第12話 国外追放です。
「このご縁談、お断りいたします。」
「なっ、、、、、、お前が決めていいことではない。アイリーン。」
国王の話を、母上が遮る。
「ほおおっ、、それなりの覚悟があるんだろうな?アイリーン?」
「はい。いかようでも。」
「・・・では、国王の命に背いたお前は、国外追放とする。二度と、戻ってくるな。」
「・・・・はい、、、ありがとうございます。」
「但し、お前の不注意でルシア国のダリウス様は怪我をされた。かの方がお元気になられるまで、誠心誠意仕えよ。帰国の際は、国元までお送りしろ。それが、この国での王女の最後の仕事だと思え。」
「・・・・ありがとうございます。」
「退出しろ。これは、、、、私からの餞別だ。」
母上は、、、、そっと何かを姉上に握らせた。
姉は、、、、それを掌で見て、、、、花がほころぶように笑った、、、、
嬉しそうに早足で退出した姉の後姿を見送る。
お母様、、、、かっこいい、、、、
カルロスは、、、まあ、何のことだか分からないわよね?あっけにとられている。
「私の見解なんですが、、、何もなかったことになさってはいかがでしょうか?関係者は全て押さえましたので、カルロス様の国元には、まだ情報は流れていないと思いますし、、、普通に、短期留学なさって、帰国した、ということで。剣術の時間に、ルシア国の王太子に誤って怪我をさせてしまった。縁談については、まとまらなかった、という感じですかね?」
「・・・・・・」
「もちろん、今回はうちの警備不足ですが、まさか、付いてきた側近や護衛にまで敵対する者が紛れていたことは、うちの国では把握しきれないこと。そちら側の問題です。」
「・・・・・」
「?ですよね?カルロス様?」
「・・・・ああ、、、、」
「カルロス様には窮屈でしょうが、王城に滞在頂くのが一番安全でございます。このまま滞在頂き、学院に通い、10月の舞踏会に出て、、、、お帰り下さい。その間、うちの国の護衛が付きます。いかがでしょうか?」
「・・・私は、良いと思いますよ。」
おお!弟が珍しく同意してくれた!!
「ただ、カルロス様もこの状況が予測出来ていたのでしょ?それを、こちら側に報告しなかった。ですから、、、、先に述べたように、ルシア国への賠償と、我が国で掛かった経費と補償金についてはよろしくお願いします。」
完璧!!!
苦笑いする父上が言う。
「それで、よろしいかな?」
*****
姉は、熱が下がり、意識の戻ったダリウスを連れて、城内の自室に引きこもった。
・・・・少しづつ、リハビリをしているらしい。
おばあさまの離宮では、警護が分散してしまうので。
体調がすぐれないと、学院は休学した。生徒会は副会長が頑張っているようだ。
そうして、、、、まあ、何もなかったこととして、私の学院生活は再開する。2週間ぶり。
制服は血抜きがうまくいかず、予備の制服になった。
髪を緩く巻き、薄く化粧をする。
猫を一匹被り、、、登校だ。
「物凄く、実戦さながらの訓練でしたわね?」
「本当に!皆様、かっこよかったわあ!」
・・・そうね、、、、
「イングリット!久しぶりね。お姉さまは、お嫁入り前の準備で休学ですって?」
「あら、、、カルロス様との縁談は白紙になったと聞きましたけど?」
みんな、、、、情報早いな、、、、
「ではでは、、、、カルロス様は、まだ決まった方がいらっしゃらないのね?」
「きゃああ」
頑張ってください。
私が大立ち回りをしたのは、まあ、王族ならあの位はやるのかしら?くらいで、済んだらしい。良かった、、、、ダリは、予定通り帰国したと思われてるみたいだ。
まあ、、、、かえっていいか、、、、
「ねえねえ、、、今朝はカルロス様、、、イングと登校されましたわよね?」
「・・・・ええ、、警備の都合で、、、、おほほほっ、、、、」
「なんだか、、、、カルロス様、雰囲気変わられましたよね、、、、」
カルロス、、、、早く国に帰ってほしい。あと、一か月くらいか?
*****
「ねえ、イング?僕が間違っていたら、僕を叱ってくれないか?」
は?
「そうでございますね、、、、カルロス様に、愛称呼びを許した覚えはございませんね。」
「・・・そこは、許してはくれないの?」
手を引き寄せて、指先にキスする気???ササっと払う。
「・・・あのね?なれなれしいのよ!学院ではやめてよね。もう、姉上の婚約者候補でもないんだし、あんた、ただの客人でしょ?おとなしくできないの?」
「僕は、、、自分に意見されたことがないんだ、、、みんな顔色を窺ってくるし、、、、
君に、、、、、自分の頭の上のハエ位、自分で払えよ!!って言われて、なんだか目が覚めたんだ。」
寝てたのかよ?
「そうかも、、、、継承権争いだって、なんか、自分には関係のない話だと思っていたから、、、、」
は?いい迷惑だな。周りが迷惑する、最悪の人種だな。
「すまない、、、自覚が足りなかった、、、、」
そうだね。けが人も出たしね。慎んでほしいね。そして、もう二度とブリアには来ないでほしいね。
「イング、、、、、」
だーかーらー
「イングリット様、、、、」
「何よ?」
「僕と結婚してくれないか?」
は?馬鹿なの?この男。
「おほほほっ、、、、私、側妃になる気はございませんの。」
寝言は、寝て言え。誰でも彼でも、口説けば落ちると思うなよ。
「もちろん、正妃で。君が嫌なら、側室は持たなくてもいい。」
は?
「無理ね。」
「努力する?どうしたらいい?ね?」
は?あたし、、、、チャラい男嫌いなのよね、、、、基本的に無理。
「そうか。善処する。」
何が?
びっくりしたことに、次の日、あの男は髪を短く切り、朝は城内での近衛の朝練に交じっていた。
・・・・いつまで続くかな、、、、
人間なんか、そう簡単に変わらないさ、、、
早く帰れ!!