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愛を贈りつづける、おじいちゃん

作者: 木蓮

私はお寺の娘。


私の一日は、庭掃きから始まる。

檀家さんが、気持ちよくお墓参りできるように。

家族総出で朝早くに起きて、それぞれの持ち場を掃除する。


大変だけど、お寺の娘としての役目の一つだ。


ある日を境に、私は“あるおじいちゃん”と毎朝挨拶するのが日課に加わった。


「おはよう、今日もお掃除偉いねぇ」


「今日はちょっぴり寒いねぇ」


「今日はいい天気だねぇ」


おじいちゃんは毎朝私たちに挨拶をしてくれる。


私は住職の父におじいちゃんについて聞いた。


そのおじいちゃんは、大切な奥さんを交通事故で亡くしたのだった。


もともと事前にお墓を建てていた。

それはおじいちゃんが先に自分が死ぬからと、建てたお墓だった。

大切な奥さんが先に入るとは想像もしていなかった。


おじいちゃんは毎朝5時にお墓参りにきている。

雨の日も、雪の日も、一日も欠かさず…

毎日奥さんとお話をするために。


近所に住んでいないから、3時に起きて家を4時に出るそうだ。

トレッキングポールを使って、よっこらしょ。よっこらしょと…お寺の坂を登る。


奥さんは料理が大好きで、おじいちゃんは奥さんのためにガスコンロからIHに変えた。

それを奥さんはとっても喜んでくれたそうだ。


事故の日。

その日おかずが足りなくて、夕方奥さんはスーパーに出かけたそうだ。

“大切な旦那さんに喜んでほしいから”


だけど、その帰り道に事故にあってしまった。


毎朝おじいちゃんがお墓参りにくるのは、

きっと心の中で奥さんと繋がることができるからかもしれない。


だって奥さんと会話をしているときのおじいちゃんはとても幸せそうだから。


「お前さんの料理をまた食べたいなぁ」


いつかまたどこかで…

おじいちゃんと奥さんが再会できますように。


亡くなった今でも、毎朝会いにきて愛を送り続けるおじいちゃん。

きっと奥さんは、昔も今も、幸せだと思う。


「もうちょっと余生を楽しんでから会いにきてね。」

私は、奥さんがおじいちゃんにそう言っているように見えた。

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