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第9話 猫がいなくなった日

何時ものように、家庭科実習室からグラウンドで剣術クラスがわあわあやっているのを覗き見る。

秋晴れだなあ、、、いい天気だ、、、、だんだんと色付いてきた街路樹が、塀の外側に見える。校内に植えられた樹は常緑樹が多いから、コントラストがきれいだ。


姉は、、、剣術クラスは止められなかったようで、剣を振るっている。

銀色の一本縛りの髪型も、久しぶりに見る。ぼーっと見ていた。

・・・・カルロスが、、、剣術も同じクラスか、、、なんだかんだと姉にちょっかいを出しているみたいだ。


窓際には、姉とカルロスを見ようと、人が集まってくる。


ダリは、、、、もくもくと今日のお菓子の分量を量っている。今日は、、、アップルパイ、、姉が大好きなお菓子だなあ、、、、まあ、あの人は、大概のお菓子は好きだが、、、

ダリと、黙々と生地をたたむ。煮たリンゴを乗せて、生地を重ねて、、オーブンに突っ込む。

ダリは、、、通常運転だ、、、あまりにもいつも通りなので、、、、なんだかな、、、、


焼きあがるまで、また、ぼーっと外を見る。

キラリ、と、何かが木の上で光った気がした。


もう、ダリはエプロンを放り、走り出している。後に続いた。ざわつく教室。

窓枠を乗り越えながら、

「衛兵を呼んで!早く!」

と、指示を出す。


どのくらいだ?あと100メートルくらいか?


手前にいた生徒の剣を奪い取ったダリが、一本の木に向かってそれを放る。

姉はさすがに、状況に気が付いたようで、護衛と一緒に他の生徒を誘導している。

そこに、どさりっ、と、男が木の上から落ちてきた。


「アリー、3時の方向木の上に、もう一人!」

ダリの声に反応して、姉が剣を放る。

「イング、」

「はいよ!」

逃げていく生徒の剣をほいっと渡される。模擬剣かよ、、、、

一人、、、二人、、、、

え?何人いるのさ?

同じくらいの人数を、姉とダリともう一人が捌いている。護衛は、逃げた男を追っていった。


姉とダリは、落ちてきた男の剣を使っている。私も倒した男の剣に手を伸ばそうとして、隣にいた男に、差し出される。

「?」

まあ、いい、、、仕方がないので、背中を預ける。


逃げようとした男に、足蹴りをしてから切り付ける。あと、、、、何人だ?

剣に着いた血を払う。

「自分の頭のハエ位払えよな?」

血を払ったついでに、真上にいた、吹き矢を構えた男を切り下す。

明らかに、、、、狙われているのは、、、カルロスだ、、、ついでに、姉か?

「しかも、、、自分の国の奴かよ?」

剣の形が若干違う。


ひと段落したと思ったのか、カルロスが、、腰が抜けてしまって立てない先生を助けに行く。気が付いたダリが走る。


「ダリ!!駄目だ!弓だ!!」


一人、切り倒しながら、、、姉が叫ぶ。私が剣を木に向かって放ったのと同時位に、ダリがカルロスと先生に覆いかぶさる。


衛兵が駆けてくる。遅い!!!

カルロスが持っていた剣で、木から落ちた男に切り込む。


「お前の護衛はどうした???」

「ああ、、、すまない、、、」

ダリの下敷きになったカルロスを引きずり出す。


始めに模擬刀でやった奴は生きているだろう。事情が聴けるかもな。自害しないよう注意させ、衛兵に連行させる。半数の兵には、校内をくまなく見まわるように指示する。軍を呼んで、外部と遮断させるように。生徒には、防災訓練があったと言え、と、指示し、下校させるよう言う。


姉は、、、、


はっと気が付いて、駆け寄る。

ダリウスの背中を切って矢を抜き、血を吸いだしている、、、、毒矢なの???

下敷きになった先生は、、、、多分失神、、、、



「衛兵!先生は無事だから、そのまま運べ!軍医を呼べ!!毒矢が使われた!うちの毒と、ペイン国の毒の両方の血清を持ってくるように言え!!早くだ!!」


駆けてきた学長に言う。

「塀に隣接する街路樹を全て切り倒せ。全てだ。今日中にやれ。衛兵に校内を点検させている。軍を呼んだから、外から出入りは出来ない。明日は休校にするように。ああ、、、、生徒には防災訓練だと言ってあるから、よろしく頼む。」


そして、、、、


「カルロス殿下、我が国で、しかも王立学院内で、御身に危機が及びましたこと、大変申し訳ございません、、、取り合えず、我が国の護衛を付けますので、王城まで私とご一緒頂けますか?姉は、、、、事後処理がございますので。」


膝をつき、最大限の謝罪をする。相手は、、、他の国の要人だ、、、我が国の大変な不祥事だな。

・・・つい忘れてしまうが、、、ダリウスも、、、こちらは姉に任せよう。

護衛に、馬車を寄せるように言い、同行する。


・・・・ああ、、、、エプロンが、、残念なことになっているな、、、、ちっ、顔までか、、

しかたなく、ごしごしと血まみれのエプロンで顔を拭く。


途中で向かってきた軍とすれ違う。

用件を伝える。窓口は、姉ではなく、私にするように伝える。

カルロスが滞在している迎賓館の彼の側近をすべて、丁寧に、確実に、拘束しておくように伝える。一人残らず、だ。


王城で、大至急、カルロス様の部屋を用意するように言う。


「私は、、国王に報告に上がりますので、カルロス様はしばしおくつろぎください。着替えと風呂を用意させましたので。」


近衛に細かく指示を出し、カルロス様の国の者でも城内に入れないよう言う。彼の側近もだ。そう言ってきた者は、全て、丁寧に、拘束しておくように。


念のため、、、侍女は年配のベテランを付けるよう言う。


「・・・・やっちまった、、、、猫が、、、」


取り合えず、、、、血だらけのエプロンを外す。

父の執務室に向かうと、弟と母も来ていた。


「ただいま戻りました。」

「ああ、、、的確な処理だった。良くやった。」

「あの、、、ダリウスは?」

「今、軍の医局で治療を受けている。使われたのは、うちの国の毒だ。面倒だな。」

「・・・・・」

「事後処理は任せろ。少し休め。ご苦労だった。明日、詳しく報告するように。」


自室に戻ると、侍女にぎょっとされる。

「これはまた、、、、派手にやりましたね、、、、」


まあ、、、初めてではない。


王女なんかやってると、いろいろある、、、、、、


制服の血抜きを心配しながら、風呂に入る。

明後日からの学院生活が心配だ、、、、、誰も見ていないといいなあ、、、無理か、、、

せっかくおとなしく暮らしていたというのに、、、、猫が、、、いなくなっちゃったよ、、



























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