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アンラッキーセブン

作者: 梶野カメムシ
掲載日:2023/03/14




 十年前。夏の甲子園、決勝。

 横浜対神戸の試合は、2対1で横浜リード。

 だが7回裏、2(アウト)を奪うも走者(ランナー)は一、三塁。

 打席には四番の幕型(まくがた)を迎えた。

 対する横浜、投手は七星(ななほし)。超高校級の落下球(フォーク)を持つ野生児。

 小中学までバッテリーを組んだ二人だ。


 七星の投球は、鬼気迫るものだった。

 たて続けに2ストライク。最後は渾身のフォーク。

 幕型は振り(スイング)を止めたが、跳ね球を捕手が抑えて、審判は空振り三振を宣言。

 七星の雄叫びに、甲子園は沸騰した。


 横浜ナインがベンチへ向かう中、幕型に声をかける七星。

 最後に中指を突き立て、引き上げる。

 悪夢は、その直後に起こった。

 残塁した走者(ランナー)が、内野(ダイヤモンド)を周ったのだ。

 続く幕型が、平然と生還(ホームイン)する。呆然とする横浜ベンチの前で。

 振り逃げだった。


 振り逃げ成立の条件は、捕手の後逸ではない。

 3ストライク目で正しく捕球できなかった場合。跳ね球もこれに含まれる。

 幕型と神戸はこれに気付き、七星と横浜は気付かなかった。

 逆転した神戸はそのまま優勝、甲子園は沸きに沸いた。

 後に《魔の7回(アンラッキーセブン)》と呼ばれる、夏の珍事である。

 


「懐かしい映像、いかがでしたか? 七星選手」

 スタジオのオレは、苦笑いを浮かべた。

 日本のTVは相変わらずクソだな。

 WBCのため、一時帰国したことを軽く後悔する。

「今はメジャーで《七回登板の悪魔(アンラッキーセブン)》と呼ばれて、人気ですよね」

 その悪名を(くつがえ)すのが、どれだけ大変だったことか。

「あの時、幕型選手とはどんな話を?」

「ざまあみろ」だよ。

 天才のオレとID野球の幕型。最強だが最悪のバッテリーだった。

 やっとあいつに勝てたと思ったら、あのザマだ。

 涼しい顔で振り逃げしやがって。

 あいつこそアンラッキーセブンだ。

 顔も見たくねえから、メジャーに行ったんだ。


「その幕型選手ですが、WBC電撃参戦だとか」 

 おい。初耳だぞ。

「ここで幕型選手、ご登場です!」

 おい待て、おいっ!


 時計の針が、7時7分7秒を指した。



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