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『不死の男』はどんな毒にも耐性のある最強の毒見役

作者: 黒豆100%パン


「聞いた?あの噂」



「ええ。もちろん」



侍女の中ではその男がこの場所に噂は瞬く間に広まっていた。



「その毒味役の男ってさあ、なんかすごい人らしいわよ



「えーほんとー?」


「そうそう」



その噂される男というのは、お殿様などの食事に毒が入っていないか料理を先に食べるいわば「毒味役」の男だ。だがその男、毒味役と言ってもかなり変わっている。



「その男、毒味役でお殿様の実際に毒が入ってても絶対に死なないんでしょ?」



「そうそう。毒に何度も苦しんでいるうちに毒に耐性がついたらしくて、苦しんだりはするけど絶対に死なないんだって!」




「えー怖い!」



「だから『不死の男』なんて呼ばれてるらしいわ」



その男は幾多の毒の入った料理を食してきた。そのおかげか毒を口にしても苦しむぐらいで死なないのだ。それによりつけられたあだ名が『不死の男』である。




「あっ、噂をすれば...」



侍女はその向こうから歩いてくる銀髪の男を見てそう言った。この男こそが『不死の男』と呼ばれた男だ。今日は殿様への謁見に

きている。毒を食しても死なないという『不死の男』という割には見た目は平々凡々な感じだ。

その『不死の男』は噂をしている侍女の方を見ると、コク、と一例をしてお殿様のいる部屋を目指す。



「ここか...」


長い廊下を歩いて少し進むとふすまがあり、不死の男は「『不死の男』今ここに参りました」と言うと向こうから入れというような声が聞こえる。ふすまをあけて入ると広い部屋があった。かなりの広さで奥の方には少し段差がありそこにはお殿があぐらをかいて座っている。



「お前が噂の『不死の男』か?」



そうお殿様がいうと、不死の男は「はい」と答えた。



「ほう...見るからに平々凡々な感じだが...」



「はっ」



「少し試しても良いか?」


「はい」



「おい、アレをもってこい」


お殿様そういうと家来は白い平たい容器を持ってくる。中には透明な水が入っている。



「これを飲んでみろ」



「はい」



そう言ってその不死の男は水をグッと飲む。そしてしばらくすると「うぐ...ぐぁぁぁぁぁ!!!」と苦しみ出した。その様子をお殿様はじっと見ている。

しばらくすると不死の男はバタっと倒れしばらく動かなくなる。



「一体何を!?」



「ちょいと毒を仕込んでおいたのだ。だがおそらく...」




そのお殿様の予想通り、不死の男はすぐに起き上がり「これは毒が入っています」とケロッとした顔で言った。その様子を見てお殿様は嬉しそうな顔になる。



「これはすごい!この水には毒を仕込んでおいたのだ。これならもし殿に毒を盛ろうなどというよからぬ輩が現れても安心だな!」



「だが、聞いていたよりリアクションが薄いような気がするが?



「そうでございましょうか?」




「まあいい。これでもし毒を入れるような輩がいても安心だな!!はっはっは」



そう言いながらお殿様は笑った。


「ところでお前、前にいたところを追い出されたと聞いたが?」



「はい」



この男、前にも同じように毒味の役をしていた。だが何かしらの理由でそこを追い出され、今このお殿様の前にいるというわけだ。その理由を聞いても本人は分かっていないようで少し怪しい感じがする。



「大丈夫なのでしょうか?こんな得体の知れないやつを招き入れては!」



そういう家来だがお殿様は笑いながら「平気だ平気!!」と言った。



「こんな優秀な奴を追い出すとはかなり勿体ないことをしたものだな」



「勿体無いお言葉でございます」



「これから毒味役としてよろしく頼むぞ」



「はっ!」





それからこの不死の男は殿が食事をする前に毒味をするようになった。お殿様が食事をする前に必ずこの不死の男が味見をして毒がないかどうかを確かめる。そして安全ならば食べるという習慣がついていた。



「これは特に毒は入っておりません」



それを聞くとお殿様はそうかと言って目の前のご飯や味噌汁を口に運ぶ。この不死の男は確実で食べても何も起こらなかった。ある時お殿様は不思議そうにこう呟く。



「こんな優秀なのに前のところを追い出されるなんて...何かあるのだろうか?」



その言葉に家来は「何かとは...?」と返す。



「おそらく何か裏があるのかもしれない」



「裏...でございますか?」



「ああ」



「はっ!」



もしかして何か裏があるもしれない...そう思ったお殿様は次の食事の時に不死のと男の様子を見ることにした。そして次の日もその次の日も、特に問題はなかった。そんな様子に家来達は不思議そうに話し合う。




「何か怪しいところはあったか??」



「いえ、特には」



「どう言うことだ...?」



「もしかしたらまだ動かないのかもしれない」



「そうだな、少しばかり様子を見ていよう下がって良いぞ」


「はっ!」






その日は少し離れたのお殿様との宴会だった。大勢が少し広めの宴会場で、漬物や味噌汁、ご飯がきれいに並んでいるところに座っている。



「ワシは最近毒味係を雇ってな。こいつはどんな毒でも死なないのだ!」



「ほう!それはすごい」



お隣のお殿様も興味津々でその話を聞いている。



「おい!」



その声と共に不死の男が現れる。そして目の前の料理を全て一口ずつ口をつけてしばらくして「これは大丈夫です」とだけ言った。



「何かあったか?」



「いや何も」



一応毒味の時にも何かするかもしれないので様子を見ていたが、特に様子はなかった。お殿様は「そうか」と言いながらまずご飯を口に入れる。


「っ!」



その瞬間、お殿様は苦しそうな声を出してもがき始めた。その様子家来が駆け寄るなどの大騒ぎとなった。





-


「おい貴様!どういうことだ?」


お殿様は少し怒ったように不死の男を見る。毒は少量だったようで、お殿様は一命を取り留め、隣の殿様の家来が仕組んだという事で事態は落ち着いた。それから数日経ち、お殿様は不死の男を呼びつけたのだった。



「大丈夫だ...」



不死の男は少し黙っていたが、口を開いた。



「どうやら、毒に慣れてしまったようで多少の毒ならば抗体みたいなのはできていて全く効果がないみたいなんです...」



それを聞いた瞬間、お殿様は少し考えて「そりゃあ...ちょっともう来なくていいかな」と言った。

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