で石ころを隼人のほうへ投げた。

「やめろよ、あぶねえな」

両手で顔をガードするように覆い、隼人は叫ぶが2人の上級生はお構いなしにまた石ころを拾い始めた。隼人も負けずに石ころを拾い、くそったれ共に見舞った。平林の足に命中し、そのデブは甲高い悲鳴を上げた。いい気味だ、なんて思う暇は無かった。豊丸がひっきりなしに投げてくる石が岩石の足場や木々に当たって跳ね返るパチン、パチンと耳障りな音が隼人のそばで響く。一発が隼人の背中に当たり、思わず「ああっ」と叫ぶ。足に石ころを喰らって怒った平林が走って追いかけてくるが、彼は岩石の足場でつまずき、転んだ。平林はでっぷりとした腹から地面に激突し、突っ伏して泣き出した。隼人は自分の拳より一回りは大きい岩石を拾い、豊丸から逃げ回った。逃げる隼人の数メートル先の地面に豊丸が投げた石が当たり、小さな穴が穿たれた。隼人は振り返り、手に持っていた岩石を投げた。それはあくまで“威嚇”のつもりだった。あんなに大きな岩石を人に向かって投げるのは危険だというのは、8才の隼人にも分かっていた。だけど、その隼人の手から放たれた岩石は“威嚇”なんかでは済まなかった。それは豊丸の前頭に命中した。威張りん坊の野球少年は額から血を流しながら、断末魔の叫びを上げた。両手で血だらけになった額を押さえ、その場にくずおれる豊丸。またやってしまった。隼人は顔面蒼白になった。彼は“校長室行き”になり、またこっぴどく叱られたということは言うまでもない。





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