創歴二十年 異世界最終戦争 空間の神と時間の神
創歴十九年
「支配、戦争、飢餓・・・これを討ち倒すとは素晴らしい力だ。この死の騎士、お前たちの実力を認めよう」
「はん!思い知ったか!?儂らの力をな!!」
サラマンダーは死の騎士にガッツポーズを見せ、まだまだ余力があるとアピールした。しかし、その身体は既にボロボロだ。
死の騎士は手に持つ鎌を振るい、ディエゴ、サラマンダー、ウンディーネを死の寸前まで追い詰めていた。
「そうだな、しかしこれ以上戦う事を勧めようとは思わんな、見ろ」
死の騎士はある方向を指差した、次の瞬間だった。
「っ!!なんだ!?」
突然、衝撃波と突風がこの戦場に吹き荒れた。その衝撃はあらゆるものを吹き飛ばした。
「っ、今のは・・・あれはニヒル アダムス君の方角から」
瓦礫を押し退けディエゴは周囲を確認した。
「ん?そうか、失敗したみたいだなルシフェル・・・」
死の騎士は何処かへと去ろうとした。
「どこへ行く気だ死の騎士、まだ妾は戦えるぞ?」
「儂もまだピンピンじゃ!!」
ウンディーネもサラマンダーも今の衝撃を受けてもまだ立っていた。
「流石にタフだな四精霊。そしてディエゴ アンダーソン、人間の憎しみが形を成したようなお前の力は侮れん。故にこれ以上の戦いはしたくは無い」
「なんじゃ?恐れをなして逃げると言うのか?」
「そうだサラマンダー、人間のしぶとさを今しがた痛感させられていてな。悪いが退散させて貰う、どうやらルシフェルの方が救援を求めているみたいだからな」
死の騎士はディエゴたちの前からいなくなった。
「なんなのじゃ、あやつ・・・それより、なんじゃこれは」
「巨大クレーターになってしまっておるな、ルシフェルは、いやニヒルは何をしたと言うのだ?」
周辺は全て更地になり衝撃の中心地から円を描くように巨大な山脈が形成されていた。
「恐らく、ルシフェルが何かを仕掛け、ニヒル アダムス君等がそれを阻止した。その力のぶつかり合いがこのクレーターを作ったのだろうな」
ディエゴは冷静に分析し、再びニヒルのいた方向を見る。
「しかし、何をしようとした・・・」
時間は少し巻き戻る。
「はぁぁぁっ!!」
『うりぃやぁぁぁっ!!』
『ガギィッ!ガギン!ガキンッ!ガガァッ!』
ニヒルとルシフェルはほぼ互角の戦いを繰り広げていた。
『ははっ!!やっぱり強ぇなぁ!!ニヒルちゃん!!』
「そりゃどーもです!!」
『んぎっ!?』
ニヒルの渾身の一撃はルシフェルを吹き飛ばし地面に激突させた。
「全く・・・おい、ルシフェル。いい加減手加減するのやめるです。私は殺す気で来いって言ったですよね?」
『ニヒルちゃんこそ俺の話聞いてた?俺は絶対にニヒルちゃんを死なせないってさ』
「あっそ・・・勝手にするです、私はお前を殺してでも止めるけどな!」
『やってみやがれ!!』
二人の激しい戦闘は続く、その二人を追ってウーネアは走ってきた。
「ひぃー、何なのよもー・・・全然ついていけない。ルシフェルはあのルシフェルって思えばあの強さは分かるけど、お姉さまは何なのよ・・・あれ、軽く今の永零を超えてるじゃない」
ウーネアは二人の戦いを追いかけるだけで必死だった。彼女とて覚醒者で、他の覚醒者よりも遥かに強い実力を持っている。しかし、それを軽く超える激闘がウーネアの前で繰り広げられていた。
「それにしても・・・なんでお姉さまは、ルシフェルを殺すなんて・・・いくらなんでもやり過ぎよ。どうしちゃったのよもー・・・」
そしてウーネアはニヒルの考えが読めずにいた。未来に希望を託す、それでいて今のままを続ける。どうやってそれを実現するのかが分からない。そして何より分からないのは実の夫であるルシフェル、つまりレイノルドを本気で殺そうとしている事だ。
「きっと、ニヒルは気がついているのでしょう」
「わっ!?えっ、クロノス!?何でここに?ってかどこ行ってたのよ!」
「少し用事をね」
ウーネアの後ろに突然クロノスが立っていた。相変わらずフードを被り表情は伺えない。
「それよりよく見なさい。ニヒルはルシフェルの目的に気が付いているわ。そして、彼女にとって今のルシフェルとレイノルドは同じに見てはいない」
「見てないって、それって当たり前じゃない。ルシフェルとレイノルドは二重人格みたいなものじゃないの?」
「違うわ、ルシフェルとレイノルド。確かに別の人格ではあるわね。でも、今の彼はそのどちらでもない。ルシフェルでありレイノルド、二人の意志がシンクロしている」
「レイノルドがルシフェルと同じ意志を持ってるって事?確かに言われてみれば目的は一致してるのかも・・・でもレイノルドは四神たちを自分勝手に巻き込んだりしないわ」
「どうかしらね、彼の目に見えているのはニヒル アダムスだけ。そもそもルシフェルはニヒル以外の人間は正直言ってどうでも良かったのよ。けど、レイノルドと共にいた事でルシフェルは考えを改めた。そしてニヒルを中心とした必要な存在のみを残す事にした」
「なら問題ないじゃない」
「大ありよ、そこに気がついているから彼女は戦っている。ルシフェルは昔から終わり良ければ全てよしって感じだからね。けど安心しなさい私はニヒルの味方よ。まぁあなたにとっては敵なのかしらね?」
クロノスの言葉にウーネアは身構えた。
「違う違う、ハズレですよウーネア。この問題は全体を見て解かないといけません。ルシフェルは騎士をどんどん失っているにも関わらずまだ余裕を見せて戦っている。そして彼はまだ本気になるつもりは無い。それはどう言う意味だと思いますか?」
「・・・まだまだルシフェルには策がある?」
「正解。ではその作戦とは何か、ヒントは四騎士にあるわ」
「・・・四騎士は、四神を素体に姿を現した?」
「そう、そして黙示録は四騎士しかいなかったかしら?」
「待って、確か四人の騎士の前に蝗の王が現れるんじゃ・・・それってまさか!」
ウーネアはルシフェルの策に気がついた。そしてニヒルが必死に戦う理由も。
「答えは?」
「アバドンの素体!!四騎士は多分プロジェクト・マキシマの応用だった!その精神を宿すには神の肉体が必要!アバドンを呼び出すのなら、また別の器がいる。そして今、最も無防備な神の肉体を持ってるのって桜蘭よね!」
「百点よウーネア、そう桜蘭が答え。ニヒルの双子の娘、サナとルナは同じ神の素体とは言えその身体は幼すぎてアバドンの器にはなれない。けど桜蘭なら可能よ、既に物心も付いて最も無防備な状態になっている。素体には既に十分なのよ」
「って事はお姉さまは、桜蘭を守る為に!!」
「そうよ、けどそんな真似はさせないわ。いくら全部終われば元に戻るとは言え、それはニヒルの望む未来では無いわ。私はニヒルの目指す未来が見たい、だから協力する。それだけの事よ」
クロノスは既にルシフェルの策に気が付き桜蘭を八咫烏のいる場所へ移していた。
「そう言う事だったのね・・・お姉さまはこの世界の罪を桜蘭君に残させない為に」
「えぇ、人は生まれた瞬間から親の罪を引き継ぐもの。ニヒル自身もまた桜蘭へ罪を繋げてしまっている。けど、ルシフェルは世界そのものを桜蘭へ背負わせてる」
「あ、あの野郎・・・やっぱりとんだクズじゃない!クロノス!桜蘭は今何処にいるの!?」
「桜蘭は今世界の狭間。記憶の書庫にいるわ・・・ところで、さっきから盗み聞きは良く無いわよ?ウラヌス」
「げ、バレちまったっとぉ・・・」
「ほんとあんた等神様連中一体いつも何処から現れるのよ・・・」
気が付けばいつのまにかウラヌスが物陰から聞き耳を立てていた。
「それより、何処へ行く気かしら?」
「やれやれ、出し抜けなかったなっとぉ。無論桜蘭のとこだ、さっきから探し回ってたんだが見当たらなくてなぁ。もしかしたらあんたが知ってるんじゃないか?って思ってこっそり聞いてたらビンゴっとぉ」
「ウラヌス!あんたに桜蘭は渡さないわ!!」
「いや、場所は分かったんだ俺勝ちだっとぉ。んじゃ」
ウラヌスがその場から瞬間移動で消える直前。
「あれ?」
「質問は二回目よ、何処へ行くのかしら?もしかして、この私を出し抜けると思ったのかしら?もしそう思っているのなら、あなた0点ね」
クロノスはウラヌスの肩をぐいっと引き寄せていた。
「ナイス!クロノス!!ウラヌスめ!あなたは私が!!あ、あれ?身体が!」
「いえ、あなたも手を出さないでウーネア。こいつは私がやります。あなたには別の仕事がある」
クロノスはウーネアの動きを止めた。
「仕事?」
「えぇ、ニヒルの未来に行き着かせるのはかなり難しいわ。あなたが本当に姉を思うのなら、あなたも罪を被りなさい。そして、その罪を繋げなさい」
「・・・そんな」
「今はまだ覚悟が決められないのなら待ちます、私がこいつと決着をつけるまでに決めなさいウーネア」
クロノスはウラヌスをフードの中から睨んだ。
「おぉ怖、はぁ〜ぁ、どうやらルシフェルの作戦を続けるにはお前を倒さなきゃならねぇらしいなっとぉ!!」
ウラヌスは赤い刀身の青龍刀のような片手剣を取り出した。
それに対してクロノスは胸元から一つの懐中時計を取り出した。
「時を操る時計か、それで空間を司る俺の動きを止められるか?」
「勘違いするな、これが私の武器だ」
クロノスは時計を前に出すと淡く輝き時計は針を一つに組み合わせたような一つの剣に変わり、クロノスはそれを手に持つとウラヌスに向けて構えた。
「お、カッコいいなっとぉ。それ俺も欲しいなぁ」
「欲しかったら自分で作れば?さ、行くわよ」




