第5話 お弁当
ダリウスは毎日姉に昼ご飯を作っている。大盛だ。
そうそう、このまま、姉の胃袋をつかみ取るんだ!!
普通盛で、私にもついでに作ってきてくれるので、クラスでうらやましがられる。
それが、、、結構おいしいのだ。
「いいなあ、、、イング、、、ダリ様の手作りお弁当、、、、」
「まあ、、姉のついでですがね。」
「・・・・・」
姉の存在感はハンパない。
私のほうが絶対に可愛い!!と、気がないならダリ様を開放してほしい、と、姉に直談判に行った猛者がいたが、
「どうしたんだい?」
と、姉に優しく語りかけられて、ぼおおおっとして帰ってきたらしい。恐るべし。
それが、、、、無意識の所が姉の怖いところだわね。
ダリのお弁当を二人で食べているところも何度か見かけたが、、、なんというか、、、ほのぼの?本当に仲のいい、姉弟、って感じなのだ。
なんかない?ほら、、、、恋、とか?
*****
「僕、去年の春、領地を見回りしている途中で、鳥の雛を拾ったんです。」
ダリが、嬉しそうに言う。
「大丈夫だったのか?泣かなかったか?」
うふふ、、、と、ダリは笑うと、
「今回は大丈夫でした。セーカーハヤブサの雛で、今は大きくなりました。ちょっと食い意地が張っているんですが、、、可愛いですよ?」
「そうか、、、お前が泣かなかったならいい。良かったな。」
「はい、、アリーって言うんです。ふふっ、、、アイリーンの愛称を頂いちゃいました。」
「・・・・・」
「それに、、、約束したので、あなたと。あなた以外の所では泣きませんよ?アイリーン、、、大好きです!」
そうだな、、、、ダリウスと話していて、小さい頃のことを少しずつ思い出してきた。
この子は、、、母親が亡くなって、、、泣いてばかりいたので、親兄弟や側近に叱られていたんだ。小さかったのに、、、、男だろう、泣くな、と、、、、
あの日、オークの木の下で、泣いているこの子を見つけた。
男は泣いちゃいけないんですよね、というこの子と約束したんだった。
私の所ならいいよ、って。泣いていいよ。待っててあげるからね、って。
泣き虫子熊ちゃん。
眠れなくて、泣きながら私のベットに来た。
叱られたり、嬉しかったり、、、、
国元に帰る前の日にも、必ず泣いたなあ、、、、
嬉しそうにハヤブサの話をするダリを見て、私も何だか嬉しくなる。
くしゃっと、隣に座るダリの頭を抱え込んで撫でまわす。
くりくりのこげ茶の髪、、、、大きくなっても変わらなかったなあ、、、、
学院が休みの日は、弟を連れて父の執務の手伝いに行っているのだが、祖母に呼び出しを受けた。ダリがお菓子を焼いたから、ぜひ来い、と。
断るほどでもないので、お茶に来た。
木陰で3人でお昼ご飯も食べた。
祖母が急用で席を外したので、ダリとそのままお昼寝をした。
久し振りにゆっくりした休日だった。
*****
「陛下!大変でございます!!」
側近が慌てふためいて、執務室に入ってくる。
一緒に仕事していた息子が、怪訝そうな顔で書類から目を離す。今日は珍しく長女が来なかったので、書類が山積みである。
「・・・何?急用?」
「ぺ、、、」
「ぺ?」
「ペイン国から書簡がまいりまして、、、10月の舞踏会に王太子がまいります。」
「いや、、、別に、騒ぐことでもなかろう?」
「・・・・国王陛下御自慢の王女殿下にぜひダンスをご一緒させていただきたい、と!!これは!!!陛下!!!」
「・・・・・ふむ、、、、おい、お前はどう思う?」
今年10歳になる息子に意見を求める。
「よろしいかと。ペイン国はここのところ、外洋貿易に力を入れていますでしょ?うちの国にはない部分ですから。面白いかと。」
と、すごく面白くなさそうな顔で言った。
「それに、、、、ペイン国が変に力を付ける前につながりを持つのは有益でしょうね。タイミング的には最良です。まだうちの国の国力のほうが勝っておりますから。」
・・・10歳だよね?俺の子、天才かも、、、、
「では、アイリーンを。」