創歴十九年 異世界最終戦争編 世界の支配者
創歴十九年 ??? ニヒル アダムス
とりあえず脱出は出来たものの、ここは何処だ?魔法が使える時点でまだ異世界のはずだが。
「っ!!ニヒルちゃん!!待った!!」
レイノルドが引っ張ったのと私が意志を聞き取った事で辛うじて飛んできた銃弾を避けた。
「何ですあの部隊、見た事も無いですね」
「あぁ、俺もあんな奴ら見た事ねー。何処の誰だか知らねぇけど、飛んだ真似してくれたな全く」
レイノルドが珍しく額に血管が浮き出ているほど怒っている。
「同感、まさか永零すらも出し抜いてこんな真似をする奴らがいるなんて・・・まさか、ガイア?」
ガイアは確か私と同じ存在、そして私に何か言いかけていた。この事になると言いたかったのか?
「どったの?」
「いや、ガイアの仕業かもと言う仮説を否定する根拠を見つけただけです」
「ガイアって、確か・・・あ、仮面の男の奴も昔そいつの名前を言ってた。ガイアの統べる世界の人間は淘汰されたとか何とか。だから俺は人間の敵になったとかってさ」
仮面の男が?考えろ、人間は淘汰された。人間は神の力を超えたと言いたいのか?それで過ちしか犯さない人間をあいつは一度滅ぼそうと考えていた。
けど、私たちと出会った事で考えが変わった。そして私たちに世界を託して何処かへ消えた。そう私は考えていたが・・・
「とりあえず今はあいつらを何とかするです」
「そうだな、ここは俺が切り開く!おらぉ!こっちだっ!!かかってきゃがれー!!」
そう言って突撃して。随分と頼もしくなったな・・・と、思ったのも束の間。
「ぎゃぁぁぁっ!!何だあの数ぅぅっ!!」
お前の腕前は忍耐力はあれども腕っ節はそこまでだろ?逃げ帰ってきた。
「飯綱、とりあえず炎で通路を防げるですか?」
「あいさ!おいらに任せるさね!ニヒルおねえちゃん!」
飯綱は口から炎を吐き出して通路を火の海にした。
「あっちゃぁぁぁっ!!」
「あ、ごめんちゃい」
炎がレイノルドに燃え移って飛び跳ねながら戻ってきた。
「ケツが丸焦げだぁ・・・って、そんなん言ってる場合じゃねぇ!こっちだ!!」
レイノルドが腕を引っ張って反対に逃げた。
「レイノルド、何処に逃げればいいかわかるですか?」
「あん?そんなの知る訳・・・って、あれ?俺なんでこっちに走ってんだ?」
いや、なんか出口の兆しでも見えたのかと思っていたんだが?動きに迷いがなかったし、複雑に逃走してたし。
「あんちゃん何も考えてなかったのぉ?」
「うっせいやい!何となくだよ!とりあえず止まってたって意味ねぇだろ!?ともかくこっちな気がするの!」
この感じ、まさか仮面か男がまたレイノルドをこっそり操って何か・・・いや、違う気がする。
むしろ逆か?私たちをあいつらから守る為にレイノルドを・・・だとしたら、レイノルドの感覚の先は安全かもしれない、奴を信じるか。
「はぁ!はぁ!何なんだこれ、こっちが助かるって気がしてならねぇのはよ!」
「多分また仮面の男です、あんたのそれで思いつくのはそれしか無いでしょ?でもあいつ、今回は味方と私は信じるです」
「はぁ?最近なんて夢遊病も起きなかったしもう何もしないと思ってたんだけどな!」
「でも何となくわかるですよね?何かこっそり導をあんたの記憶に残してたんじゃ無いです?」
「かもしんねぇけど、何でそんな事?」
知るか、あんたの精神だろうが。まさか・・・あいつはこうなる事を既に分かってた?
「げっ!!前から来やがった!!」
前方に敵か・・・ん?これは
「わぁっ!後ろにも来たぁ!!」
ちっ、挟み撃ちにされたか・・・
「レイノルド、こうなったら戦うですよ」
「いや!駄目だ!確かに俺だけで何とか出来ればそれでいいけどさ、この数をやるのは無理!だからってニヒルちゃんと飯綱ちゃんに頼るのはもっと無理!お腹の赤ちゃんには絶対健康に産ませてやりたいからな」
だからと言って、この場を打開する案は無いだろ・・・多少ならまだ大丈夫だ。
『逃げても無駄だ、お前たちはもう袋の鼠。我々としても無駄に殺生は好まない。さぁ、大人しくしてもらおうか』
声を聞くだけで目眩がする。その奥にある様々なドス黒い欲望が聞こえるんだ。このタイミングを狙ったのもわざわざ分断させたのも、色んな思惑のせいだ。
桜蘭が心配だ、恐らく魔の手は桜蘭にも行っているかもしれない。だがディエゴが付いているのが救いか。
「大人しくしてどうする?どちらにしたってお前たちは私たちを捕らえ、その力を奪う気ですよね?管理と言いながらその本心は・・・」
『違うな。確かに、本音は欲しい。その技術とその力。それさえあれば不老不死は以ての外、人類は最強の生命体に進化する。しかし、我々は世界の秩序を保つ者。その力はあってはならないのだ』
「なーるほど。欲望を抑えて、世界秩序の為にこの世界の技術は無くさなければいけないってか。それでこの世界の事を知る俺たちは邪魔だと?ざっけんなよな、あんたらの世界の意志はこの世界が怖くなりましたって?てめぇら人間の風上にもおけねぇなこの野郎!!ニヒルちゃんは!絶対に俺が守るぜ!!テメェらに殺らせはしねぇっ!!」
レイノルドは槍を構える。
『そうか、大人しくしていれば命は助けたんだがな・・・』
命はね、どの道私たちが死んでも死ななくても、先の未来は奴らの実験に使われるのがオチだ。だったら足掻く・・・命の危険に瀕した人間舐めるなよ?
私も戦う体制を取る、一緒に戦えば勝機はある。
『やれ』
来る!
「時よ止まれ・・・」
「っ、レイノルド!!待った!」
突然動きが止まった。私たち以外の全てがだ・・・これは。
「ここまでご苦労様でしたレイノルド、何とかこことあそこと結び付きました、合格です」
クロノスだ、フードを被り顔の見えない女性。
「あそこ?」
レイノルドが聞き返す。
「ここはフロンティアの果てに近い場所。あの子は常にあそこにいるわ」
「あの子?」
私も聞き返す。私の能力でも神の力を持つクロノスとかのレベルの意志は中々聞き取れないんだ。
「あなたがあの子に頼んだのよ?ニヒルを何が何でも助けたいってね。人間を憎んだあなたが、たった一人の人間を守りたいと願った・・・随分と素敵な事ね」
クロノスはレイノルドの肩を軽く叩いた。
「俺が?そりゃニヒルちゃんの為なら俺は何だってするけどさ・・・」
「本当に好きなのね彼女が、やはり一心同体ね。けど私も好きよ。あなたを人間たちの思い通りにさせたりしないわ。安心して、仮面の男はあなたの味方よ、ついて来なさい?合わせたい人がいるわ」
クロノスが壁に手を置くとそこには古い扉が現れた、そしてその扉を開けた。
「本?」
「わぁ、おいらこう言う本きらい。絵本ないのぉ?」
車庫・・・ひたすら長い棚には本がびっしりと並んでいる。これは・・・全部歴史の本だ。
「絵本無くてごめんねいづなっち〜。でも読むと案外面白いもんだよここの本もさ〜。それより、いらっしゃいニヒルちんとるーしー」
本棚の奥から梯子に乗り滑りながらやって来たのは水色の髪の少女、目は左右で色が違う。
「ルーシー?」
「仮面の男のあだ名だよ、あたしは何もかも知ってるからね。それより初めましてではあるよね。ニヒル アダムスと夫のレイノルド ビル ルーカスでしょ?あたしは・・・カラスちゃんだよ。って、ニヒルちんがいるんだから、偽名じゃなくてもいいじゃん。あたしのドジっ子!」
八咫烏はあざとく手を頭の上でコツンと叩いた。そうだ、この子の名前は八咫烏。私はこの子を知っているし、レイノルドも知ってる。この腹立つ具合も覚えてる。
「そ、あたしの名前は八咫烏・・・命の女神、ニヒル アダムス。あたしはあなたの味方だよ」




