第六の到達点 歴史の特異点 陸 支配(世界を支配した者)
フロンティア ディエゴ アンダーソン
「やはりな、俺の持つこの転移装置は使えるようだ」
俺はかつて永零を倒す為に世界の狭間と呼ばれる場所で自力で異世界間転移装置を作った。しかしこれは扱いが難しい上にシステムが旧型だ。その為あの建国時にはこの装置は破棄していた。
だが、また掘り出して使う事になるなんてな・・・
「磁場が不安定になるこのフロンティアの奥、この奥は世界の狭間に繋がっているか・・・」
永零が興味深く何も見えないひたすら砂漠の世界の奥を見つめる。ここは俺がかつてこの世界に戻ってくる事の出来た場所だ、ここに俺の作った転移装置がある。
「あえて僕はまだこの世界の在り方を調べてなかった。興味はあったけどそれ以上にやらなければならない事があったからね。けど改めて思う、この世界は不思議だよ。世界の先に果てがある。まるでこの世界は天動説が正しいみたいな感じだ」
「そうかもしれないな、俺たちは自分たちの事で精一杯でこの世界をまだ何も知らない、海の先もまだ見えていない」
「うん、ディエゴさん・・・まだまだ僕らは知りたい事が多すぎるよ。もっともっと僕は世界の事を知りたい、そして見せたい。その為には世界は平和でなくちゃいけないんだ。そして自由じゃないと、世界のまだ見えない神秘を僕は見たい。行こうディエゴ、全ては平和の為に、僕らはニヒルさんを救いに行くよ」
ウラジーミル リザヴェノフの仕掛けた罠とは送る座標の変更だ。永零の異世界間転移装置は一人一人を別々の場所に転移させる事が出来る。彼女はそのシステムをこっそりと書き換え表面上は向こうの世界に行かせるように見えるが実際は別の場所に飛ばされた。
指示を出した奴は国連のお偉方、そもそもここの子どもを集めていると言う施設は彼らの実験の為の施設でもある、いざと言う時に使うモルモットだ。
そしてその子どもたちは俺たちを監視、そして裏工作させるためのスパイもいる。ここにいるのは彼女だけが特別では無い。様々な思惑を子どもたちに押し付け、貪る連中がここを支配している。
今までは目を瞑っていたが、奴らはどうやら調子に乗り過ぎたらしいな。
「さぁ、この先だ・・・問題はこの先にどうやって向かうかだ」
「問題ないよ、僕の到達点は既にこの磁場が乱れ狂う先に辿り着く」
俺たちが向かうべき場所、それはニヒル アダムスのいる場所ではない。そっちはむしろニヒル アダムス本人に任せた方が賢明だ。俺たちのすべき事は早急にこの事態を終わらせる事。今回の首謀者の元へ一気に向かう。
その為には向こう側の世界に行かなければならない。そこで使うのが俺の作った転移装置だ。これならば彼らの監視を逃れ向こう側に行ける。しかしこの装置を稼働させるにはここではもうダメだ、もうここに魂は流れていない。
この世界にはどうやら魂の流れる道のようなものがあるらしい。膨大な精神のエネルギーが世界と異世界の狭間を行き交う。その魂が何処から来て何処へ行くのかはわからない。ただありとあらゆる生命の魂はここを通る事だけは分かっている。俺はその通り道に宿るエネルギーを使い異世界間を移動する。
フロンティアの奥、ここは磁場が極端に乱れ、異常なまでに高温になったり低温になったりと世界のルールがめちゃくちゃになる。そして空間が曖昧になる瞬間がある。そこが魂が流れる道がこの世界に露出する瞬間だ。
見つける事は奇跡か永零の到達点でしかここは見つけられない。確率にしたら天文学的な数字になる、だが俺たちは再びこの場所を見つけた。魂の流れる道だ・・・
「ここだ・・・」
「だね。ディエゴさん、君はつくづく凄い人だよ、僕がかつて君をここに閉じ込めた時、ここ狭間の世界から君を出す算段はついてた。でも君は自力でこの空間を理解し、支配した。そして脱出し僕の計画だった世界の不老不死化を阻止してしまった。僕の到達点やニヒルさんの特異点はおろか、どの神の力も持っていない君の力、もしかしたら君こそが僕の中の神が求めた真の人間としての意志を持ってるのかもね」
「永零持ち上げ過ぎだ。ただ、言えるのは何があろうと俺は俺として進み続ける。ディエゴ アンダーソンとして最期まで生き抜く、それが俺が勝手にリリアと約束した事だ。行くぞ永零、勝負は一瞬で片付く」
座標は決まった、後は転移するだけだ。そうだ、勝負はこの一瞬で終わらせる。
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創歴十九年 ???
「どうなっている!何故奴は!!」
「そう慌てるな、こちらには真の神が付いている・・・」
「この状況、察するに奴はクロノスをも従えている、これは流石に想定外と言わざるを得ないぞ」
見慣れない場所、男たちは何の為にもならない談義を続けていた。
「そう慌てんなっとぉ」
慌ただしい空気に水を差すような声がこの場の流れを変えた。
「ウラヌス、来ていたのか」
「初めからいたじゃんかよー、なに?みんなして俺を仲間はずれ?そりゃ悲しいなっとぉ・・・」
これ見よがしにウラヌスは肩を落とす。
「何をしに来た?」
「いやぁね、とりまあんたら支配者にアドバイスをね、急いては事をし損じるってな、セカンダビリティにご執心は良いけどよ。それで奴らに喧嘩ふっかけんのはやめた方がいいって事」
「何だと?既に我々はセカンダビリティの掌握に成功しているのだ」
「掌握?何言ってんのさ、このシェン・リーとか言う男に神の精神を与えた事か?それともルーシーの野郎の精神を手に入れた事か?確かにルーシーの野郎をあんたらが手にしたのはすんげぇよ?んで、あいつあんたらに協力してんだってな?一体どんな手を使ったらあいつがあんたらに協力する気になるのかねぇ」
「彼とは我々人類の未来との利害が一致している。それはお前も知っている事だろう?」
「あぁ、知ってる。この先の未来、各国はいずれ必ずセカンダビリティを求めて戦争になる、そうなる未来はルーシーの野郎は望まなかったとぉ」
「そうだ、全ては奴がニヒル アダムス等にセカンダビリティを与えた事が発端なのだ。彼はその責任を取るべく行動した、彼はその身にかつて分け与えた力を還元させる。指宿 永零に宿る神もニヒル アダムスに宿る神も全て還元されれば世界は滅ぶ未来に進む事は無い」
「おーそうだったなっとぉ、んでもってルーシーの野郎はその力をあんた等の為に使い世界を平和に導くと・・・全ては、この世界の誕生から見てきて唯一自身を納得させることの出来た人間、世界の答えを出してくれた彼女、ニヒル アダムスの為にってな。そうだなぁ、あいつはマジでニヒルを愛したのは間違いないみたいだなっとぉ・・・」
ウラヌスはしみじみと頷く。
「ウラヌス、さっきから何を確認するように聞いている?」
「ん?そりゃあんた等の意志を聞きたかったからに決まってるじゃんっとぉ、世界の支配者様のな。にしても、ほんといつからだろうなぁ、世界があんたらみたいな奴の元に行っちまったのはよ・・・知ってるか?世界って運営する為に作ったんじゃ無いんだぜ?特にこの世界はよ管理なんて以ての外、自由で奪い奪われる事。それがこの世界なんだよ」
「なんの話をしてる?ウラヌス、目的があるなら言え、貴様の目的は何だ?答えなければ・・・」
「答えなかったらどうなる?命の女神、ガイアの力を応用して俺の精神を即座に消すか?おーそりゃ怖いなっとぉ。確かにあんた等にはそれが出来る、あらゆる命の管理が可能になった。その点で言えばあんたらは既に永零はおろか神すらも凌駕した存在になったと言える。技術でセカンダビリティを作り出したのはそりゃ凄い事だって事は認めるよ。で、それが答えでいいのか?」
「答え?何のだ?」
「こいつ等へのだよ」
『ズガガガガァァンッッ!!』
『バガァァァァァーンッッ!!』
様々な方向で爆発が起き、部屋の天井が吹き飛んだ。
「なっ!!」
「動くなですよ」
「見つけたぜこのやろー!」
「んにゃろー!」
左から現れたのは壁を突き破りニヒル アダムスが刀を男の一人の喉元に突きつけ、レイノルドが槍を別の男に向け、その上で飯綱が毛を逆立てて威嚇した。
「あれ、何たる偶然だねみんな」
「永零、分かっていたんだろう?事の収束に俺たちは別に必要ないと」
「いや、必要だったよ・・・そうでなくちゃこうやって話し合える機会はなかっただろうしね。やぁ、僕は指宿 永零、はじめましてだね、えっと・・・フリーメイソンの方々かな?君えっ違う?じゃぁ十字軍、でもなければ愛◯者達?うーん、とりあえず秘密結社であろう人たちどうもよろしくね」
そして右からは特に構える様子もなく色々と余計な事を語る指宿 永零と少し薄く笑うディエゴ アンダーソンが炸裂音と共に現れた。
「何だこれは・・・あり得ん・・・」
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創歴十九年 ??? ディエゴ アンダーソン
「あり得ないか・・・知っているか?この世界にあり得ないは存在しないのだと言う事を、人間の到達する場所はいつだって通過点でしかない。そこに終わりはない、永遠に奪い奪われ続け手にしていく。君等はそれを履き違えた、俺たちは神ではない。そして君たちが手にしたものも神では無いのだよ」
俺はフランベルジュを取り出し前方向へ突き出した。武器を突きつけられた人達は俺を睨む。俺はこいつ等を知っている、かつて俺が狭間の世界から戻った時、永零に対抗する為に俺はこの世界の技術を提供した。国連内部の秘密組織だ。
この組織に名前は無い、フリーメイソン、イルミナティ、テンプル騎士団・・・かつて様々な形で存在した秘密結社、それ等の存在は今ここに集約している。ここにいる彼らはその秘密結社に存在していた人間たちの子孫だ。
そして世界はこの彼らによって支配されている。ありとあらゆる世界情勢、景気、戦争や紛争、国ごとによるイデオロギーや個人的なアイデンティティ、それ等を決めているのが彼らなんだ。
「さてと、君たちの存在は僕も前から存在は認知していた。まぁ今の今までどんな活動をしていたのか、どんな組織なのかなんて知らなかったんだけどね。それは君たちが僕らにこれと言った干渉をして来なかったからだ。でも今回突然僕らへ牙を向けた。
セカンダビリティに関する研究はここ近年で一気に進んだのは間違いない、そして人類がこの技術を恐れる事も欲する事も容易に予想できた。それでも君たちは何もこれまでしてこなかった。しかし今突然君たちは行動に移した。そこには何かしらの理由があるはずだよね、それを聞かせてくれるかな?」
永零は冷めた笑顔を彼らに向け質問する。
「・・・」
答える気は無いようだ。だが無意味だろう、心を読み取れる存在の前にはだんまりは時間の無駄にしかならない。
「ニヒル」
「分かってるですよ、そしてもう分かったです。やっぱりだ、この状況を仕組んだ元凶がな、シェン・リー。あいつは今何処です?」
「ここにいるぞっとぉ」
ニヒル アダムスはウラヌスを横目に見る。そしてウラヌスは表情を変えないままだ。
「な、おいウラヌス!!今何と言った!?ここにいるだと!?」
その次の瞬間だった、彼らの一人が急に慌てた声を出した。
「お、今更になって気がついたってか?あんた等にしては早いなっとぉ・・・ここに今いるのが誰かも忘れてると思ったぜ全くよぉ。ここにいるのは世界を創り出した神と、その神が最初に生み出した存在。光を世界にもたらした神」
『ルシフェル・・・』
ニヒル アダムスの側で突如雰囲気の変わった声が聞こえた。だがこの声なら知っている・・・
『やっとだ・・・やっと戻ってくる事が出来たぜ、レイノルド、また少し世話になるぞ。なに、心配するなよな、俺は味方だ。ちょっと借りるだけだ』
レイノルド ビル ルーカスいや、仮面の男。そしてその名は今初めて知った。ルーシーとは何だったのか今わかった・・・こいつの正体は。
「どう言うつもりだ!!ルシフェル!!貴様何を!!」
『もう分かっている筈だ人間。俺はこの時を待っていた。その為にお前たちに協力する振りをしていたんだよ。ずっとな・・・俺の心はニヒル アダムスと言う人間に変えられた。だが、俺の意志は変わらない。全ての罪に終止符を、今こそあいつとの約束を果たす』
俺はこいつのヤバさを今初めて感じた。何度か遭遇した存在のはずなのに、今いるこの男は何だ?ずっとこの怒りを秘めていたのか?肌が痺れる、喉が乾く、瞬きも呼吸すらする事が出来ない。
『後、一回だ』




