第17話 そして、それから。
姉上は、ルシア国の正妃に収まった。
新婚旅行はルシア国内の温泉で、ダリの傷の湯治に出掛けたらしい。
母上とおばあさまとフール国王ご夫妻は、近場の温泉でくつろいでから帰ってきたみたいだ。・・・・・いいな、、、、、
あの後は、、、、、ペイン国の賠償金と、うちの国からの補償金で、姉は本格的に温泉の観光事業化を始めたらしく、、、、父上あてにブリアからルシアへの街道の整備の要請が来た。
「まったく、、、、」
とか言いながら、父上は嬉しそうに街道を整備し、ついでに、アイリーンが温泉事業を始めたらしくてなあ、、、、なんて吹いて回っている。親ばかだわね。
姉はなんと、温泉の先駆けでもあるペイン国に、技師の要請もし、カルロスのツケで何人か派遣させたらしい。
【・・・森の中の泉のようなところが温泉なんだ。昼間だと鳥の声がするし、夜だと星が降るようなんだ。機会があったらおいで。】
姉は時々、手紙をくれる。
領地自体は、うちの国の小麦の一大産地のユーハン領くらいしかないらしい。山と森と、ささやかな耕地。そこに、何種類もの温泉が湧いているらしい。
温泉リゾート地にするんだ!と、息まいている。後は、お土産と、料理、、特産物?
国費で、ケイ様と、アカデミアで一緒に農学研究をしているユーハン領の息子を呼んで、アドバイスを受けているし、、、、
実は父上のおかげで、遊牧民からのちょっかいもほぼなくなり、治安も良好みたい。
楽しそう、、、、、
【一つだけ、、、ハヤブサのアリーが、ダリに馴れ馴れしくて、、、なんか許せない。】
どうも、ダリ様のハヤブサとダリ様を取り合っているらしい。同じような名前で、、、何やってんの??
ふふっ
いいなああ、、、、
私は高等部3年生になった。
生徒会役員の指名も無事すり抜け、猫をかぶったまま、のんびりと2年生を過ごしたのだが、、、、、大誤算があった、、、、、
あの、10月の舞踏会でのバルコニーの会話を聞いていた人がいたらしく、、、
「イング様は栄国に嫁がれるらしい。」
「ああ、、、あの恐ろしく美形の殿方ですね?」
「あの若さで、アカデミアで断トツの成績らしいですよ?」
「さすが、、、イング様!理想通りのお相手を見つけていらっしゃる!」
いや、、、、みんな、、、、違うから、、、、
おかげで、まあ、確かに?煩わしい縁談も来ないが、、、、縁談自体、、、まったく来ない。もちろん紹介したいわあ、なんて猛者もいない。あんなに騒いでいたカルロスからは、手紙の一枚も来ないし、、、まあ、それはそれでいいけど。
私の周りは、、、、静かなもんである。
2年時はまあ、いい。
3年になっても、、、、もうすぐ18歳になるって言うのに、、、、周りのご学友たちは次々と婚約を発表するというのに、、、、、どうすっかなあ、、、、これ?
今さら?父上に頭下げて、探してもらうのもなんかなあ、、、、お母様もなあ、、好きにしろ、としか言わないし。おばあさまにでも頼む?
イリアの王弟に、なんて話が出たが、なんだか今、きな臭いみたいで、、、立ち消えになったなあ、、、、
はーーーーーあ、、、、もうすぐ、12月の大舞踏会だってのに、、、、エスコートしてくれる人もいないなんて、、、、、
素振りを100回して、雑念を消そうとしたが、なかなか消えないなあ、、、、
風呂から出て、ぼーーーーっとしていると、ばあやが部屋に入ってきた。
「まあ、なんでしょ??そのお姿は!!!」
「・・・・・」
「しゃんとなさいまし!」
「はーーーーーい。」
「はい、は、短くですよ?そうそう、イングリット様にお荷物が届いております。」
ばあやはことのほかうれしそうだ。なあに?
「はい、運び入れて頂戴?」
侍女が次々と色々な大きさの箱を運び入れる。すごく大きな箱やら、可愛いリボンのかかっている物やら、、、、30個くらい?なにこれ?凄いわね?
「イングリット様へ、ペイン国王陛下からの贈り物でございます。うふふ、、、開けてご覧になりますか?」
「は?」
ばあやと侍女たちで、わあーきゃー言いながら、荷物を開け始める。
「まあ、イング様!もんのすごいサファイヤのティアラとネックレスですわ!」
「こちらは、、、やはりサファイヤがはめ込まれた靴!!」
「イヤリングはダイヤとサファイヤですわああああ」
「・・・・いやあ、、、、これは、、、、」
総シルクの、こげ茶のイブニングドレス、、、、あんのやろう、、、、、こりんな、、、、
しかも、、、、、かなり上品な仕上がりだ。
ベットに座ったまま、侍女たちの悲鳴を聞く。
「イングリット様、、、、」
一番大きな箱から取り出されたそれは、、、、、ウエディングドレス????
二番目に大きな箱には、、、ヴェール?何メートルあるんだ?
そして、、、同じく白のシルク張りの靴、、、、
「・・・・・は?」
ナニカンガエテンノ?
*****
「あの小僧は、王位を取ったぞ。」
「・・・・・」
「イリアの港を使わず、フールから陸路で入るらしい。ふふっ、、、情勢も見れるようになったな。」
「・・・・・」
「・・・どうする?イングリット?」
「・・・・・」
父上の執務室に呼ばれたから、そのことだろうなあ、、、とは思った。
「これからお前を口説かなくちゃいけないから、少し早めに入国するらしい。今度はペイン国王として来るからな?まあ、、、、どうするかは、お前が決めろ。」
「・・・・・」