創歴元年 異世界建国編 その4 同じ目線
朱雀 レイノルド
「ふっ、どんな助っ人が来るかと思えば、かつての死に損ないに、記憶を消された哀れな奴らか」
仮面の男は鼻で笑った。
「しかしお前はその哀れな奴らより下に見てる奴にここまで手間取った。お前こそ所詮はその程度の実力しかない」
仮面の男の言葉に森羅は言い返した。
「確かにレイノルド、お前は耐え抜いたな・・・そこは認めるしかないか。だが、後はもう止めを刺すだけだ」
仮面の男は剣を振り下ろした。これは森羅もシンの速さを持ってしても間に合わない。しかし
『ガシッ!!』
「っ・・・こいつまだ」
俺は仮面の男の攻撃を素手で掴んで止めてやった。
「俺は助っ人を頼んだが、助っ人来たから戦い止めるなんて言った覚えは無いぜ俺」
「そうだ、お前は今・・・」
「多勢に無勢だ」
森羅とシンによる攻撃、氷の雪崩は神破聖拳により勢いを増し、仮面の男を襲った。
「あーあ、大分こいつに力を奪われてたみたいだな。全然反応出来やしない」
だが、まだ無傷で出てくる・・・しぶといな。
「分かったろ?お前の負けだ俺!」
「うーん、確かにもう勝てる気がしないな、今はな。けど、せっかくの機会だ。手合わせくらいしてくれてもいいじゃないか」
仮面の男は立ち上がり、剣を構えた。
「そうでなくては面白くないな、この程度で俺をたぎらせられる訳無い、見せるが良い貴様の全力を、まだ舞えるだろ?」
「レイノルド、ここは少しだけ下がっていてくれ。これは所謂神々の戦いと言うものになりそうだ・・・行くぞ、シン!!」
森羅とシンは仮面の男に一気に踏み出したのまでは見えた。そこから先はまだ追いきれない、なんかあっちこっちから衝撃波が飛んできて爆破が起こる。
俺の奴、まだあそこまでの力を残してたのかよ。
「レイノルド!」
ウーネアちゃんが駆けつけて来た。そして今にも倒れそうな俺を、支えてくれた。
「お、サンキュー」
「サンキューじゃないわよ見栄張って無茶して。本当馬鹿な男なんだからあんた」
「さーせん、男ってのはこう言う奴なんだよ。見栄を張る事でしか己を表現出来ねぇ、ウーネアちゃんはこんな馬鹿な男に引っかかるなよ?お前はもうちょっと賢い奴と付き合った方がお似合いだぜ」
「な、何言ってるのよ!あんたは私のお母さんじゃ無いでしょうが!!」
「あいた!!」
ゲンコツで殴られた・・・
「全く・・・」
「それより見てみろよ、あの二人のおかげであの家族の大喧嘩も止まっちまったぜ?」
稲荷と鞍馬たちは攻撃を止め全く動かなくなっていた。
「そりゃそうだべ。神の性っつーのかね、おらも父ちゃんも、あの神の戦いを見せられちゃ動けねーっての」
「どうやら、この大喧嘩の前にあの戦いを見届けなければいけなくなったみたいだ。勝負はそれからだ」
ふーん、それが神って奴なのかね。まるで自分達の戦いすら、あいつらに任せてるみたいに聞こえるぜ。
「レイノルドはん、そうやないんよ。あの二人がここに来た時点で多分、あの二人は喧嘩をやめるつもりやったんや」
「どゆこと?」
玉藻ちゃんはまた落ち着いた様子で語る。
「なんやかんや既に分かりあってるって事や」
「・・・そゆこと、要するに俺たちは馬鹿ばっかって事か。なら、俺みたいな馬鹿はまだあいつらには譲れないな。戦わなくちゃ、俺はまだあいつと分かり合えてねぇ!!」
あいつらに全部任せる訳にはいかねぇ、動きが見えなくてもやれるはず。
「ちょっと、まだやる気?」
「あぁ、あいつは俺だ。つまりはあいつも家族みたいなもんなんだよ。けど俺はあいつの事をなんにも知らない。今やっと分かり始めただけなんだ。それに、いくらあいつが強くて俺が弱くても、最後は俺がやらなきゃならねぇだろ?」
俺は何とか一人で立った。身体はまだ動くな・・・なら戦える。
「全く・・・心配かけさせないでよね。レイノルド、私もやるわ」
「え?ウーネアちゃんは休んでなって!」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。あんたがお姉さまを嫁にもらうって言うからこうして戦ってやるって言ってんのよ。あんたとお姉さまは家族になる、ならおのお姉さまの血を引く私もあんたの家族よ。止めたって無駄だからね!」
なんつー強引な理屈だよ。でも、納得しちまった。
「はいよ、なら行くぜ!」
俺は奴の武器を構えた、その瞬間に武器の形状が変わった。刀身が伸びてそしてその穂先は赤く輝きだした。
「レイノルドあんたそれは」
「ようやく、ニヒルちゃんの所に立てたって事かな、じゃ
おっ始めるか!!」
「えぇ!」
俺たち二人は互いに間合いを取った瞬間を見計らい森羅とシンの横に並んだ。
「おい、俺たちも加勢するぜ」
「貴様か・・・構わないが、ついてこられるか?」
「意地でもついて行ってやる、だって俺あいつの攻撃に耐えてたんだぜ?」
「くくっ、死に損なったの間違いだろう。まぁいい、耐えられると言うのなら巻き込まれても耐えられるな?」
「どんなになっても追いついて見せる、巻き込まれたりしねーよ」
「なら、付いてくるがいい。付いてこられるのなら!!」
俺たちは四人一斉に攻撃を仕掛けた。
「うおりゃぁぁっ!!!」
「四対一か・・・愚策だ、その数で俺に挑むのは足の引っ張り合いにしかならないぜ?」
仮面の男はその攻撃に立ち塞がる。まるで、俺とお前とじゃ次元が違うと言いたげだ。
「引っ張らないわ!思いさえあれば・・・私たちはどこまでも強くなれる!!」
ウーネアちゃんも俺たちに続く。
「やれやれ・・・思い上がりも甚だしいな。人間はどうしてこうも愚かなんだか、少し反応出来る程度で追い付いた気になっている・・・」
反撃が来る・・・構えろ、奴を見据え・・・
あれ?身体に力が・・・どうなってる?視界がくるくる回って・・・
「レイノルドォォォッ!!」
ウーネアちゃんが叫んでいる。そしてあれ?あそこにあるのは俺の身体?
その時気が付いた。頭が吹っ飛んだんだ・・・何も反応出来ずに。もう一つ見えた景色は仮面の男が俺の持っていた武器を持ち横に薙いでいた。
「だから言っただろ?愚策だと、こいつはようやく俺の元に帰ってきた。この男程度に操れる代物じゃないんだよ。さて、お前たちも分かって来たか?俺の本当の力を・・・森羅、シン。今のも目で追えたか?ま、見えていたかどうかは次で決まる」
「っ!?」
「くっ!!」
森羅とシンが吹っ飛んだ・・・
「ほぉ、流石は神破聖拳と氷の魔王。上手く受け流したか・・・だが、次は耐えられないな」
『ガキィィィーンッ!!』
「てっきり腰を抜かしたと思ったが、思いの力と言う奴か。この俺を前にしてまだ立てる人間と言う点においては合格点だ」
「がはっ!!」
そして森羅とシンを庇うように攻撃を受け止めたウーネアちゃんは蹴り飛ばされた、見えなくなるくらい遠くまで。
「これが力。この力は神を破る力程度では・・・到底及ばない」
これが、武器を手にして完全な力を得たあいつ・・・あんなに強いなんて・・・
「さて、そろそろ終わりにしようぜ。もう見飽きた、貴様らの悪あがきはよ、恐怖する前に死んでくれ」
「クククッ、仮面の男。何を勘違いしている?確かにお前の力は想像を絶した。この俺が認めるのだから間違いないな。だがその程度で人間の足掻きが止まると思ったか?」
シンは立ち上がり笑った。
「何?」
「その通りだシン、ようやくお前も人間のしぶとさが分かって来たな」
「当たり前だ森羅。以前いやと言うほど味合わされたからな・・・ニヒルの悪あがきに、あの時の俺の敗因はニヒルの足掻きに負けた。そして強引に認めさせられた。奴の強すぎる意志に俺は負けた。仮面の男、この世界において何が力になると思う?この世界における力・・・この世界は」
「意志の強さが力だ!!」
「なっ!?」
俺は再び槍を取り戻した。そして渾身の一撃を背後から心臓を突き刺した。
「馬鹿なレイノルド!!お前は!!」
「死に方、どうやらこの世界じゃ俺たちはこの程度では死なないんだってな。心臓と脳をやらなきゃ、俺たちは死なないんだとよ」
「何故それを?それは永零しかまだ知らな・・・まさか!」
「そこは到達点ではないからな、予め未来を知り教えた、あの時レイノルドがわたくしの隣に並んだ時に、心臓と脳を守れとな。確かにわたくしたちとレイノルドたちが共に戦うにははどうしても破れない壁がある。しかし、超えられない訳ではない抜け道はあるものだ」
「だとしても、再生が早すぎるぞ・・・」
「言ったでしょ?思いさえあればってね・・・意地でもへばりついて見せるわよ」
「てめぇは!?」
ウーネアちゃんが這い上がって来た。あの時の鞍馬が瞬時に受け止めていたんだ、それでも少し飛んでいったけどね。
「行くぜ俺・・・人間たちの底力、舐めるな!!」
俺たちは一斉に攻撃を仕掛けた。そして急所全てを貫いた。
「これが・・・くっ!!」
仮面の男は力を振り絞って俺の首を掴んだ。これは・・・その身体では活動が出来なくなるからってまた精神を最初の転生者に戻す気だ。
「レイノルド!!」
「いや!これで良い!!勝負はこっからだぜ俺!!どっちがこの身体の所有者か!ここで決めようぜ!!」
奴の憎しみに満ちた意識が俺を蝕む。ずっと俺の中にこいつはいたんだ、だから分かってやれないこともない。
この憎しみの心と魂は、理解できないほど長い歴史だ。こりゃ確かに人間は滅ぼした方が良いって考えるわな。間違いだらけで何も変わらない、勝手に滅亡に向かう俺たちは消えた方がいい。
けど・・・こいつ、そうだったのか。何故お前が永零に協力する様になった理由、お前・・・
「レイノルド?」
俺は意識を取り戻した。目の前にはウーネアちゃんがいる。
「仮面の男はまた俺と一つになった・・・つまりは勝ったぜ、ウーネアちゃん」
「で、でもそれじゃまたあいつは」
「いや、あいつはもう俺が諦めない限り出てくるとは無いと思うぜ?元よりあいつは俺だ。つまり、考えてる事も俺だったんだよ」
「はい?」
「仮面の男がなんで永零に協力したのか、その理由があいつの精神に触れて分かった。あいつはもう一度だけ確かめたくなったんだ。神の言っていた人間にしか辿り着けない答えにもう一度だけ賭けたくなったんだ。だから永零の目指す誰も知らない天国に協力した、それを打ち破ってもらう為にな。つまり仮面の男も俺と同じくニヒルちゃんに惚れちまってたのさ」
こう言う事だ。仮面の男は俺、つまりは俺が惚れた奴はあいつも惚れるって事だ。嫌だったろうな。人間を毛嫌いした神様が、人間のあいつに惚れたんだ。ツンにも徹したくなるさ。
「・・・・・」
あ、ウーネアちゃん固まった。
「あやー、すんげぇなあんた。まさかあいつをマジで抑え込むだなんておら思っても見なかっただ。これがおらと父ちゃんの喧嘩の結果でもあるってか。おんもしれぇなこりゃ、ならおらももう一度信じてみっか。父ちゃんの信じる方をな。でも父ちゃんよ、それがダメだったって分かった時はいいべな?」
稲荷は俺の顔をまじまじと見る。そして鞍馬の元に向かった。
「あぁ」
「んじゃな、おらはまた出かけんべ。おらはやっぱ自由気ままが好きなもんでな」
「あっ」
稲荷は何処かに行ってしまった。玉藻ちゃんが止めようとしたがその前に消えた。
「ありゃま、またあの子行ってもうたわ。全く・・・」
「あいつはあいつなりの生き方がある。稲荷はああしてた方が性に合ってるんだろう。けど、飯綱はまだそうはいかない、あいつは今会いたがってる。だから迎えに行くぞ玉藻」
「・・・せやね!」
玉藻ちゃんは元気に笑った。




