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第4話 その留学生

「ねえ、イング?」

「なに?お姉さま?」


久し振りにみんな揃った晩餐で、隣の席の姉がささやく。


「イング、、、私のことで、、、、ダリウスに何か言った?」

「あ?食い意地張ってるとか?弱い男に容赦ない、とか?自分より馬鹿な男は人間扱いしないとか?」

「・・・・・」

「理想の旦那さんは、年上、とかね?」

「・・・・・」

「な、、、なんか間違った?私?」


弟が、、、、冷めた目で、私たちを眺めているのがわかって、いたたまれない、、、、


「お姉さまは、、、、実は、、理想が高すぎて、自滅するタイプね。」


「ふむ、、、お父さんのようなタイプかなあ?」


「「お父様は黙ってて!!」」


父上は、、、母似の姉上に甘い。甘すぎる。しゅんとしてしまい、母上に豪快に笑われている。


姉は、、、銀の髪にペリドットの瞳。黙っていればただの美人なのに。惜しい人だ、、、、


「落ち着いたら、お姉さまにお昼のお弁当を作るって、張り切っていましたよ?良かったですね。たくさん食べるから、大盛にするように言っておきましたから。」

「え?」


母上はニマニマして見ているが、父上は微妙な顔だ。


「お弁当って、、、あの子、寮じゃないの?」

「お姉様、、、人の話聞いてませんよね?ダリはおばあさまの離宮にいるんです。あそこには、おばあさま用の小さい台所があるでしょ?」

「・・・・・」


私から見て姉は、、、母似の美貌、剣の腕もピカイチ、成績は学年トップ、生徒会長、、、、まあ、ずっとそんな感じで生きてきた。一見、ぼーっとしてるけど、、、


欲しいものも特にないらしいし、わがままを言っているのは見たことがない。

鍛錬も怠らず、、、、反抗期もない?


・・・まあ、、、相談されたことも、愚痴をこぼすこともないけどね、、、、


それを和ませられるのは、他ならぬ、、、ダリウスだと思う。うん。

小さい頃の記憶しかないが、あの子が来ているときの姉は、なんというか、、、御機嫌だった。毎年、春になるとそわそわして待っていた。うふふ、、、あの姉が、、そわそわよ?


今回のダリウスの留学は、神が与えてくれた、チャンス!!

記憶にあるあの小さな子からは、ちょっと遠い感じの体躯に育ってはいたが、、、

何だか憎めないかわいさがあるわよね?


このままだと、、、、私の結婚も危うい。

実際、、、もうすぐ16歳になるというのに、婚約者も決まっていないわ、、、

私は姉ほど理想は高くない。穏やかに過ごせればいいわ。まあできれば、父と母のようにお互い思いあえれば、、、、


がんばって!ダリウス!!

私は、私利私欲から、彼を全面的に応援することにしたのだ。




*****


ダリウスはお昼にお弁当を作ってくるようになった。大盛だ。


控室で、お昼を一緒に食べる。

イングも誘ったが、断られた。


今日は、サンドイッチ。具材はいろいろバランスよく入っている。

添えられたチキンには、持ちやすいように、油紙がまいてある。


「召し上がれ?」


お茶を出しながら、ダリウスが微笑む。

・・・・これがまた、、、美味しいのよね、、、、


「大好きです、アイリーン。」


そう言いながら、黙々と食べる私を、嬉しそうに見つめる大クマ、、、、

こんなにでかい図体で、こんなに美味しく料理が出来るなんて、、、、


デザートまで頂いて、お茶を飲みながら、昔話をする。


かくれんぼをしたオークの木。

眠れないと、泣きながら私のベットに来たこと。

二人でよく叱られた、家庭教師の話。

夏に出掛けた別荘で、馬に乗ったこと。


ああ、やっぱり、子熊ちゃんだったんだなあ、、、、

少しずつ、忘れかけた記憶が戻る。



*****


姉にはさすがに言わなかったが、、、実はダリウスは、私たち一年生の女子の中で一番人気。家の都合で、入学が少し遅れたが、成績は学年一番。背も高く、人当たりもよく、親切なので、男子にも好かれている。勉強を教えたりもしている。ホンワカ系。


留学生、としか明かされていないが、この国の言葉も完璧。家庭科で、後片付けを率先してやってくれたりするので、上級生のお姉さま方にも人気だ。笑顔が可愛いんですもの、、、と、年上をくすぐる何かがあるんだな。


そんなわけで、まだ婚約者のいないご令嬢は、探りを入れてくる。


私の遠縁の子だと言ってあるから、なんだかんだと質問も多い。まあ、適当に答えている。最後に必ず、姉のことが好きみたいで、と、伝えると、、、


「・・・まあ、それは、おかわいそうに、、、」


と、これまた勝手に同情票が集まってしまう。どれだけですか?姉上??














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