第14話 クマ男の恋愛事情
遠くで、、、アリーが泣いている、、、、
どうしたの?
アリーの綺麗な銀髪を撫でる。
どうしたの?
僕はここにいるよ?
夢なのかどうかもよくわからない。
昔の夢を見ていたのかな?あの、、辺境伯領の狩猟会の最後の夜の。
泣いているアリーの頭を撫でた。小さい僕の手で。
目が覚めると、白いカーテンの隙間から光がもれていた。
誰かが側にいた気配が残っている、、、椅子が一つ。
随分眠ったのか、体中がだるい。背中が痛い。
ゆっくり起きあがって、枕元に揃えられた着替えを羽織ろうとして、右腕が自由に動かせないことに気が付く。
「・・・カルロス様は?ご無事でしたか?」
入ってきた医官に、あの人の婚約者の安否を確認する。
「・・・そうですか、、、良かったです。」
少しは役に立ったかな。あの人を泣かせないように。
背中の怪我はもうしばらく治療が必要なようで、今までいた緊急用のベットから、病室に案内される。肩から右腕が固定されて身動きしにくいが、まあ、歩けないわけではない。
病室の窓からは、中庭が見える。左手で窓を開けてみる。
レンガに這った蔦の葉が、随分と赤くなった。
早く、、、帰ろう、、、
ほんの少し、お会いしたかった。
それだけ、、、、というのは、自分についた嘘かもしれない。
父上の体調の良い今なら、半年ぐらいは自由にしてよいと、、、まあ、、、最後の自由な時間かな、、、ブリアの王立学院への短期留学を希望すると、王妃オリヴィア様からすぐ許可が下りた。
帰ったら、王位を継いで、王妃を決めるんだ。
楽しかったなあ、、、昔に戻ったようだった。
相変わらず優しく、美しいアイリーン。
毎年訪れていた別荘での、遠乗り。
髪をなびかせて、嬉しそうに笑う彼女を見るのが、本当に好きだった。
手に入らないと解っているけど。
・・・・本当に、好きだったんです、、、、
もう、彼女の瞳の色のペリドットも返した。いつも、、、、僕の側に在ったけど、、、
「・・・寒くないのか?窓を閉めよう?」
「・・・・・?」
「横になれ、まだ怪我人なんだから。」
「え?」
僕を見上げて、柔らかく笑う、、、アリー?
「ど、、、どうされたんですか?」
「どう?とは?」
ベットに並んで座ったアリー?あの、、、
「婚約者のいる方が、こんなところに来てはなりませんよ?」
「あ?おばあさまと同じ様な事を言うんだな、、、」
「もし、責任を感じていらっしゃるなら、、、、僕はあの時、自分で出来る最良の対処をしただけですので。」
「・・・婚約者はいない。縁談は先ほど断ってきた。」
「え?」
「ついでに王室から追放された。お前が元気になったら、国元まで送っていく。それまでは、私がお前の面倒を見る。私は、、、、」
言っていることはかなりな内容なのだが、、、アリーはふんわりと笑っている。
「私は、お前といることを選ぶのに、色々と要らないものを捨ててきた。何にもなくなったが、、、それでも、ダリウス、、あなたの側にいたいんだ。」
「・・・アリー?」
「・・・でも、、、また、、、、お前の嫁にはなれそうにないなあ、、、平民になっちゃうし。ふふっ、、、愛妾にでもしてもらうかな?お前の国の、近衛に入ってもいい。どちらにしても、、、お前が嫌がっても、、、、ついていくことにしたんだ。」
そう言うと、ペリドットの瞳は閉じられて、そっと自分の唇にアリーの唇がふれる。
*****
間もなく、警備が分散するので、と、王城のアイリーンの部屋に越してきた。
まあ、、、、小さい時は確かに、その控室を使っていましたけど、、、、
僕の胸元には、また、ペリドットが帰ってきました。
アリーは、、、学院は休学し、公務は無くなり、本当に、僕につきっきりでリハビリを始めました。中々、厳しいリハビリで、、、ついていけるかどうか、、、、
「右腕の可動範囲を広げようね。まずは、私の腰を引いてみて。」
「・・・・・」
「まあ、上手!」
「じゃ、私の背中を引ける?」
「・・・・・」
「次は、私のあごね?引いてみて?」
「・・・・・」
「大丈夫?痛くない?じゃあ、そのままキスして?」
「・・・・・??」
「・・・じょう、、、ず、、、、」
え、、、と、、、本当にリハビリになっていますか?
僕は、、、ついて行けますか?
何所にもいきませんので、寝る時、僕のベットに入ってくるのも勘弁してください、、、
いつもそうしていた、と、僕の頭を抱えて寝ていますが、僕は、、、あなたの胸の中に埋まっているんです、、、、、ああ、、、、
・・・・天国なのか、地獄なのかわかりません、、、、、、