第一次異世界最終戦争 終戦
創歴二十年
『はぁぁっ!!』
ルシフェルとニヒルの戦闘は更に熾烈化していた。
『はぁ・・・はぁ・・・ちっ、この傷、何で消えねぇ』
ルシフェルは頬に付いた傷をさすった。
「恐らく、今の彼女は神すらも殺せるのでしょう」
そしてルシフェルの隣にガイアが舞い降りた。
『さしずめ神殺しの剣ってか?っざっけんなよな、あの姿になっちまった以上戻す方法は新たな身体に蘇生させるしか無い・・・ったく、神の野郎なんつー入れ知恵してくれやがったんだ?この俺を殺せるなんか方法教えやがって!!』
ルシフェルは強引に頬の数を治してニヒルに襲いかかった。その次の瞬間、
「っ!?なんだ・・・ニヒル アダムス君の動きが完全に止まった?」
ディエゴはニヒルの更なる異変に気が付いた。しかしそこに全力のルシフェルが突っ込んでくる。
「ッッ!!!!」
だが、その間に永零が止めに入った。
「がはっ!!はぁ、はぁ・・・」
『永零、邪魔すんなよ・・・そこをどけ!!』
「どかない!!」
永零は両手を広げてルシフェルとニヒルの間に立ち塞がった。
『くっ!!!早く、しねぇと記憶が・・・』
ルシフェルは頭を押さえてフラフラと少し歩く。そしてまた走り出した。
「はぁぁっ!!」
『邪魔だ!!』
流石の永零でもルシフェルとの実力差があった。永零は大きく吹き飛ばされた。
『っ!?なんで、何処へ行くんだ!!』
永零の攻撃の後、ニヒルは突然後ろを向きここから立ち去ろうとしていた。
「・・・そう言う事か!!理解したよ!ニヒル アダムス君!指宿 永零君!!」
そこへディエゴがルシフェルに向かって攻撃を仕掛けた。
『くっ!!てめぇまで!!何のつもりだ!?』
「もう戦う必要はないだけだよルシフェル君、勝負は既に決した!」
『まさか、俺たちの記憶が完全になくなるまで時間を稼ぐってのか!?』
「そうだよ!!今回も僕はニヒルさんに負けた!だから今回だけは協力してあげる!君の場合は次もう勝負できないからね!!」
「そう言う事だ!!この勝負の更なる選択肢は未来に・・・桜蘭たちに委ねる!!」
ディエゴと永零は共に並び、共に構えた。
「行くぞ、ルシフェル君!!」
「行くよ、ルシフェルさん!!」
そして二人はルシフェルに立ち向かった。
『くっ!!この、わかってるのか!?未来に託すのがどう言う意味なのか!!』
「わかっているさ!あの無垢な少年たちに俺たちの罪を着せる!確かに辛い選択だが、それが人間だ!!」
『なら、それが人間なら!!俺は人間を一人残らず殺す!!』
「やるがいいさ!!でもね!!そんな事にならない未来の為に僕はニヒルさんの為に今戦う!!もしかしたら!未来なら!君と協力し合える未来があるかもしれないしね!!」
ルシフェルの猛攻を二人は受け続ける。
『っ!!!行かないでくれ・・・ニヒル!!!』
「何処を見ている!!君が相手にしているのはこの目の前の人間だ!!ルシフェル!何をお前は恐れている!?」
『この奪い奪われる世界では!!ニヒルは幸せでいられない!!そして、何もかもが奪われる!!』
「彼女の幸せは君が決める事じゃないでしょ!?君が本当に彼女を思うのなら君は!!彼女を守る事だ!!』
『・・・っ、黙れ!!俺は見たく無いんだ!!この未来も絶望しかないのだからな!!!』
「くっ!!!」
「ぐぁっ!」
ルシフェルは二人を強引に押し退け、ニヒルに迫った。
『うおおおおおおおおっっ!!!』
その次の瞬間だった、ニヒルは振り向きざまに渾身の一振りをルシフェルに放った。
『なっ!!!』
その威力はルシフェルの槍を粉々に砕いた。そしてニヒルの刀も、ボキンと真ん中から折れた。
『折れた・・・』
『レイ ノルド・・・』
ニヒルはルシフェルに語りかけた。そして刀を捨てると彼女はゆっくりとルシフェルを抱きしめた。
『な、何で・・・』
ルシフェルは訳も分からずニヒルに抱擁され続け、手に持っていた槍の欠片を落とした。
『桜蘭も・・・飯綱もおいで』
そしてニヒルの呼びかけに応えるように、桜蘭と飯綱は彼女の元に駆けつけた。
「かあちゃん?」
「おねぇちゃん?」
そしてニヒルは二人も抱きしめた。
『本当にごめんね・・・私、親らしい事が何も出来なかった。それどころか、私たちの罪を全部この小さな背中に・・・』
ニヒルは桜蘭の背中をさする。
「ううん、おれなんとも思ってないっすよ。なんとなくおかんの心、おれにはわかるんだ。そして、おとんの気持ちも、妹たちの気持ちも・・・おれがつなぐっすよ、おかんの意志もおとんの意志も、だから安心して?おれ、大丈夫っすから。だから二人とも、安心してくれっす」
桜蘭はルシフェルとニヒルの頭を撫でた。
「桜蘭?そうか・・・お前は」
ルシフェルは気を失い、かくんと頭を下げた。
「おいらは絶対におねぇちゃんは忘れないよ!!何があっても!またおいらたちは出会って今度はみんなで一緒にいるんだ!!だから!おいらは何があってもこの家族みんなの事だけは忘れないから!!だからまた、会えるよねぇ!?」
『ありがとう飯綱・・・うん、また会うですよ。絶対に』
飯綱は泣きべそかきながらニヒルにより抱きついた。
「ニヒル アダムス君・・・その姿でいられるのはあとどれくらいだ?」
ディエゴは見抜いていた、今ニヒルがビーストの姿でありながら完全に意識を保っているのはほんのわずかな奇跡である事を。
『そう長くは無い・・・けど、やれるだけの事はしたい。ディエゴ、永零、私はお前たちの察しの通りもうすぐ意識を失う、その前に私は何処かで長い眠りにつく。神の話では目覚める時は記憶が蘇る時、新しい私の転生者が現れる直前。つまり私が目覚める時、記憶支配を真っ先に破るのはここで呑気に寝てるこの馬鹿です。そして私はきっとこいつとまた戦う、どう決着を付けるのかは分からないが、その時にはディエゴ、お前がその決着に立ち会ってくれ。そしてそこから物語は新しく始まる・・・』
「あぁ、この本、『この異世界より真実を込めて』これには特段強い能力をかけておいた。恐らく、この本を開くのはその力が及ばないお前の転生者になるだろうな」
「・・・なら僕はまた君と勝負しなきゃ、僕は完全に記憶を消して別の僕として生きるよ。そして記憶を取り戻した時、僕の意志は揺らぐのか揺らがないのか見極める。クラークさんとボローニャさんも、そんなに待たせるわけにはいかないし。だからニヒルさん、また僕と勝負してね?今度こそ三度目の正直、絶対に勝つから」
『あぁ』
そう言い残すの永零はそのまま何処かへと姿を消した。
『そろそろ、時間みたいだ・・・』
「ニヒル、桜蘭とサナ、ルナは俺がしばらくあの狭間でしばらく面倒を見よう、あそこには時間の概念が無いからな。そして転生者が見つかった時、俺は頃合いを見て桜蘭を向こうの世界に送る。そしてサナ、ルナはこっちの世界に残す。これで良いんだな?」
『それで良い、ディエゴ・・・本当お前には迷惑をかける事になる・・・済まない』
「憎まれ役は昔から慣れてる、謝らなくて良い。そして、そこからは俺はこのルシフェルの意志を俺は受け継ごう。今回俺はお前に懸けたが、この男の言い分も分からない訳ではなかったんだ。リリアを勝手に生き返らせ、死を弄ぶ連中は本当に生きる価値があるのか、俺もまだそれを見極められていないからな。選ばれし者の楽園、アンダーエデン。俺はきっとそこを目指す、かつての怒りのままに」
『そうか、お前はそもそも人間の世界を憎んでいたからな。きっと、そのお前の意志に桜蘭たちは立ちはだかるのかもしれないです・・・さてと、私はそろそろ行かなきゃです。あぁ、名残惜しいな、またみんなに会いたいよ。全然顔を見れなかった、成長した桜蘭やサナ、ルナ。勿論飯綱にもまた会いたい・・・みんなでバカな事がしたかった・・・』
ニヒルは桜蘭たちを眺めると涙を流し、再び抱きしめた。
「会えるよ、俺が絶対に会いに来るっすから!!だからおかんは今は休んでて!」
「おいらも!必ずまたみんなで仲良く会うんだ!!会わなかったら針千本だぞ!」
『そうですね・・・さぁ、行くですよ』
ニヒルは立ち上がり、荒野の彼方は歩き出した。
「俺たちも行こうな、桜蘭」
「うん、いづなはどうする?おれんとこ付いてくるっすか?」
「おいらはここで待つさね、旅でもしてのんびりと、食って寝てさ。だって、また会えるって分かってるんなら全然大丈夫さ!」
飯綱はポンと、大きいお腹を叩いた。
「そうだな・・・なら飯綱。一つお前におまじないだ。お前の名前に俺の力をかけた、お前も同様に記憶は失われるが、お前は本名を忘れる代わりに大切な者の名をその記憶に刻み込んだ。これならばお前はニヒルを、お前の家族を忘れる事はないだろう」
「ディエゴのあんちゃんありがと。でもその時のおいらはなんて名前なの?」
「ん、そうだな・・・狐、キツネ・・・フォックス?」
因みにディエゴもレイノルド程ではないがネーミングセンスはあまりない。
「んお?ふぉっくす・・・カッコいいじゃん!!じゃおいらは今日から思い出す日までフォックスな!んじゃ!!またねー!!」
フォックスはまた明日ねのような感じで荒野に消えた。
「さぁ、行こうか・・・」
「うん」
そして桜蘭とディエゴも狭間へ向かって歩き始めた。
「俺が・・・全部終わらせるから・・・待っててくれ、かぁちゃん」
「?」
創歴二十年 第一次世界最終戦争 終戦




