弥生ひな様ー識別コードより……
識別コードhttp://ncode.syosetu.com/n2184dc/
第1作と成りました弥生ひな様の識別コードを拝借致しました。上記URL、本家も是非ご参照下さい
弥生ひな様ー識別コードより……http://ncode.syosetu.com/n2184dc/
身近なことというのはそこにある内はその大切さが見えないものなのかもしれない。
失ってはじめて気づくことがある。
当時小学生だった僕の場合、それは"色"が好きだという事。
でも、僕の目にはもう大好きな色が映る事は……ない。
生涯そうなるはずだった。
そう、彼女と出会うまでは......
これは色を失った僕とある悩みを抱えた彼女の出会いが起こした奇跡の……いや、努力の物語だ。
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僕の前に色鮮やかに広がっていた世界は突然白と黒の古ぼけた写真のような世界に移り変わった。
「母さん、僕の目......どうなっちゃうの?」
すがるように母さんの腕を掴むが、母さんと目が合うことはない。
心配した母さんに連れて行かれた数多の病院とその医者達が揃って頭を悩ませる原因不明の色判別力の低下。母さんにその答えが出せる訳がなかった。
色のない世界に不便ではない。
でもあまりにも素っ気なかった。
色がなくなり、初めに驚いた事は色がないだけで味がこんなに分からないという事だ。
「どう?貴方の好物のカレーよ?」
「ごめん。食欲が湧かなくて」
席を立ち自分の部屋に入り鍵を閉めた。せめて好物を用意してくれたのも母さんなりの励ましで、僕の為にとても頑張ってくれていると思う。
でもそんな行動の一つ一つが僕の申し訳ないという気持ちと、もう少しそっとしておいて欲しいという気持ちをチクチク、チクチクと刺激する。
さっきのカレーもそうだ。あんなに大好きだったカレーも、今の僕の目には濃い灰色液のかかった米にしか見えないし、そんな目に映るカレーでは味まで分からなくなる。
後で知った事だけど、人の味覚は匂いや見た目に強く影響されているらしい。色の見えない僕では何を食べても砂を噛んでるようにしか感じないのだ。僕にとって母さんの努力は、現実を突きつけられている様でむしろ……逆効果だった。
母さんは鍵のかかった部屋の前でよく泣いた。父さんとは合うたびにケンカになった。分かっている。分かっているんだ。でも、ダメだ。
失ったものがあまりにも大きくて、何故僕がこんな目にあうのか……なぜ僕なのか……そんなことばかりを考えてしまっては自己嫌悪に苛まれた。
ずいぶんな間、引きこもった。
その間ずっと泣いていた。なぜこんな目にあうのか。
その間ずっと悩んでいた。これからどうすればいいのか。
はじめは泣いて過ごす時間が多かった。でも、それは徐々に悩む時間に変わり、このままではダメだと言い聞かせる様になった。
そして、涙を流す事がなくなったある日、僕の目に今まで見えなかったものが見えるようになった。部屋の雑貨一つ一つに浮かび上がる文字、僕は後にそれを識別コードと呼ぶ事にした。
色を失う……なんて設定でしょう。素晴らしいですね。
自論ですが小説はもしも世界。一つ欠けた人がどう幸せになるかまでを描いた作品はすべからく満足感のある作品になると思うのです。今後が楽しみです




