明日
拝啓、天国のお父さんとお母さんへ
あの日からいろいろと乗り越えて、やっとお二人に手紙が書けるほどに踏ん切りがつきました。
どうやら長い長い夢を見ていたようです。
少し悲しかったけれど、とても暖かい夢を。
「行ってきます」
9月2日の朝。もう夏は終わったとばかりにやけに涼しい風が吹く。両親の遺影に声をかけると、美咲は荷物を持って立ち上がった。
天涯孤独となってしまった美咲を引き取ってくれたのは、彼女の母方の親戚出会った。しかしその親戚の家は今の美咲の家からは遠く、一緒に住むとしたら高校も転校しなければならないことになった。けれど親戚の夫婦は残りの高校生活での急な転校は可哀想だからと、美咲に元の家に住むことを許した。さらには美咲の大学への進学も、援助を惜しまない事を約束をしてくれた。子を持てない二人は、まるで娘ができたようだと柔らかく笑っていた。母親の兄である伯父に、美咲は感謝の言葉でいっぱいであった。
つまり、今この家には美咲が1人で住んでいる。これからの一人暮らしに向けての練習だとあの二人はこちらには越しては来なかった。一人で過ごすには、一軒家はあまりに広すぎた。けれど、美咲はそれをもう寂しいとは思わない。
もう、ひとりぼっちだとは思っていなかった。
美咲とその父親、母親の遺影。そして、掛け替えのない最後の家族の---
「ユウ。行ってくるね!」
ユウは美咲に答えるように、大きく返事を返した。
お父さん、お母さん。私、幸せです。
だって私にはまだ、こんなに大切な家族がいるから---




