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ひとをすきになれたひ【雀荘遅番回顧録】

作者: 彼方

◎ひとをすきになれたひ【雀荘遅番回顧録】



 今日、僕は珍しく昼間働いた。

 

 普段は遅番という真夜中の時間帯を担当している僕なのだけど、今日は早番の人手不足により1日だけ借り出されていた。こういうことは月に一度くらいあることだ。


「あれ、彼方さん今日早番?」

「うん、今日だけね」

「あ、また?」


「あれ、彼方さん久しぶりだねえ。今日から早番?」

「お久しぶりです。今日だけ早番です。明日にはまた夜に行きます」

「大変だねー」


 などとみんなに言われる。このやりとりが割と嫌いじゃない。


 そんな中で本走になり卓に着いた。立番も居なくなるので電話の子機を抱えていそいそと卓に着く。


「お待たせしました。よろしくお願いします」


 すると上家のおじさんにこう言われた。


「おっ、ずいぶん嬉しそうに卓に着くねえ」

…そうなんだろうか。自分には分からない。ただ、麻雀するのは確かに好きだ。


「まあ、麻雀は好きなんで」と言うとその次の瞬間おじさんの言い放った言葉が僕の心にドン!と来た。


「そりゃあ麻雀はみんな好きだろ!」と


 この一言に『こんな楽しいゲームはみんな好きで当たり前。最高に面白い。麻雀を嫌いなんてことはありえない。それは単純に知らないだけ。誰でも好きになるに決まってるゲーム。それが麻雀だろ』という意味が込められている気がし、僕はなんだかこの乱暴な決めつけに感動した。


 僕にとって麻雀は人生であり。なによりも大切なことのひとつだ。家族と同等の位置にあるもので、失ってはならない恋人のようでもある。


 だから、麻雀を悪く言う人は全員くたばれと思うし、努力もせずについてないついてない麻雀は運次第、私は悪くないを連呼しているバカを見ると、うるせえだまれ自己責任なんだよ。お前レベルなら特にな。日々鍛錬して洗練された技術を身につけてから運について語れや。と言いたくなるし。(まあ、そうなった頃には運について語るなんて素人のすることだと気付くんだけどな)本当に強い人の書いた書籍は全部読んで参考にしたくなるし。自分もまた戦術を生み出していきたいと思ってる。そのくらい本気で麻雀に接してる。


 だからかな。

 

 さっきまでその人のことは別に好きでも嫌いでもなんでもなかったのに。急にこのとき好きになった。


 自分が良いと思うものを同じように全面的に推してる人。つまり同志ってことなのかな。そう感じたんだと思う。


 久しぶりに早番やったけど、今日はいい日だった。


 なんとも思ってなかった人をすきになれたから。


 すきが多いのはいいことだよね。



 今日は、ひとをすきになれたひ。


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