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ミスター・セラピー  作者: Satoru A. Bachman
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第1章 ライオン組の変わり者(Ⅱ)

 第1章 ライオン組の変わり者(Ⅱ)


 隼人はレゴブロックで作った宇宙船を空想の中で飛ばして、隣で遊んでいた明夫のことを巨大な怪物と見立てて、「ピュー、ピュー」と光線を放つ。明夫も空想の世界で隼人を敵と見なし、レゴブロックで作ったピストルで発砲する。「バンッ、バンッ」意地悪な明夫はピストルの弾道を手で表現し、隼人にパンチをくらわせた。

「痛いよ」

痛がる隼人を見て、明夫はウルトラマンティガのゼペリオン光線を放つポーズを真似して「ドッカーン!!」と叫んだ。明夫は敵と見なした隼人を空想の中で光線でやっつけてしまったようだ。

 その日の昼寝の時間、隼人は教室内で寝ている子たちを見回る松永先生がそばにいるときは寝たふりをして、早く歩き去ってほしいと願った。先生がそばを離れると、隼人は頃合いを見計らって隣でぐっすり眠っている明夫の頭にそっと手を触れた。すぐに彼の“頭の中”が見えてきた。正確には、“見えた”というよりも、ラジオやテレビが電波を受信するように隼人の頭の中に他人の日常の様々な光景が浮かんでくるのだ。明夫は最近、誕生日プレゼントで買ってもらったウルトラマンティガの変身道具であるスパークレンスのおもちゃに夢中のようだ。そして、彼は自分が世界を救うヒーローだと思っている。なぜか、明夫の頭の中に隼人の姿が表れた。隼人は驚いた。なんで俺がいる?するとその“俺”の目が青く光り出し、顔や体が銀色に染まり、頭がとさかのように尖り出した。そして、明夫の頭の中の隼人の姿はイーヴィルティガ(ウルトラマンティガに出てくる悪者)となってしまった。さっき、明夫は隼人に向かってウルトラマンティガのゼペリオン光線の真似をした。彼は隼人のことをイーヴィルティガだと思っている。つまり、明夫がヒーローで、隼人が悪者ということだ。隼人は悲しくなった。


 その日の夕方の自由時間、隼人は明夫に戦いを申し込んだ。

「俺がティガだ!お前がイーヴィルティガだ」

隼人は明夫に飛びついて、顔を引っぱたいて髪を引っ張った。明夫も負けずに隼人の顔をつねって脚に蹴りを入れた。取っ組み合う2人は園庭から砂場へ転がっていき、明夫がそこに落ちていたプラスチックのおもちゃのスコップを拾い上げた。隼人もそれに対抗し、おもちゃのスコップを拾った。喧嘩が今度は見るからに危ないちゃんばらになった。明夫は半泣きだった。隼人はこいつをやっつけてやる、と死に物狂いだった。明夫が振り回していたスコップを手で押さえ、隼人は自分のスコップを明夫の頭頂部に思い切り振り下ろした。鮮血が飛び散り、明夫は断末魔の叫びを上げた。園庭から金切り声が響き、園長や松永先生がすぐに駆け付けた。明夫は頭を縫うほどのケガを負い、病院へ運ばれた。


 隼人はこっぴどく叱られ、その後はしばらく“戦い”はしなかったが、人の頭を触ることはやめなかった。人の頭の中を覗き、ときには面白がり、ときには怯えた。周りから見ると、隼人は人の頭に触り、謎の反応をする奇妙な子だった。





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