第5話「王都での新たな一歩」
王都の入り口に立ち、拓真は目の前に広がる街並みをじっと見つめた。背後には広がる大きな城壁がどっしりとした風格を持っており、その中に隠れるようにして街が広がっている。街道には大きなレンガの建物が立ち並び、家々の屋根には赤い瓦が特徴的だ。石畳の道には、人々が行き交い、馬車が音を立てて走り抜けていく。
「ここが王都か……」拓真は静かに呟いた。
大通りの両側には、高く積まれたレンガの壁と、古びた木製の看板が軒を連ねている。店の前では色とりどりの布が風になびき、商人たちが声を張り上げて呼び込みをしている。石造りの建物には重厚感があり、どこか歴史を感じさせる街並みだ。王都の中央には広場が広がり、その奥には大きな城が見える。
拓真は街の喧騒に少し圧倒されながらも、身軽になったことに少しホッとしていた。エリスは王国に報告をしに行ったため、しばらくは一人での生活になる。村の依頼も終わり、これからどうするべきか、その選択を拓真は静かに考えていた。
そんな時、王都の住民が拓真に近づいてきた。
「すみません、ちょっとお手伝いいただけませんか?」と、年配の男性が声をかけてきた。
拓真は驚きつつも、その頼みを受けることにした。「何をすればいいんですか?」
男性は少し照れくさそうに、「実は、あそこの店の屋根が壊れてしまって。少し直してもらえたら、助かるんです。」と言った。
拓真は頷き、仕事を手伝うことにした。普段なら、断る理由もないのでそのまま頼まれるがままに動く。「こんなこと、いくらでも頼まれるんだろうな」と思いながらも、少しずつ作業を進めていった。
作業を終える頃、遠くからエリスの姿が見えた。王国の報告を終えたらしく、足早に街の中を歩いている。拓真は彼女に気づき、軽く手を振った。
エリスは拓真に近づくと、突然、目を細めて言った。「拓真、あなたまた頼まれごとを引き受けてるんですか?」
拓真はその顔を見て少し驚いた。「あ、エリス。うん、住民から頼まれて……ちょっと手伝ってただけだよ。」
「またですか。」エリスは少し眉をひそめ、「もう少し自分のことを考えてください。あなた、また誰かのために動いているだけじゃないですか。」
拓真は少し顔を赤らめながらも、言い訳をしようとした。「でも、そんなに大したことじゃないし……」
「だからって、あなたばかりが動いているのはおかしいです。」エリスは少し声を低くして、「あなた、もっと自分の目的を見つけて、動くべきなんじゃないですか?王都に来たのだって、新しいスタートを切るためでしょう?」
拓真はその言葉に、ハッとした。確かに、エリスが言う通りだ。何も考えずにただ頼まれるがままに動くのではなく、ここから先の自分の道を考えなければならない。
「……わかった、ありがとう。」拓真は少し照れくさい笑顔を見せた。
エリスはしばらく黙ってから、少しだけ優しく微笑んだ。「まあ、あなたらしいと言えばそれまでですけど。」
拓真はその笑顔を見て、少しだけ安心した気持ちになった。エリスが帰ってきたことで、再び自分の歩むべき道を考え始める。王都での新たな生活が、少しずつ始まる予感がした




