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第八話 愛ゆえに それとも惨劇か

タイトルをハーレムを知らない作者が書いたハーレム小説から愛ゆえに それとも惨劇かに変えました。

今更ですが、酷いタイトルでしたからね。

 みんなが起きだした。

 ポケットの中の実包を数える。

 父から少しずつくすねてきたバードショット弾が五発。さっきガンロッカーから頂戴したスラッグ弾が九発。

 そのうち、適当に二発を銃に装填してあるから全部で十二発。三人を狩るのには十分だろう。

 あれ? 一色先生のロッカーにバードショット弾が一発合ったはずだから、手元のバードショット弾は五つしかない。ロッカーに置いてきてしまったのだろうか?

 だが、獲物はそれ以上に少ない。大丈夫だろう。それに実包の管理が甘いとどのような凶悪事件が起こるかを全国の銃所持者に教える良い機会となるだろう。

 とりあえず、これからの狩りで一番の脅威は身体能力の高い長月だ。次いで男の雑賀。あとの二人はどうにでもなる。

 雑賀が抵抗してきた場合は良い感じに痛めつけるしかない。

 息を殺して部屋の外の様子を伺う。

「あ――見て――るよ」

 遠くから長月の声が聞こえた。静かにドアを開けて外に出る。音を立てないように銃を構えて暗い廊下を進む。

 長月が見えた。コッチは暗闇が支配しているから見難いはずだ。

「だれ? ユイ? 加島?」

「加島のほうだよ」

 無視しようかと思ったが、警戒されてしまうのはまずい。緊張で声が震えそうだったが、なんとか平静に声を出せた。

「さっきすごい音がしたけど、なに?」

「さぁ? 雷でも落ちたんじゃない?」

 慎重に狙いを定める。これ以上近寄られたら散弾銃を持っていることがばれるかもしれない。

 息を軽く吸い、吐き出す。途中で息を止める。

 鳥撃ちと同じだ。

 動いていた照準が落ち着く。

 照準がピタリと長月に合う。

「加島? 何もって――」

 答えるのも面倒だったから身体に教える事にした。

 芳しい硝煙の匂いと供に反動で銃が持ち上がってしまう。

 スラッグ弾だったようだ。強烈な反動で照準がぶれて長月の右肩に命中してしまった。

 イノシシやクマなんかの大型の動物に用いられるソレを人間に撃ったから長月の左肩が抉り取られた。

 長月は悲鳴もなく座り込んでしまった。人間、自分のキャパシティ以上の事態が起こるとフリーズしてしまうらしい。

 続けざまにもう一発。今度はバードショットだった。

 無数の弾子が座り込んだ長月を文字通りひき肉に変える。

 なんだか可笑しい。

 クラスでは大きな顔をして男女を供にしているのに今はただの加工積の肉と変わらないではないか。

「クスクスク。誰とでも仲良く、明るく接する長月さんたら、クスクスクス。もう面影も無いなんて」

 どうしてだろう。さっきまでの緊張が蒸散してこの上ない喜びと充足感がわいてくる。

 雑賀を狙う害獣を駆除したことで愛洲を殺した時のような満ち足りた高揚が津波のように押し寄せてきた。

 きっと雑賀との愛が一歩自分に向かって近づいて来たからだ。

「ん、はぁ」

 ヤバイ。雑賀との愛が近づくとか考えただけで絶頂してしまった。

 呼吸を落ち着かせてトップレバーを押して銃身を折る。中から空薬莢を取り出して床に放り投げる。

 ポケットから新しい実包を取り出す。実包の先端を触ってソレがスラッグ弾である事を確かめる。そこに雑賀が出てきた。

「おい、長月? なが――」

 雑賀も固まってしまった。

「なにが、一体――」

「ねぇ。雑賀。私ね、雑賀のことが好きなの。好きで好きでどうしようもないの。朝起きる時も、お昼を食べるときも寝るときもいつもいつも貴方の事を想っていたの」

 言えた。いや、言ってしまった。どのタイミングで言うか悩んでいたが、口が反射的に叫んでしまった。

「これからね。雑賀の周りの有害鳥獣駆除を行うからね。心配しないで。すぐに終わるし、すでに策は考えてあるから雑賀さえ黙っていれば私たちは死が二人を分かつまでずっと、永遠に一緒だよ。ねぇ? 私に協力して。ねぇ」

 雑賀の後ろからまた人影が現れた。五刀と八重野だ。

 誰かの口から小さい悲鳴が漏れた。

 手にしたスラッグ弾を装填する。素早く五刀の頭に照準を合わせる。

 雑賀がはじかれたように五刀を抱きかかえて後退する。

「逃げるぞ! 八重野! 裏口を開けろ! 走れ走れ!!」

 威嚇程度にスラッグ弾を発射する。轟音と共に家の中が静かになった。

 廃莢してから新しいスラッグ弾を装填する。雑賀ったら、恥ずかしがっちゃって。でも大丈夫。必ず追いついてみせるから。

 ふと、砂浜でカップルが「あははは。捕まえてごらん」という図が浮かんできた。そう、捕まえてあげる。地獄の底まで逃げても私は捕まえに行くよ、雑賀。

 玄関に回って一色の靴を履く。玄関を開ける。

 雨と雷はまだ降り続いている。運がいい。雷の音にまぎれて銃声を気にする人もいないだろう。

 辺りをうかがえば正面の門から外に逃げようとする雑賀たちを見つけた。雑賀の目の前にスラッグ弾を使ってけん制する。雑賀たちは向きを変えて裏山のほうに逃げ出した。

 こっちもその後を追う。空が白みだしている。夜明けが近い。

 夜が明けて異変に気がついた住民がやってくる事だけは避けたい。

 兵は拙速を尊ぶと言う。早々に終わらせよう。

 バシャバシャと泥を飛ばしながら走る。

 八重野の背中が見えた。

 止まる撃つ。

 八重野が走り続ける。バードショットを入れておけばよかったと後悔する。

 落雷が響く。青白い世界の中に二人の獲物と雑賀を確認する。

 撃つ。

 八重野が倒れた。だがすぐに起き上がる。雑賀に支えられながら夜の闇に消えていく。

 だが慌てる必要はない。あの山は歩きなれている。すぐに追いつける。

 バードショットを二発装填する。

 八重野が倒れた位置では泥が派手に飛び散っている。雷の光が輝く。うっすらと赤い泥水が流れている。

 手傷を与えることに成功した。コレで獲物の行動範囲が狭まる。あと少しだ。あと少しで雑賀を手に入れられる。

 暗い山の中に踏み入れる。どこかからかベートーベンの歓喜の歌が聞こえる。いや、自分で鼻歌をしていた。

 悦びが私に近づいてくる音がする。そして獲物を狩る側であるという絶対の自信が心をくすぐる。

 ひき肉になった長月を思い出しただけで脊髄に快感の電流が流れるようだ。

 必死に逃げ惑う獲物を狩るという行為が今まで以上に楽しかったことが無い。

 頭の中がだんだんとハイになる。それを傍観しているハンターの自分が足元を探る。

 泥にはまった足跡。折られた枝。踏まれた下草。いつも通り、獲物の痕跡を追う。だがいつも以上に心が昂っている。

 居た。音を立てないように照準をつけるが、八重野と雑賀の距離が近い。

 どうしてあんなクソ女の近くに居るの? なんで私以外の女を近づかせているの?

 そうか。八重野に無理やり掴まれているんだ。だったら私が助けなきゃ。

 でも、この距離だと小さな弾子が飛び散るバードショットだと雑賀まで巻き込んでしまいそうだ。

 そうだ。いい事を思いついた。トップレバーを押してそこに入っているバードジョット弾を取り外し、ポケットからスラッグ弾を取り出して装填する。

 待っていてね。雑賀。



雑賀



 どうしてだ。どうしてなんだ。

 疑問は絶えないが、今は八重野の止血が優先だ。

 上着を脱いで左のふくらはぎに当てる。すぐに真っ赤に上着が染まっていく。

 八重野の顔は蒼白だ。

「長月が、長月が……」

 八重野は長月と幼馴染だったな。そんな暢気な事が頭に浮かんだ。

「ダメ。お酒飲んですぐに寝ちゃったから携帯のバッテリーが……」

 片手でジャケットと傷を押さえて俺の携帯も確認する。電源が切れている。長時間バッテリーが持つタイプだとセールした携帯ショップの店員を殴りつけたくなる。

 「長月……長月……」

 寒さのせいか八重野の身体が震えだす。

「すまん八重野」

 普段ならビンタが飛びそうだと思いながら彼女のポケットから携帯を取り出そうとした時、銃声が聞こえた。近い。

「キャー!!」

 八重野が立ち上がって走ろうとして、転んだ。「しっかりしろ」と言いながら抱き起こす。

 さらに銃声は響く。

「もういや! はるか! なんで! なんでな――」

 銃声。五刀の方を振り向く。

 流れるような黒髪は乱れ、磁器のようだった肌から無数の血があふれる。線の細い身体が宙を舞った。

 俺の愛していた五刀吉賀が。俺の五刀が。

 物静かなたたずまいに優しさが満ちている相貌を恐怖に引きつらせて倒れていく。

 俺の心臓がはやがねを打つ。

 危険を承知で五刀に駆け寄る。五刀を見ていると呼吸が止まりそうだった。

「さ、さいが、くん……わた、し、わ、たし……」

 ガサガサと草を掻き分ける音が聞こえた。振り向けば散弾銃を構えた笑顔の五刀がいた。

「やっと、追いついた」

 どこか艶を帯びた声に背筋が凍るのを覚える。この寒さは外気のせいじゃない。なんでコイツはこの状態で興奮していられるんだ?

「た、助けて、助けて。何でもするから、ねぇ! 友達でしょ!!」

「嫌だよ。そもそも私は八重野のことが嫌いだったし」

「そんな――ッ」

「相手を選んではぶりっ子ちゃんして。八方美人って言うんだっけ? 雑賀の前だけならまだしも他の男たちにも尻尾を振っちゃって……」

 五刀はスクと銃を構えて八重野を撃った。

 八重野の顔が霧散してなくなった。

 その時、加島の身体が小さく震える。その口から「んあ」と恐怖心と性欲を掻き立てる音が漏れた。こいつ、八重野を撃っていったのか?

「やっと、やっと二人きりになれたね」

 冷たい雨が降る中に掛かった冷たい言葉に心臓が鷲づかみにされた気がした。甘い感覚が吹き飛ばされる。

「私ね。雑賀の事を愛してる。小学校の頃から。ずっと。ずうぅうと。雑賀が誰よりも優しくて、強いのを知っているの。でもコイツ等と来たら雑賀の外見しか気にしていないんだもん。それなのに長月ったら今夜で既成事実を作って雑賀を自分のものにしようなんて。図々しいよね」

 加島が近寄ってくる。銃身は地面に向けられている。

 油断している。

 今なら銃を奪えないか? 無理だ。銃の扱いに加島は慣れている。動いた瞬間に撃たれるかもしれない。

 正々堂々と勝負してもダメだ。加島にばれないように泥を救いとる。

「ねぇ。雑賀。雑賀が黙っていれば私は犯人じゃなくなるんだ。全ての罪を一色に負わせるの。協力して。なんならこの事を弱みに私を強請ってもいい。私を、私だけを愛してくれるなら私に何をしてもいいよ。身体も心も雑賀のものだよ」

「だから、殺したのか?」

 「ん?」と加島が小首をかしげる。

「雑賀は私以外は必要なものって無いでしょ? 雑賀の全てが私で、私の全てがさい――」

 今だ。掴んだ泥を加島の顔に投げつける。目がつぶれた。その加島に体当たりする。

 加島は銃を掴んだまま弾き飛ばされた。加島は地面にしりもちをつきながらめくら撃ちをした。

 俺の頬を散弾が掠めたのか熱湯をかけられたような痛みが走った。

 もう一発撃たれるかもしれないから急いで身を屈めて五刀を抱き上げて走る。

「ふざけるな! お前と居るなら死んだほうがましだ!!」

 捨て台詞を吐いて無理やりにでも自分を奮い立たせる。

 肉体改造のために走りこんだ事がここで役に立つとは思わなかった。

 俺は五刀の身体を抱えなおして走り出す。

「それが、それがお前の答えなの!? 私を裏切るの!!」

 呪詛のような声を背に走る。藪を走り去るごとに痛みは走った。だが走らなくちゃいけない。五刀を死なすわけには、いかないんだ。



 どれくらい走ったろうか? 五刀を抱えた腕の感覚がない。

 それだけじゃない。足にも感覚が無い。走っているのか、歩いているのかわからなくなる。

 ただ、冷たい雨だけが俺の感じられる全てだった。

 目の前が開けた。目の前には鉄塔が建っている。その足元にはフェンスで覆われた小さな小屋が建っていた。

 フェンスに扉がついた場所に行く。閉まっているだろうとと想ったが、うれしい予想外だった。扉が開いた。中の小屋に入る。

 何かが腐るような匂いがする。だが、雨が凌げるだけありがたい。五刀を汚い床に寝かすには抵抗があったが、仕方が無い。ゆっくりおろす。

「さい、が、くん」

「五刀! しっかりしろ! 大丈夫だ。安心しろ! 夜が明ければひとっ走りして警察を読んで来れる。救急車もだ。だから――」

「わ、わた、し。雑賀く、んの事が好きだよ」

 急に視界が悪化した。五刀の顔を見ていなければならないのに。目を必死にこする。

 俺も答えなければならない。早くしないと間に合わなくなる。そんな予感がした。

「俺も、好きだよ。五刀のために俺、頑張ったんだ。五刀とつりあう男になるために、今まで通っていた地元の格安床屋から四駅離れた美容院に変えたし……。身体を鍛えるためにジョギングも始めたんだ。おかげで、こんなにも走れたんだ。『会話術のポイント』と名のつく本を片っ端から読んで覚えたんだ。五刀と楽しく話したかったから」

「うれ、しい……」

「五刀!? 五刀!? おい! おい!」



加島



 目くらましをやられるとは思わなかった。油断していた。

 それにしても裏切られた。猟犬に手を噛まれた。

 手向かう猟犬は殺さなくてはならない。

 すでに雑賀は獲物だ。彼は獲物で、私はハンターだ。

 だが、胸にポッカリとあいた穴のような物は何なのだろう。

 大切な何かを忘れて外出してしまったような、不安感は一体何なのだろう。

 視界が開ける。どうやら獲物は鉄塔の保守管理小屋にいるようだ。こういうのを因果な事だと言うのだろう。

 すでに夜が明けた。新しい一日が声を上げて泣いている。

 なんてね。すごく感傷的な気分になっている。

 長月や八重野を射殺して官能的なハイになっていた気分がだいぶ落ち着いてきた。

 いや、逆に躁から鬱になっている。両手で保持している上下二連式散弾銃が非常に重く感じる。

「そうか。失恋したんだものね」

 言葉にし途端、涙があふれてきた。

 片思いの恋が終わると言うのは、どこか物悲しい。

 保守管理小屋の扉を押し開ける。ここを閉鎖していた南京錠はすでにピッキングで開錠して捨ててしまった。

 中に入る前に涙を拭こうと思ったが、この雨だ。ばれないだろうという冷静な自分が私に囁いた。

 だが目元を拭ってから中に入る。しかし日ごとに濃くなる死臭に感傷的だった気持ちが吹き飛ばされた。

 五刀を抱えた雑賀がいた。彼らは私が隠した『ものたち』に気がついていないようだ。

 最期にいい事を教えてあげよう。

「奥を見て」

 これからお別れをするのだ。出来るだけ、甘く、優しくつぶやく。雑賀が視線を奥に向けた。

 そこには学年でもっとも美少女だった愛洲恵果『たち』が居た。

 おびき出して殺したのはいいが、遺体の遺棄に苦労した。とりあえず少しずつ解体して埋めるか、猟友会の人が飼っている猟犬の餌にしようと思っていたが、作戦通りならその必要性も無くなった。

「最期に聞くけど、私のこと、好き?」

 自分の声が震えていた。今にも泣きそうな声を出したしまった。雑賀に裏切られても、私は雑賀のことが好きなのだ。

「お前は、バケモノだ」

 雑賀がはじかれたように飛び掛ってきた。銃を奪う気だ。もみ合えば勝てる見込みは無い。

 後ろに跳び退きながら上下二連式散弾銃の引き金を引く。轟音。雑賀の肉体が細かな弾子に食いちぎるが、致命傷というほどではない。

 しかし小さい傷というわけではない。痛みで動けなくなるはずだ。

「く、そおおおお!」

 動いた! 後退しながら慎重に狙いを定める。

 撃つ。スラッグ弾が雑賀の腹部に命中して雑賀の向こうにいる愛洲『たち』が見えた。

 雑賀はスラッグ弾を受けた衝撃で吹き飛ばされた。

 そして、五刀と寄り添うように倒れた。



 終わった。

 知らずのうちに涙が再び頬を濡らしている。

 いや、まだだ。後始末をしなければならない。乱暴に目元を拭う。

 それに終わったことだ。ふられた事をいつまでもメソメソしていても仕方が無い。気持ちを切り替えなくちゃいけない。

 それに雨が降っているうちに後始末を終わらせなければならない。

 急いで一色の家に戻る。靴を玄関に脱ぐ。雨でずぶ濡れになっていたから玄関マットを濡らさないように歩く。一色の部屋に行けば顔面蒼白の彼女が泣いていた。

 散弾銃のトップレバーを押して中に弾が入っている事を彼女に見せる。

「これから拘束を解くわ。おとなしく、静かにしていてね」

 一色は従順だった。

 拘束を解いて立ち上がらせる。

「私が先頭を歩く。あなたはそのシーツでも布団でもを使って私が歩いた道を拭きなさい」

 一色は青ざめた顔でシーツを手繰り寄せる。

 一色に銃を向けながらゆっくりと後退する。玄関まで行く。はだしで外にでる。

「その靴を履いて」

 そして外に出る。裏山を歩かせて鉄塔の元まで行く。二人ともずぶ濡れだ。だがこの雨のおかげでで私『たち』の硝煙反応は洗い流される。

 こういう発砲事件が起これば実包を発射すると身体に付着する化学物質を鑑定されるが、雨に打たれてソレも洗い流されるだろう。

 ポケットに入れておいたブラックジャックで一色の即頭部を強打してもう一度、脳震盪を起こさせた。銃を置いて一色をフェンスに座らせる。

 力なく垂れた手で散弾銃を持たせる。

 散弾銃に十分な一色の指紋をつけてから銃口を彼女の口に突っ込む。

 靴を片方脱がして引き金に足の指をかけて、引く。

 どこかの国のトマトを投げ合う祭りのように脳漿が飛び散った。コレだけ派手になれば頭に打撲痣があったか分からなくなるだろう。

 残った実包一発と愛用のピッキングツールを彼女のポケットに入れる。

 これでピッキングして奪った父親の銃でクラスメイトを撃ち殺した犯人が自決したというシナリオが完成した。

 幸運にもロッカーの中に実包がしまわれていたおかげで無理なくこのシナリオを完成できた。

 おまけに保守管理小屋の愛洲の死体を警察が見つければ一色が誘拐して解体したことに出来る。あの場所にも私を特定できるようなものが残らないように一生懸命気をつけたし、状況証拠的に見て一番犯人に見えるのは一色だろう。

 さて、冷たい雨を浴びっぱなしでかなり寒い。早く下山しないと肺炎になるかもしれない。

 一色を殴った袋の土をその辺に捨て、袋も風に任せて空に放つ。

 ゆっくりと下山しながら途中で軍手を捨てる。

 警察に見つかっても狩猟中に落としたと言おう。

 これで、お泊り会は終わった。


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