四章 原因はビュリオラ、いろんな意味で 7
*
宿の一室を借りました。
三階建てのなかなか豪華な宿です。
あたしたちの借りた三階の部屋は、窓から港が一望にできます。
あたしは、さっきから、ずっと、この窓から外をながめています。
けれど、青空のもと、おだやかに広がる大海原を見ていたわけじゃありません。宿の前の街路を見ていました。
早く、あの人が帰ってこないかな……と思いながら。
すると、急に、姫さまが、
「シャルラン。ぼうっとしてるよ」
と言うので、あたしはあわてました。
「え? え? そんなことないですよ」
「そうかなぁ。エイリッヒのこと考えてたんでしょ」
「ええッ、ち、違いますよ!」
「怪しいなぁ。顔が赤いぞ。ねぇ、ローズ」
「はいです。姫さま。真っ赤っかです」
うう……困ったオマセさんですねぇ。
だいたい、エイリッヒさんがいけないんですよ。
急に、あんなことするから……あたしは言いわけに悩みました。
「違いますよぉ。あの、その……ご主人さまが心配なんです」
「ふうん」
そんな、あからさまに不信の目をしなくても……。
そのときです。
窓の外を、翡翠のようにキレイなグリーンの小鳥が飛んで来ます。どんどん、こっちに近づいてきます。
「わあ、きれいな小鳥」
姫さまは目を輝かせています。
でも、それにしても、どんどん、こっちに……。
「あれ、つっこんできますねぇ」
小鳥はまっすぐ飛んできて、あたしたちのいる、この部屋の窓に入ってきました。
「すごーい。きれいね。シャルラン……? でも、あれって、リーフに似てない?」
小鳥は天井あたりをグルグル輪を描いて飛んでいましたが、その言葉が聞こえたのか、急に舞いおりてきて、ちょこんと姫さまの肩に止まりました。
「あ、やっぱり、そうだよ。リーフだ」
「ほんとですね。どこから来たんでしょう? お屋敷のなかにはいませんでしたよね」
お屋敷にいなかったってことは、もしかして、ご主人さまがつれていたってことで……。
リーフは両方の翼で顔をおおって、泣きまねをしました。
「助けてっ。シャルラン。人間に殺されるよ!」
あっ、ご主人さまだ!
「ご主人さま。今、どこにいるんですか?」
「殺されるよっ」
ダメです。こっちの声が聞こえてるわけじゃないみたい。リーフに言葉を丸暗記させただけなんですね。
「うーん。いつもの被害妄想でしょうか」
違いました。
「死刑だって言われたよ。今日の正午」
大変です。
「もう、やっぱり、ご主人さまは一人にしておけません。姫さま、あたし、今から助けに行きます。姫さまは、ここで待っててくださいね」
「シャルラン一人じゃ危ないわ。あたしも行く」
「いけません。姫さまを危険にまきこめません」
「じゃあ、シャルラン。どうやってお城に入るつもりなの? あの古井戸の通路、マルグリーテがふさいでたら、どうするの?」
ふにゅう……そこまで考えてませんでした。
姫さまは得意満面です。
「えっへへぇ。そうだと思った。じつは、わたし、別のぬけ道を知ってるんだ」
「え? ほんとですか?」
「うん。教えてほしい?」
「はいっ! 教えてくださいです」
「じゃあ、わたしも行く」
しょうがないですねぇ……。
「わかりました。そのかわり約束ですよ。危ないことが起きたときには、姫さまは逃げてください。シャルランは大丈夫ですから、あたしのことは見すてて逃げてくださいね。約束しないと、つれていきませんよ」
「わかったわよぉ。約束する。ねえ、リーフ?」
ほんとに、わかってるのかなぁ。
不安だけど、正午まで、あまり時間がありません。
あたしは急いで、姫さまとともに王宮へむかいました。




