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創歴二十年 異世界最終戦争 決戦

 ニヒル アダムスがビーストになるまでのタイムリミットはあと五分。ルシフェルとニヒルが対峙しあう一方、永零とガイアも向かい合っていた。


 「はて、対峙するのは初めてではない気がしますね。あなたがわたくしを睨むその目、わたくしは見た事がある」


 「? 僕は君と何度か会ってるけど、そんな風に見た覚えはないよ?」


 「そうですか、なら良いです。行きますよ?」


 ガイアはその美しい外見とは裏腹にとてつも無い速度で永零の背後を取った。


 「くっ!はやいっ!  流石に反応し切れないね!!」


 永零はかろうじて避ける。本来の実力であれば反応し、反撃出来たであろうが、今の疲弊した身体では反応するのがやっとだ。


 「それでも完全にかわした、やはり運動不足ですねわたくし」


 「勘弁してよ、鍛えてる女神様なんて見たくないな。それより君のその鎌、死神の大鎌ってとこだね。少しでも擦れば終わりだ」


 「えぇ、それに加えて防いだとしても武器は使い物にならなくなってしまいます。あなたとわたくしは実力の差はかなりありますが、この武器とあなたのその疲労具合なら時間稼ぎは出来るでしょう」


 「く・・・」


 「さぁ、あと四分です」





 一方、ディエゴと森羅は迫り来るほぼ無限の騎士達を倒し続けていた。


 「はぁ・・・はぁ・・・流石に二億と言うのは、このわたくしでも骨が折れる・・・」


 「もうへばったのか?神和住 森羅君、俺はまだまだ行けるが?」


 「その余裕・・・ディエゴ。お前何かニヒルから聞いているのか?」


 森羅はディエゴに謎の余裕が見てとれた。その表情はニヒルとも似ているように彼は感じた。


 「この状況でも周囲の観察は怠らないか、流石だな。だがこれは大きな賭けになるだろう。既にクロノスもこの作戦の為に動いている・・・」


 森羅はニヒルの真の目的を聞かされた。少し固まったが、もう時間がない、森羅も意を決した。


 「そうか・・・ならば、ここの敵はわたくしが食い止めよう」


 「今しがた骨が折れると言っていたが?」


 「骨が折れる程度だ、出来ない事はない・・・だから任せたぞ・・・」


 「分かった・・・お前こそ頼んだぞ」


 ディエゴは森羅の覚悟の目を見届けると反対方向へと飛んだ。


 「はぁ・・・まだまだ湧いて出てくる。ニヒル、お前の望む未来は決して楽な道では無い。そうだ、わたくしの孫もいずれ来る未来に巻き込まれる、今見た未来であの子は、あの子たちは苦しんでいた。それを分かっていながらも我々では辿り着けなかった未来の為に、お前は心を悪魔に売るのだな。ならば、わたくしもそれに付き合おう・・・ふっ、ウンディーネ、先に謝っておかなければな、どうやらわたくしの孫が世話になるみたいだ。やんちゃな子だ、迷惑をかけて済まないな・・・」


 森羅はブツブツと呟きながら歩み続ける。しかしその足取りは力強く、先程までの疲労は全く持って感じない。そして迫り来る騎士たちを次々と倒していった。


 「ふぅー・・・あと三分・・・わたくしはまだ、成長を止めないぞ!!来い!一撃で全てを終わらせる!!」


 森羅はこれまでに無いほど精神を両拳に集中させた。


 「無より始まり、全てを網羅せよ・・・そして未来を・・・その意志を引き継ぎし少女の名は零羅。我が孫、いずれあの子はたどり着く。このわたくしを遥かに超え、神破聖拳を更に超える。その成長を阻害するお前たちをわたくしは許しはせんぞ!!神破聖拳!!最終秘奥義!!」


 次の瞬間、土煙まみれで曇天の空は綺麗さっぱり消えてなくなった。





 「蒼天破(そうてんは)





 この一撃はピンポイントで、騎士たちの全てを弱点を突き打ち倒した。


 「いくら不死であろうと・・・この技の、前では・・・象に踏み潰される蟻と同じ・・・さぁ、未来は・・・託したぞ」


 森羅はそのまま地面に倒れた。周囲には誰もいない、彼は誰も見る事なく息をする事をやめた。






 「っ!!」


 「うわっと!なんやウンディーネはん!?いきなり止まらんといてーな!って、なんやあれ?空が真っ青になっとる」


 玉藻の前を走っていたウンディーネが突然足を止めた。そして真っ青に晴れ渡った空を眺めた。


 「今、胸騒ぎがした・・・」


 「あと三分しか無い、急ぐぞ」


 ディエゴは森羅が戦う傍ら、別々に戦っていた者たちを連れてある場所に向かっていた。


 「ディエゴよ、確かにあの数の敵が突然現れたのは計算外じゃが、それなのに何故ホイホイとお前に付いて行かねばならんのじゃ?」


 サラマンダーは敵である自分たちも連れている事に違和感を覚えていた。


 「永零は既にニヒルに対し負けを認めたも同じ、それにあれはお前たちでももうどうしようもないのは分かるだろ?説明してる時間はもう無いのだよ。やるべき事は異世界間転移装置の起動、アレッサンドル パヴァロフ君と狭山 善之介君なら三十秒で出来るだろう?座標はどこでも良い」


 ディエゴは必要最低限のことだけを告げ、指示を出す。


 「そうか、寸前でニヒルを!パヴァロフ!二十秒でやるよ!」


 善之介はディエゴの目的を考察し、準備に取り掛かった。


 「・・・承知した!」


 「稲魂 鞍馬君たちも早く準備したまえ」

 

 「おいディエゴ、あの世界の支配者的な奴らはどうするのだ?」


 ウンディーネは何処かに彼らを探している。しかし、そいつらはすぐそこにいた。


 「見ろ、そこに置いておいた、済まないが装置に括り付けておいてくれ。俺は少し用事がある、二十秒で戻る」


 「ちょ!あと二分じゃぞ!?」




 サラマンダーを他所にディエゴは飛び出す。目指した先はニヒルのいる場所だった。丁度攻撃が弾かれ互いに間合いを取った瞬間にディエゴはたどり着いた。


 「はぁ、はぁ・・・任せたですよ・・・ディエゴ」


 そしてディエゴはニヒルからある物を受け取った。


 『ん?何だよそれ!』


 「あぁ・・・必ず守れよ、俺も必ず守ってやる・・・」


 「さぁな!!行け!ディエゴ!!」


 ディエゴはそれを受け取るとサラマンダーたちの元に戻った。


 「ふぅ・・・ふぅ・・・あと一分四十秒。四精霊、ニヒル アダムス君の真の目的は、この世界全ての記憶を消す事だ」


 「は・・・今、何と言ったのじゃ!?」


 「説明してる余裕は無いのだよサラマンダー君、四精霊。お前たちには来るべき日に備えしばらく眠っていろ。そしてニヒル アダムス君からの伝言だ。四つの試練を超えし者、新たなる支配者とならん。覚ませ四つの力、獣を使いし支配者よ、だそうだ」


 「い、意味が分かんねぇぞ!?」

 

 「意味なら目覚める時に分かる。あと一分・・・パヴァロフ!起動しろ!」


 「承知!」


 「ちょっ!!パヴァロフさん!?」


 パヴァロフは素早くコンピュータを操作し、装置を起動した。


 「ディエゴ!!待たせたわね!連れて来たわ!」


 空間を飛び越えるようにウーネアとクロノスが桜蘭を連れて現れた。


 「良いタイミングだウーネア アダムス君。後は分かっているな?」


 「えぇ、やるわ!」


 ディエゴとウーネアは互いにセカンダビリティを全開にした、二人は記憶を操作する力を持つ。それを使えば世界の人間全ての記憶を変える事は容易だった。


 「・・・どうして」


 「ちょっと!!飯綱!!何処行くんや!?」


 「また・・・おいていかれちゃう・・・一緒にいかなきゃダメだよぅ!」


 突然飯綱がふらっと外に出て来てしまった。


 「おかん・・・」

 

 「あ、えっ!?桜蘭!!いつの間に」


 桜蘭も突然ニヒルたちのある方に走り出してしまった。


 「っ・・・くそ!!」


 ディエゴは桜蘭を追いかける。


 『がぶっ!』


 ディエゴの追いかけるその手に飯綱が牙を立てた。 


 (飯綱が何故突然・・・しかも牙を、まるで普通の動物のように・・・これはまさか、桜蘭君のセカンダビリティか!?)


 「桜蘭ァッ!!」


 ディエゴは飯綱をふりほどき桜蘭に手を伸ばした。


 「その場所は!?クロノス!時を止めて!!」


 ディエゴと桜蘭、飯綱がいた場所は空間転移する際の座標のギリギリ外側だった。このディエゴの直接転移は衝撃を和らげる為のカプセルは無い。代わりに半径十メートル程度の存在を一気に送れる。しかし、転移の半径外側ギリギリは上手く転送出来ず運が良くて狭間の世界に取り残される。運が悪ければ身体がバラバラになってしまう。


 「これは流石に無理よ、子どもの急な動きに時間は対処出来ない」


 「くっ!」


 ディエゴは飯綱と桜蘭を連れて範囲の外側に飛び出した。


 「ディエゴ!!早く!!」


 ディエゴはすぐに戻ろうとしたが、それを止めた。


 「いや、もう遅い!これで良い!!ウーネア アダムス君は役目を続けろ!!桜蘭は必ず俺が連れて行く!!パヴァロフ君!!」


 「承知!!」


 「くそっ!!なんでよ!!」


 「ウーネア!!全てを犠牲にさせるな!!」


 「っ!!分かったわ!ごめんなさい!頼んだわディエゴ!発動!!」


 次の瞬間、ウーネア達はこの世界から飛んだ。そして二人は記憶支配を発動する。こうしてこの世界からニヒル アダムス達がこの世界を作り上げたと言う記憶が消え去った。


 「あと二十秒・・・後は、こいつを・・・」


 ディエゴの手には一冊の本が握られていた。


 「だめ・・・おかんが、いなくなる・・・」


 「?」


 「どうしてみんな・・・おいらを置いて行くんだ。行かないでくれよぅ・・・」


 (これは、俺とウーネアの記憶支配が効いていない?いや、それよりもだ、ここから離れなければ・・・)


 




 「はぁ・・・はぁ・・・」


 『くそっ!!俺は神だぞ!!何故俺の攻撃は届かない!!あと二十秒・・・!!』


 ルシフェルはどれだけ攻撃するしようとも反撃を繰り返すニヒルに苛立っていた。


 「言ったですよね!お前はそこまで強く無いってな!!あと十五秒!!行くぞ!!」


 ニヒルの身体は半分以上がビーストに飲み込まれかけていた。それでも彼女は無理矢理恐怖を抑え込みルシフェルへ攻撃を仕掛ける。


 『くそがぁぁっ!!』

 「ぁぁぁぁああっ!!」


 (ディエゴ、私が完全にビーストになる前に早くそこから逃げろ。私は意識を失わない事に賭けているが、それでもマザービーストになる瞬間、ここ一帯を消し飛ばす気がする、あと十秒・・・なんとか持ち堪えろ、桜蘭と飯綱をを連れて・・・早く!!)


 ニヒルは戦いながら出来る限りディエゴたちから離れようとした。


 『くそ!くそ!!どうしてだ!!どうしてお前はそこまでして俺を否定するんだ!!!俺はただお前と一緒にいたいだけなんだ!!なのにどうして!!』


 「私だって一緒にいたいさ!!でも、それはみんなとだ!!ただお前と、家族と一緒いるのは意味がない!!死んでるのと同じだ!!世界を犠牲にしてまで私は生きたくない!!」


 『あと三秒・・・この一撃に賭ける!!』


 ルシフェルは突きの構えを取る。ルシフェルは二十年経つ瞬間を狙いそのまま完全覚醒をする方法を考えた。この疲労と出血、死ぬには心臓を突き刺せば殺す事が出来る。


 「うおおおおあぁぁっ!!」


 『うりぃやぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!』


 あと一秒・・・その時だった。


 「だめ・・・」


 「っ!!」


 二人の攻撃を仲裁した者がいた、桜蘭だ。桜蘭はディエゴを払い除け、飯綱を使い二人を止めに入った。


 ニヒルはその光景に手元が狂いルシフェルの頬を掠めた、ルシフェルは桜蘭により攻撃をずらされた。


 「ダメだよ・・・おれが、おれがかあちゃんをまもらなきゃ」


 「っ!!ダメだ、桜蘭!!逃げて!!くっ!!呑まれる・・・ダメだ、桜蘭を・・・巻き込むな、私よ・・・」




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