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第三話 失踪  それとも嫉妬か

次の話は六時くらいに投稿します。

あと我ながらにタイトルがひどい

ついに朝になってしまった。

 一睡も出来ずに登校するはめになってしまった。

 だが、結論は出た。俺は、五刀が好きなのだ。こればかりかはどうしても譲れないものだ。

 だから、愛洲には悪いが、告白を断ろう。

 そもそもだが、愛洲は本当に告白する気だったのか?

 愛洲が聞いたのは『恋人がいるか、否か』だ。

 つまり愛洲が俺に告白するかもわからないのに俺は一晩も寝ずに考え込んでしまったのだ。

 なんて恥ずかしくて自意識過剰な奴なんだ、俺。

 とりあえず相手の出方しだいということだな。もし、何億分の一で告白されたら、断ろう。それが俺にも、愛洲にもいいことだと思う。

「おはよー。今朝ははるかと一緒じゃないの?」

 おお! 聖母が降臨した! いや五刀の見間違いだったようだ。慈悲に満ちた顔に俺の心が優しく満ちるのが感じられる。

「加島はお隣さんなだけでいつも一緒じゃないよ」

「ふーん。それより凄いクマだけど、大丈夫?」

 大丈夫。五刀の事を考えていたら一睡も出来なかった。と言って引かれたい。

 そのまま教室に行く。まだ愛洲は来ていなかった。

 席に着いて、長月や五刀たちと話しているとチャイムがなった。改めて愛洲の机を見るが、彼女は来てない。どうしたのだろうか。愛洲が遅刻なんて珍しい。

 そのとき、ガラガラと音がした。愛洲が来た。振り向く。そこには加島が居た。肩で息をしている。

「いやー。夜更かししちゃって遅刻だよーって先生まだなんだ」

 期待した分、ため息が出てしまった。そういえば先生がまだ来ていない。どうしたのだろうか?

 始業のチャイムが鳴ってからすぐは静かだった教室がだんだんうるさくなる。

「先生どうしちゃったんだろうね」

 ついには長月のように立ち歩く生徒まで出てしまった。

「さぁ? それより愛洲はどうしたんだ?」

「珍しいよね。風邪かな?」

 風邪なのか? 人が一晩も苦しんで瞑想していたというのに風邪なのか? やっぱり学年トップの手のひらの上で踊らされて、勝手に舞い上がっていただけなのか?

「おい! 校門見ろよ。パトカーだ」

 クラスメイトの言葉に嫌な予感を覚えた。



 学校にパトカーが来る理由ってなんだろうか?

 交通安全指導? パトロールの一環? それとも……。



「おい席につけ。もうチャイムは鳴ったろう?」

 先生だ。朝のホームルームが始まる。愛洲は病欠だと先生が言った。それ以外に俺にとって重要な情報ななかった。

 愛洲が病欠というのは珍しいが、病気なら仕方が無い。

 しかし、昨日はあんなに元気だったのにどうしたというのだろう?

「あぁ……雑賀。ちょっと来い」

「ねぇねぇ、雑賀なにしたの?」

 興味津々と言った長月に「なんもしてねーよ」と答えた。なにもしてないよね?

 むしろ何もしてないから呼び出されたのか? 確かにこの間の模試は酷いものだったからお小言を言われても文句は言えない。

 教室を出た先生は黙って廊下を歩いていく。階段を下り、渡り廊下を進み職員棟に入る。

 職員室や職員会議室、そして生徒指導室が詰まったエリアだ。

 生徒指導室?

 もしかして屋上のことで呼び出されたのか? グラウンドから見られないように気をつけたつもりだったが、見られたのだろうか?

 出来れば加島がピッキングしたことについては言いたくない。

 そうだ。行ったら空いていたと言おう。そうしよう。

 生徒指導室が見た。通りすぎた。あれ?

「先生、指導室通りすぎましたよ?」

「いや、会議室に来てもらう」

 会議室? なんで?

「実は警察の人が来てるんだ」

「先生! 俺絶対に何もしてないよ。悪いことなんてこれっぽちもしてねーし……」

「何も無いのになんでそんなに必死なんだよ」

 会議室に入るとそこにはツルリと綺麗に禿げ上がったおっさんと角刈りの若いお兄さんがいた。たぶん、警察官なのだろう。

「あ、どうも。わたしね、大坊といいます」

 禿げがそういって胸元から取り出した警察手帳には大坊大輔と書いてある。角刈りのほうも警察手帳を出して自己紹介をした。辻正信というらしい。俺も自己紹介をした。

 わき目で先生を確認すると会議室の椅子に着席するところだった。

「早速、本題なんだけどね。同じクラスの愛洲恵果さん。お友達なんですよね」

 愛洲のこと?

「はい。そうです」

「雑賀さんは彼女と親しいの?」

 質問の意図が見えない。怪訝な表情を読み取られたようで、大坊さんに「別に深い意味はないよ」と微笑まれた。

「親しいと言えば、そうですね。遊んだりしましたし……」

「昨日は登校してたんだよね? なんか、へんな事言ってなかった?」

 へんな事って、なんのことだ? そもそも俺に愛洲の話しをさせるって、どういうことだ?

「愛洲に、なにかあったんですか?」

「うーん。まぁ、彼女、昨日から家に帰っていないようなんだよ。つまりね、家出をしたらしくてね」

 家出? 愛洲が? 信じられない。そんなそぶりなんて無かったし……。

「どこか、行きそうな心当たり、ある?」

「いえ……そこまで知ってるわけじゃ……家出って、そんなバカな。愛洲はそういう事をする奴じゃありません」

「どうしてそう思うんです?」

 今まで押し黙っていた辻さんだ。

「それは……」

 昨日の告白もどきの話しをしようかと思ったが、それだと場所を聞かれた時がまずいし、なにより恥ずかしい。

「雑賀。ハッキリ言うんだ」

 先生がいるからハッキリ言えないんだ。しょうがない。場所を隠して言おう。

「実は、愛洲と、その、今日会う約束をしたんです」

「毎日会ってるだろ?」

 先生黙れ。「特別な約束と言うやつですかね?」と助け舟を出してくれたのは大坊さんだった。その全てを知ってるようなムフフと書いてある顔が気に食わないが。

「それで、必ず今日会う約束だった?」

「そうです」

「それは昨日のいつの話し?」

「昼休みです。話しの内容については……」

 この場で話せるわけが無い。「お若いですねぇ」と悟ったような大坊さん。咳払いをする辻さん。困った顔の先生。

 その後は愛洲に親しい人を教えて欲しいと言われ、愛洲から連絡があれば教えてくれと言われた。

「そういえば、愛洲さん自体にトラブルとかなかった?」

「トラブル?」

「恨みを買うとか、イジメがあったかとか」

 先生の「刑事さん!」と「いえ、たとえ話ですよ」と言った声が聞こえたが、八重野の『殺してやる』と言う言葉が聞こえた気がした。まさか、な。

「性格もよくて、学年中のアイドルだったし、そういうのは無いと思います。悪い噂も聞いたことありませんし……」

「そうですか。どんなことでいいので思い出したら連絡をください。これ、名刺です」



 俺の後にも数人が会議室に呼ばれた。

 警察からは特に口止めもされなかった。(口止めしても無駄だろうが)

 だからクラスから学年へと愛洲失踪の噂が飛び交った。昼休みになった今では学校中の噂になっているかもしれない。

 もしかするとわざと情報を撒かせて愛洲についてなにか知っている人を探しているのだろうか?

「愛洲、どこにいったんだろうね」

 憂いを帯びた五刀の顔はどこかの絵画から抜け出したモデルのようだった。なんて今言ったら空気が読めなさ過ぎる。

「きっと大丈夫だよ。そのうち、旅行に行ってたんだよーハイお土産! って言って帰ってくるさ」

 五刀は「そうだよね……」と弱々しい笑顔を向けてくれた。なんとも心が痛む。

 それにしても愛洲はどこに行ったのだろうか。

 ハッキリ行って田舎の部類である町だ。駅周辺はそれなりに開けているが、郊外に出れば田んぼに畑や山がある。加島の話しだとイノシシを見たと言っていた。

 そんな場所で友人宅を除いて隠れるような場所などあるのか? あったとしてもすぐに噂になる。

 つまり愛洲が家出したとすればすでに電車かバスで遠くに行ってるということだ。

 しかし……。

 どうして愛洲は家出したんだ?

「ただの家出だといいんですけどね」

 八重野だ。

 『ただの家出』。それ以外の家出ってあるのかよ?

 いや、『事件性のある家出』だ。

 もしかして八重野がやったのか? まさか――。そもそもただの高校生なんだ。出来るわけが無い。

 でも中学生が殺人を犯しているご時勢だ。高校生なら――。

 もう訳がわからない。めまいがしてきた。

「大丈夫? 保健室に行く?」

「へーき。へーき。とりあえずメシ買ってくるよ」

 全然食欲はわかなかった。だが五刀が心配げな顔を見ていられない。それに愛洲のことでもすでに憔悴しているだろうに俺の心配までかけさせるわけにはいかない。

 それにしても八重野の『ただの家出』と言う言葉と『殺してやる』が妙に引っかかる。

 だがこれは俺の妄想に違いない。八重野は口は悪いが、誰かを傷つけるような奴ではない、と思う。

 購買に到着した。だが他の生徒たちがアリのように群がっていて近づけない。

「今日は込んでますね」

 隣を振り向けば黒縁メガネの委員長――舞草章江だ。

「あれ? 委員長って購買でメシ買ってたっけ?」

「今日は特別です」

 「寝坊しちゃって作るひまがなくて……」と可愛げに頭をかいている。正直、可愛い。

「愛洲さん、心配ですよね」

「大丈夫だよ。すぐに登校してくるさ」

 そう。きっとすぐに帰ってくるに違いない。

 大事な話しがあるって言ったのは愛洲だ。きっとすぐに帰ってくるはずだ。

「委員長は何を買いたいの?」

「え? それじゃ、焼きそばパンを」

 「ちょっとごめん」と声をかけながらアリの中に入っていく。お目当てのパンは、ちょうど焼きそばパンが一つだけだ。他のものは売り切れている。

 とりあえずその焼きそばパンを買ってアリの群れを出る。

「ハイ、委員長」

「あ、ありがとうございます……」

 俺も焼きそばパンがよかったが、もう無いのだから仕方ない。

「雑賀さんは何か買わなくていいんですか?」

「え? いや、別に……学食で食うからいいよ」

 「すでに席はないようですよ」と舞草は困った顔で学食を指差した。

「ラーメンでも注文してクラスで食うよ。五刀たちと食べようと思っていたし」

 券売機で食券を買い、学食の列に並ぶ。すでに先客のおかげで俺のラーメンまでの順番が遠い。一応、時間を確認しておこう。

「お待たせ。こんなに混んじゃうと、やんなっちゃうわね」

 その発言を学食のおばちゃんがしていいのか? ラーメンの汁をこぼさないように気をつけながら学食を出る。そこに舞草がいた。

「待ってたの? 先に帰ってもよかったのに……」

「いえ。これ、買ってもらいましたし」

 舞草が歩き出した。舞草は静かに淡々と歩を進める。背筋正しく歩く舞草はどこかコンパスが歩いているように思えた。

 そう言えば、やけに外野がうるさく感じる。教室までの距離もいつも以上に遠いように思える。このままじゃラーメンが伸びきってしまうんじゃないか……。

「ラーメンが好きなんですか」

「え?」

 舞草が気にするほど俺はラーメンを見続けていたのだろうか。そうなら恥ずかしい。

 なんだか今日は恥ずかしいと思うことが多い。

「大好きだよ。中華街に行きたいくらいには」

「クス。雑賀さんは面白い人ですね」

 花の咲くような笑顔に思わず目をそらしてしまった。別にそらさなくてもよかったろうに。

 そういえば愛洲も昨日、花の咲くような笑顔をしていた。

 愛洲は夏空に咲くヒマワリのようだが委員長は可憐な白い花を思わせる笑顔だ。

 今度は委員長が顔を背けた。知らずに舞草を見てしまっていた。顔をそらす。勢いのせいでラーメンのスープが少しこぼれた。

 教室に踏み込む。八重野の声が聞こえてきた。

「愛洲さんが家出したのなら、誰かの家に転がり込んでいるのかしら」

「どうしてそう思うの?」

 八重野と長月はまだ愛洲の話しをしている。それも俺の席で話されている。

 教室を見渡せばちょうど五刀の後ろの席が空いていた。出来るだけ自然体を装って席に着く。

「遅かったね。こんでたの?」

 五刀が振り向いて自身の弁当を広げた。俺が来るまで待っていてくれたとは……!

 自分と五刀の関係が一緒に食事をするレベルまで上がったぞ。春休みの成果を感じる。

「ご一緒してよろしいですか?」

 自分の席から椅子を持ってきた舞草が焼きそばパンの包みを開ける。

 そういえば少し静かな気がする。

「はるかはどこに行ったんだろう。一緒にご飯を食べたかったのに……」

 そうだ。加島だ。五刀とメシを食っているだろうと思ったがクラスにその姿がない。きっと屋上にでもいるんだろう。

「だってこんな田舎でしょ? 友人がかくまわないとすぐに見つかるし、街に出て高校生がホテルに泊まれば家出を疑われて警察に通報されるんじゃないの?」

「それじゃ、誰かがかくまってるの? なんで?」

「もしくは通報されないホテルに泊まるかだけど……」

 八重野の『通報されないホテル』が気になったのでとりあえず緬をするのをやめて口の中で咀嚼しながら言葉の続きを待つ。

「ラブホテルとかよ」

「ゲホッゲホッ」

 緬が逆流する。喉から鼻に行きそうで、痛い。

「そんな、愛洲がそんなところに行くわけ無いじゃない」

「でもどうかしらね。顔も案外いいし、売春とかやってそうじゃない」

 何を言っているんだ? 愛洲が、売春だと?

「浮いた話が多かったじゃない? それで、どこかのホテルに泊まったんじゃないの?」

 今まで八重野に対する不快感を感じていたが、今は違う。

 赤を通り越して青色となった炎が俺の中で燃えている。

 愛洲はそんな奴じゃない。美味い弁当を作って、ヒマワリのような笑顔で話しかけてきてくれる愛洲に泥のついた手で無粋に触りやがって。

 気がつくとラーメンの入ったどんぶりがひっくり返って床にその中身をばら撒いていた。

「いい加減に――」

「いい加減にしてッ!!」

 機先を制された。舞草だ。手が震えている。

「クラスメイトが、友達が失踪してるんですよ!? どうして、どうしてそんな事が言えるの!?」

「失踪って、そんな大げさな……」

「いえ、どう考えても失踪です。警察が学校まで来て、愛洲さんについて聞いたんですよ! 警察だって愛洲さんの手がかりがつかめないからここに来たんでしょ!!」

 舞草の剣幕に教室にいる全員が動けないでいた。外界から切り離されたように教室だけは静かだった。

「な、なんです? そんなむきになって……。恥ずかしくありません?」

「安否のわからない友達の事を悪く言う人のほうがよっぽど恥ずかしいです」

 ピシャリと放たれた言葉に八重野の顔が見る見る紅潮してきた。敵意を抱いた瞳が舞草を刺している。

「ただの冗談にそんなこと言うなんて。あ、もしかして図星だからそんなに必死に否定しているの?」

 勝ったと思ったのだろう。八重野のシタリとした笑いに教室の気温がグッと下がった。

 舞草は口をあけようとして、だが言葉にならずに閉じた。右手を上げた。その右手が鋭い弧を描いて八重野の顔に叩きつけられた。

 叩かれた八重野も自分に何をされたかわからないようで呆けた顔をしていた。

 舞草はそのまま走り出していってしまった。



「舞草! ここに居たか……」

 教室を飛び出した舞草をすぐに追おうとしたが、床に残っていたラーメンを処理しなければならなかったから格好がつかない。

「雑賀さん……」

 目元を晴らした舞草は屋上に通じる階段の踊り場で見つけた。

 ラーメンの片付けをしていたから、舞草の涙を見ずにすんだのは、幸か不幸か。

「すいません。急に怒鳴って、急に八重野さんを叩いてしまって。おまけに泣きはらしてしまうなんて」

 「もう高校生なのに」と自嘲気味につぶやく彼女は教室に居たときより一回り小さくなってしまったようだ。

「八重野さん、ゆるしてくれませんよね」

 確かに八重野は教室でずっと呪詛を吐いていたが、さすがの長月も白ける具合だった。

「いや、なんつーか。ありがとう」

「え?」

 そうだよな。こんな場面でいきなり礼を言われるなんて。

「舞草が言ってくれなかったら、俺が怒鳴っていただろうし、俺が殴っていたと思う」

 そう。俺の中で燃える怒りが爆発すれば八重野を殴っていただろう。

 嫌味な女だが、一応は女だ。それに俺が殴っていればきっと怪我をさせてしまった。それくらい暴力的になりたかった。

「そんな……ただ、安否もわからない愛洲さんの事をあんな風に言うなんて、許せなかったんです。それで、暴力に訴えてしまうなんて……」

 責任感の強い言葉だ。舞草はもう少し肩の力を抜いたほうが良いと思うが、そのおかげで信頼も出来る。

 そんな舞草がいとおしく思える。彼女の頭をクシャクシャになでてやる。

「あ、あの、あの――ッ!」

「ありがとう」

 嫌がられて元気が出るだろうと思ったが、彼女はうつむいてされるがままになっている。

 そのままなで続けていると予鈴がなった。

「そろそろ戻ろうぜ」

 舞草が小さくうなづく。その時いびつな金属の音が上から聞こえてきた。そこには驚いた顔をしている加島がいた。

 そうだ。コイツ、ピッキングして屋上に屯しているんだ。

 舞草を促して早々と教室に向かう。舞草は何か言いたそうだったが、黙っていてくれた。

 階段を足早に下りる。

「ま、まって雑賀さん!」

 振り返れば俺に手を引かれた委員長が転びそうになった。慌てて受け止める。

 委員長の身体は思った以上に軽くて、暖かくて、良い匂いがした。

「ありがとう、ございます」

 受け止めたことに対しての礼? それとも委員長を慰めたことに対しての礼? と聞きたくなるが、一生懸命我慢する。

 舞草は軽い足取りで一人先に教室に向かっていった。



 目覚ましのアラームがなる。カーテンの隙間から朝日がこぼれている。

「ちょっと幸喜! 降りてきなさい!!」

 目覚ましを確認する。起床時間の十分前にセッティングされた時計を確認する。時刻どおりだ。今朝の母さんは異様に早い。

「幸喜! 起きて!」

「今、起きる」

 布団を跳ね除けてダイニングに向かう。新聞を広げた親父と朝食を作と母さんとテレビのニュースがいた。

「ちょっとこれ。幸喜のクラスメイトじゃないの?」

 少し青ざめた母さんの顔に「寝ぼけているの?」と聞きたくなったが、ニュースから俺の通う高校の名前が出てきてそっちに注視した。

『繰り返しますが、昨夜未明に起こった××××県××××市で民家一棟が全焼しました。この火災で主人の舞草徹氏四三歳、その妻の舞草洋子氏四二歳と思われる遺体が発見されました。また市内の××××高校に通う娘の舞草章江さん十六歳が火傷を負い重体のため救急搬送されました。警察は放火の疑いがあるとして捜査を進めています。次のニュースです』


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