第1話 王立学院高等部
入学式で生徒会長の挨拶を聞く。まあ、私の姉なんだけどね。
銀色の髪を一本に無造作に結び、化粧もしてないな、、、、いつものことだけど。
紺色のタイを結び、ジャケットにスラックス。長身に映える。まあ、、、いい男だわね、ぱっと見。
何も知らない新入生が、きゃーきゃー騒いでいる。高等部から組だな。中等部からの子たちは、自慢げに鼻の穴を広げている。
「私たちは存じ上げておりましてよ?」
みたいな?
中等部でも、姉はモテた。男女問わずに。ファンクラブもあった。
・・・・高等部でも、、、、さほど変わらないか、、、、
後ろに並ぶ生徒会の役員の皆様も、そうそうたる顔ぶれなんですが、、、まあ、姉のインパクトが大きすぎるのか、その他大勢みたいになってしまっている。
私は、、、普通に金髪に青い目。この国の貴族では、ありきたり。身長も高すぎず、低すぎず。年頃だもの、髪は巻いてるし、薄っすら化粧もしている。
制服も普通に着こなす。目立たないように、、、、、モブでありたい。普通に結婚したい。姉のおかげで、、、、婚約者もまだいないが、、、、
姉が挨拶を終え、席に着くと、ほおおおおっ、とため息が漏れる。これは、男女とも。
こうして、私の王立学院高等部生活が始まった。
「相変わらず、麗しいわあ、、、ね?イング?」
「・・・・・」
「毎日、あの方とご一緒なんて、羨ましいわ、、、、」
そうねえ、毎朝、朝練でしごかれています。
お陰様で、モブを目指す私は、上腕二頭筋を隠すために、ひとサイズ大きなブラウスを着ています。半袖にはなれそうにありません、、、、
「まあ、イング様のお姉様ですの?」
これは、、、、誰でしたっけ?
「あの方、、、アイリーン様のご趣味は?」
寝る、食う、剣を振るう、馬に乗る、、、、暇があると弟に勉強を教えています。弟の公務の手伝いもして、弟の世話を焼き、、、、ウザがられています。
「・・・・素敵な方、、、、どこぞの大国の王子様に見初められて、、、きゃああ、、、想像が膨らみますわよね?」
そうか?
先日も、見合いさせられてたな。どこぞのご令息と。
何時ものように男装でぼーっと現れて、お相手と話が弾み、、、論破し、、、、破談になっていた、、、、、母上が楽しそうに笑っていたなあ、、、、
そうそう、その前は、姉が馬が好き、というので、見合い相手と遠乗りに出掛け、、、、ウサギと狐を獲って帰ってきた。あの時のお相手は、、、、どうしたんでしたっけ?
そうそうそう、、、、腕に自信がある、って、怖いもの知らずの人もいたなあ、、、思惑としては、まあ、こんなに御強い人初めてですわ、、、辺りを狙ってきたんだろうけど、、、コテンパン、、、にもならなかったな、、、姉が親切丁寧に剣術の指導をしていたから、、、、
こんなのが続いたので、ご学友に聞いた、今どきの女の子の《《決まるセリフ》》の練習をさせたこともある。
「いい?お姉様。今どきのかわいい女の子の決まるセリフよ?」
「・・・?」
「さ・さすがですわああ、、、、
し・しりませんでしたわあ、、、、
す・すごいですわねえ、、、、
せ・センスいいですわねえ、、、、
そ・そうなんですねえ、、、、はい、言ってみて!」
「さすがだな。
知らなかったぞ。
凄いな。
センスいいな。
そうか。」
「・・・・・」
どっかの上官と軍事作戦の話してるんじゃないのよ!!!!!
・・・・そう、、、こうして、、、私への縁談話も、遠のいていくんだわ、、、、早く、片付いていただかないと、、、、
学院の高等部を卒業と同時位に、嫁に行く人は多い。
姉は、、どうかな?
弟が一人前になったら、とか思っているかもしれないし、、、そしたら、あと8年?
あの人、25歳くらいかしら?私は24とかになってるわ、、、、
まあ、あの人は変に素直だから、、、父や弟が、ここに嫁に行け、と言ったら、、、、馬だろうが象だろうが、おとなしく嫁ぎそう、、、
「イングは、、、おとなしいわよねえ、、、」
「・・・・・」
でしょ?だてに3年も猫を被っているわけではございません。あと3年は被る予定です。
「結構、聞かれるのよ?イングは、付き合ってる人いないのかな?って。」
まあ!
「でも、、、みんな、アナタのお姉さまのことを知って、諦めちゃうのよねえ、、、、」
「・・・・・」
「あの方の妹さんなら、、、理想はかなり高いんだろうなあ、、、って、、、、」
ああ、、、、、お姉様!!!!