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魔王国の殺人機械  作者: セセリテフ
2/3

第2話 現実世界の殺人機械

時間は少し遡る


1話とは違う世界のある研究所にて


「ここまでか…」


白衣を着た女が胸から血を流しながら、壁に座り込んだ。

ニヤニヤと笑う彼女の目の前には5人の銃で武装した男たちがいる。


「1人の女性に、大勢で詰めよっちゃって…私、何されるのかしら?」

そんな状況にありながらも、彼女の表情からは余裕が感じられる。

男たちのうちの1人が女に話しかけた。


「お前がテロ行為を行おうとしていたことは、もうすでに分かっている。」

「…」

「おとなしく自首しろ。そうすれば多少は罪が軽くなる。」

「…」

「お前はここで何をしていた?」

「…クク」

女は静かに笑い始めた。

「何を隠している?」

「…ヒヒ…」

「…この研究所を爆破する準備はすでに整っている。お前が何を開発していようが無駄だぞ。」

女は笑うのをやめない。

「…フフ…ハハハ…」

「笑っていないでさっさと答えろっ!」

男はしびれを切らしたのか、今も笑い続ける女に怒鳴りつける。


女はにやけた表情を崩さずに言った。




「もう遅いよ。」




突然、男たちのうちの一人の頭が爆ぜた。

「なっ…!?」

頭が爆ぜた男の近くには血まみれの大きながれきが転がっている。

立ったままひくひくと体を動かしたのち倒れそのまま物言わぬ死体と化した。

「誰だ!どこにいる!?」

4人は一斉に武器を構えるものの研究者の女と自分たち以外は誰も見当たらない。

「ウワァァァー!?」

自分たちのすぐ近くで叫び声がする。

男たちはすぐにそっちの方向を向いた。

すると3人にぽたぽたと生暖かい液体が降り注いだ。


―上か!?


しかし男たちが上を向いた先からは真っ二つになった彼らの仲間の死体が降ってくるのみであった。


警戒することも忘れ3人は茫然としていると、突然女がにやけたままつぶやく。



「…人類はもう滅亡するべき時代に入ったのよ…!」

そうつぶやいた後、血を出しすぎたのか研究者の女はにやけたまま絶命した。



突如天井が割れ3人のうちの一人の真上に何かが落ちてきた。

天井が割れる音と人がつぶれる音に反応した二人はその正体に驚くことになる。


「お…女の子…?」


そう、つぶれた死体の上に立つ自分たちを襲った者の正体は、見た目16歳ほどのどこかの学校の制服を着た少女であった。

その体は返り血に染まっていたが見る見るうちに血は消えていき、まるで何もなかったかのようにきれいになった。


―な、なんだこいつは!?


驚きながらも最後の一人となった仲間に素早く攻撃の指示を出す。

「撃てっ!撃てーっ!」



2人は距離を大きくとって、少女に銃撃を浴びせた。

しかし、銃弾はに当たるもののすべて弾かれるし、少女はまるで何もないかのように無表情でズンズン2人のもとへ近づいてきている。

「じゅ、銃が効かない…」

少女の歩みは少しも止まらない。


「ひっ、ひぃ!?」

「あっ、おいよせ!」

2人のうち一人が恐怖に耐えられなくなったのか、その場から逃げ出そうとする。

その様子を見た少女は近くの機械を壊し、中から鉄パイプを取り出して逃げ出す男にまっすぐ投げつけた。

「がはっ…」

男の胸に鉄パイプが刺さりそのまま倒れた。かひゅー、かひゅーとわずかに息をしているようだがもう助からないだろう。


(だ…駄目だ、どうしようもない…)

最期の一人となってしまった男に少女が近づいてくる。

(このまま死ぬぐらいなら…)

男は無線機を取り出す。

「聞こえるか!?今すぐ研究所を爆破しろ!」

男の叫びに無線機が答える。

『し、しかしあなたたはちまだ外に出ていないようですが…』

「いい!いい!そんなことは!もう俺以外の仲間はみんな死んだ!俺もすぐに殺される!」

『へっ、へぇ!?』

「やつを外に出すな!外に出たら世界が終わるぞ!?」

『や…奴って…?わ、わかりました…』

通信を終えた男は無線機を投げ捨てた。



耳に大きな爆発音が聞こえてくる。順調に爆破が進んでいるようだ。

少女も爆発音がする方向に顔を向けている。

「へっへっへっへっへ…」

男は笑った。これであのわけのわからないやつは吹き飛ぶ。仕込んだ爆弾はかなりの威力のものだ。生きていられるはずがない。


「じゃあな!クソガキ!」


二人は爆発で見えなくなった。





壊滅した研究所を十数人の人々が調査している。

その中には無線を受け研究所を爆破した男もいた。


「研究所に入ったメンバー5人と研究所内にいた女1人の死亡を確認しました。」

「そうか…残念だな…」

「…」

「…?あぁ、仲間が死んだのはショックだろうが…」

「いえ、それもありますが別のことです。」

「なんだ?」

「…私に爆破しろと頼んだメンバーは『奴を外に出すな』といっていました。しかし…」

「その『奴』の死体は見つかってないな…まぁかなりの爆弾を使ったんだろ?メンバーと研究所の女6人の死体を確認できたのも奇跡的だし、跡形もなく吹っ飛んだんじゃないか?ほかのやつが周りを見張ってはいるが特に怪しい気配はなさそうだしな。」

「だといいのですが…」


この後も捜査範囲を広めたものの、特に発見はなく『奴』は完全に消滅したものとして扱われた。



こうしてこの研究所にて計画されていた『人類滅亡作戦』は発動することなく終わり、平穏が守られた。






『この世界では』であるが…


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