1945年 9月 大日本帝国・アメリカ合衆国 創暦前 ???年
うんしょっと、今日は落ち着いて話せそうだ。あ、そうだ。今日はこれ食べよっか、この間故郷に帰った時に久しぶりに買ってみためはり寿司。おにぎりを高菜の浅漬けの葉で巻いたやつね。これを食べながら話そうか。
さてと、今日は豪華に三本立てで行こうかな。永零のその後と、終戦を迎えるニヒルちん。そして終戦後のディエゴのお話をしてあげる。
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創暦前 ???年 指宿 永零
「ここに石があるでしょ?これは何個ある?」
「いしが、いち、に・・・さんこ?」
「そう、正解。これが三。じゃあちょっと難しくしてみよう。ここに石が三個、ここには七個あるね。これを一つにしよう。さぁ、何個になった?」
「えっ・・・うーん・・・いち、に・・・じゅう!!」
「いいね、良く出来た。これが計算、そしてこうやって合わせて物を足していくから足し算って言うの。分かった?」
「うん!」
「じゃあ今日の勉強はここまでだね。昼からは遊んでおいで」
僕がこの世界に来てからどれくらいの年月が経っただろう、軽く十年は経った。しかし不思議な事に体が老けない。それどころか若返っている。下手をすれば十代前半と言っても過言ではない。
村には大分溶け込んだ、そして村人は言葉を理解し、子供たちはもう計算も出来るようになってきている、覚えが早い。
しかし、この村を手中に収めていると言う神にはまだ会えない。村長曰く、神と神は会わせてはいけない決まりがあるらしい。そこにより新たに知った、この世界にはまだほかに神と呼ばれる存在がいくつかいる。どれだけいるのかは知らないが、何人かはいるのは確かだ。
そして神同士は互いにいがみ合っている。だから屈強な戦士がそれぞれの村にいるんだ、いがみ合いが争いに発展した時、奴らは村人を使い戦争のような事をしているらしい・・・
この世界は面白い、調べれが調べる程数えきれない事実が出てくる。そして村人はみんな純粋だ。だからこそ、少し許せない・・・神を名乗る存在が。純粋な気持ちを弄んでいる事が。何としても会わなければ、そして調べなければ。その神の事を・・・
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そこから数日が経った。
「エイレイさん」
「村長さん、どうかされました?」
村長さんが僕に声をかけた。少し神妙な面持ちだ。
「かみはいった。おまえに、あいたい。みつぎもの、はこんだとき、むらびとのことば、しんかしてるの、しった」
そうか、貢ぎ物を献上した際に神とやらは言葉が進化しているのを知ったと言う事か、そしてその原因は僕だと。これは好機だ、絶対に逃してはいけないな・・・
「良いでしょう、わたしをその神の元へ案内をして下さい」
「わかった、ついてこい。あすにつく」
明日か・・・みんな意外と距離を歩いていたんだな、当たり前の様に行って元気に次の日には帰って来てたから割と近いと思っていた。
僕たちは出発した。流石は農作を主とした村なだけあって村長も足腰がしっかりしている。歩く速度もかなり早い。まぁ、僕だから付いて行けるけど所長だったら音を上げてただろうなぁ・・・
僕はそんな事を思い出しながら歩いた、思いのほか険しい道を行き、そして辿り着いた。海・・・そしてその奥の大岩で出来た島。
「このおく、われわれは、はいれない。ここにおくだけ、けど、ほかのかみなら いける
成程、この海を渡って島に行かなければいけないのね・・・水上歩行ならば簡単だ。風の力を足に集中させて飛び上がる。それだけで空中を駆け回れる。この力、便利なものだ・・・
「よっと・・・なんだ?不思議な感覚がする・・・妙な感じだ、とりあえず奥にすすんで・・・ん!?」
僕は一歩歩いただけだ。それなのに急に景色が変わった。どこだここは、祭壇?そしてその下にいるのは鎧を着た人間・・・
いや、鎧を纏った何かがいる。人間と呼ぶには平均よりも二回りほど大きい。そして尾に蝙蝠翼、さらには鎧の隙間から見える肌はまるで鱗だ。
「名を名乗れ、神を名乗るものよ・・・」
喋った?まさか・・・住民の会話だけで学んだと言うのか・・・ここは下手に煽らない方がいい。
「僕の名は指宿 永零です。皆は僕を神と呼びましたが僕はそんな気はありませんし、あなたと敵対するつもりもない。ただ、ここで研究をしたいのです。あなたがここを収めていると聞きました。どうかお願いです、僕にこの世界を研究させてください」
「研究・・・確かその言葉は、物事を考え、調べる事だったか?」
「はい、僕はあるきっかけにより別の世界から来た存在、科学力、技術力だけはあると自負しています。しかし、この世界には向こうの世界にはない何かがある。それを突きとめれば世界をより発展させ、更には、まぁこれは余計なおせっかいかもしれませんが、いがみ合っている他の神との争いも・・・終わらせられるかもしれません」
さぁ、食いついてくれ。あなたがこの話に乗ればもはや僕の勝ちだ。あなたにとって僕は絶対に必要だ。特に権力を持つ者はより強い権力に惹かれる。僕の力なら、そのいがみ合いを終わらせあなたを頂点に出来る。そこを利用させてもらう、ここが世界の頂点にばれば、世界のあちらこちらを調べられる。
そして、より効率的に研究が進められる。まずは彼に世界の頂点に立ってもらう。
「良いだろう。しかしだ、その研究とやらの成果。儂に必ず報告せよ、儂に利益をもたらせ。良いな?」
「えぇ、是非協力します」
それでその後は、もう一度元の世界に帰る方法を見つけ、そして・・・世界を変える程の意志を持った者を探す。僕と同じレベルの存在を、僕一人では限度がある。いるはずだ、僕と同じく平和を愛し、世界を憎むものが・・・
「っと、その前に一つお聞かせください。神、あなたの名を聞かせてください。世界を制覇する存在の名を」
「儂の名は『沙羅曼蛇』これからはそう呼ぶのだ、イブスキ エイレイ」
「感謝します、沙羅曼蛇様・・・」
これでいい。そしてこれからだ・・・世界を変えるのは、これからだ・・・
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1945年 9月 ニヒル アダムス
「戦争がおわったらしい」
将校さんがわたしたちにそう告げたのは山を下りた日だった。ここは出雲と呼ばれる場所らしい。戦争が終わった。それが事実である事を受け入れるのは意外と容易だった。そして負けたと気付くのも簡単だ。勝ったか負けたか、聞く必要は無い。
「じゃあ、これからどうする?」
隆二は将校さんにそう尋ねた。戦争が終わった、つまりこれからの旅はもう意味はなくなったと言う事だ。亜米利加はわたしたちをどうする気かは知らないけど、とりあえずは空から火の雨が降る事はもうない。
突然道を見失った、そんな気分だ。目的地が見えない・・・でも、あるはずだ。ただ遠ざかっただけだ。元からわたしの、わたしたちの目指した道は、戦争が終わって消えるようなものじゃない。逆だ、戦争が終わった。のなら、その後を考えろ。身を守り、生き抜く術を・・・
「隆二、わたしたちはずっと戦火から逃れる為に旅をしてきたです。そして多くの人に出会ってきた。最初はみんなわたしを見て蔑んだ。けど、話し合って分かり合えたです・・・わたしたちは繋がっている。助けて助けられた。今度はその時の恩を別の形で返し、返されるべきではないですか?」
「ニヒル、何が言いたいんだ?俺たちは別に見返りを求めて助けた訳じゃない」
将校さんが口を出した。
「いえ、そうじゃないです将校さん。わたしが言いたいのはこの先の未来の事です。わたしたちは更に多くの人を助けるです。今できる人助けとは、戦争で失った物を取り戻し、与える事」
「ニヒル、まさか商売を始めるとか言うんじゃないだろうね?」
まさかの善之助が答えを言った。
「そうです、商売です。わたしたちはもう一度旅をする。そして出会った人たちから使えなくなった物があればそれを貰う。けど、そのいらない物は別の誰かにとっては要る物かもしれないです。考えれば色んな方法があるはずです。欲しいものがない、けど別の場所にはある。わたしたちはそれを仲介する。これからの時代に必要な物をこの国に行き渡らせる。それが今までこの国を旅してきたわたしたちのするべき役割だと思いませんですか?」
そう、これこそ今わたしのすべき事。今この国はせき止まっている。この国には今、流れが要るんだ。
「いい考えではある。しかし、物流と言うのはそう簡単に手には入らない。もう既に動いている者も多い」
将校さんは少し頭が固い所があるな。やりもしないで決めつけようとしている。
「闇市とか言うやつですね。確かにそれも重要ですが、それはわたしたちの役割じゃないです。わたしたちが何の為に旅をして来たのか、今その真価が試される時。闇市があるのは中心街に近い所です。こんな田舎には無いです。そしてここは年寄りが多い。闇市に行くことも出来ない人もいるでしょうね。だったら闇市が来いってやつです、わたしたちは仕入れたモノを旅をしながら売って行くんです!」
「・・・何事も、やってみなくては分からない。永零の奴もそう言っていたな。お前は意外とあいつと気が合うのかもしれないな。やってみよう、俺も階級は高くないがそれでもある程度の地位はあり、繋がりはそれなりに全国にある。戦争が終わり無政府状態になった今こそ、行動すべきだ」
「そうです将校さん!やってみるだけやってみるです。皆もやるですよ!!」
「全く、これだからガキ大将は・・・」
「まぁいいじゃん隆二、ニヒルらしいし」
やってやる。わたしたちはこの程度じゃ負けない。いずれまた昇りつめてやる。今度は戦争じゃない別の勝負で勝ってやる。
「そうだ、いらないと言えばニヒル。こいつをお前にやる」
将校さんはまだ使っていない眼鏡ケースを取り出した。そして中にはこれまた使ってなさそうな眼鏡があった。
「わたし、目は悪くないですよ?」
「これは伊達メガネと言う奴だ。度は入ってない。俺が昔何となく眼鏡をしていた方が頭が良さそうと思って、高いのを買ったんだ。結局買ったはいいがその後普通に目を悪くしたもんでな。要らないからお前にやる」
わたしはその眼鏡を付けてみた。少し大きいかな・・・けどまぁ着け心地は悪くない。
「あれ?意外と似合ってんじゃんニヒル、ガキ大将から学生になったって感じだぜ。普段からこういう感じでお淑やかならよ・・・っていててて!!」
隆二が余計な事を言ったのでつねった。けど、似合っているか・・・貰っとこ・・・
「じゃあ行くですよ!!この国はわたしたちを待っている!」
その後、わたしたちの事業は徐々に勢力を伸ばし。そしてそれはやがて物流会社を立ち上げるに至った。そして主な拠点を中部に移し、本社は東京に。そこから多方面へと物流を行う。
社長には将校さんが就任した。わたしたちはその資金で中学に通う事が出来、そして卒業後再び会社に戻った。
その時には既にかなり規模の大きい会社になっていた。そしてわたしたちは分かれることになった。隆二は関西支部で取締役に就任。善之助は関東支部の支部長になった。
そしてわたしは中部支部の営業部長になった。ここからが、わたしの物語の始まりとなった。
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1945年 9月 ディエゴ
記事にはニッポンがポツダム宣言を承諾したと書いてあるのを見た。長かった戦争がようやく終わりを迎えるらしい。
でも、実感がない。俺にとって戦争はあってもなくても結局この生活が変わる事は無い。俺はまだ幼いからいいのかもしれない。盗みをやっても数日ブタ箱でボコボコにされるだけで出られた。
でも、中には死んだ奴もいる。殴られ過ぎて意識を失っても殴られて、それを看守は教育と言い張ってあいつは死んだ。
俺が何の為に盗みをするのか、理解する気もないくせに、あいつらは俺たちを悪だと決めつけ、何もしてなくても正義の鉄槌とやらを下す。
まぁ、悪なのは認めるよ。やってはいけないことをやってるんだから。けどそれは生きる為だ。生きたいから盗むんだ。働こうにも誰も俺みたいな奴は雇わない。穢れるらしいからな。俺たちが悪なら、お前たちは悪魔だ。
俺は生きる為に盗み、ボスに貢ぐ。そうしなければ生きられない。時には人も攫って売り飛ばす。そいつがどうなったかは知らない、けど、俺が生きる為には仕方がない。そいつ等は生きる意志が弱いせいで攫われるんだ。自業自得なんだ・・・
俺は自分にそう言い聞かせて、毎日この裏路地を生きている。今日も、ボスの仲間が誰かを襲撃し、そして攫ってきた。
「ボス!こいつを見て下さいよ」
ボスの仲間がそいつをボスの前に出した。ボロボロだが、元は上質な服だったんだろうな。目が死んだ女の子だ。俺より少し下か・・・
「何だそいつ?」
「こいつ、何でも元イギリスの貴族の血筋らしいですぜ?アンダーソンつってな、元はそれはそれは大富豪だったらしい。けど、情勢の不安だとかでお取り潰し、こいつの両親は娘を売り飛ばしてすたこらさっさ。そんで、元々買ってた奴がなんでか死んだらしくてな、またどこかに売られそうになってた所を拾ったんだ」
「ほぉ、よくやったじゃないか。こいつを売ればかなり儲けられそうだ。しばらくはこいつで儲けさせてもらうか。んで、使い物にならなくなったら臓器を売っていけばいい」
成程、あの女の子の人生は体を散々弄ばれ、内臓をあちこちに売り飛ばされるのか。可哀そうに。俺にはそう思ってあげる事しか出来ない。
何が戦勝国だ・・・これが戦争に勝った国なのか?新聞は好きだが、ここまではらわたが煮えくり返るのは初めてだ。
「そうだ、こいつまだガキだがまぁ使えるだろ。誰かに使われる前に・・・って、もう使われてんのか。だったら尚更大丈夫だな、まずは俺たちで食ってまおうぜ」
「それナイスアイデア。とりあえずこいつここまで何にも無抵抗で精神もボロボロっぽいし、大丈夫だろ・・・ん?何見てんだディエゴ!まさかお前もこいつとヤリたいのか!?いいぜ、特別に許可してやる!」
「俺はいい。俺にはまだ分からないんでな、女の子の身体いじくってて楽しいか?」
「ありゃま、お前もまだまだガキだな」
「悪かったな、俺はまだ10歳以下なもんで大人な遊びが分からなんだよ」
言ってる事に嘘はない。服を脱がせて、身体触って・・・なんだか気分が悪いからいつもしっかりと見てはいない。終わったら女性はいつもぐったりとしていてあいつらは楽しそうにしている。何が楽しいのやら・・・まぁ、大体女性をいたぶってスカッとしてるんだろうな。
「ほーん。んじゃお前はいつもみたいに新聞漁ってな。俺たちはこれから楽しませてもらうぜ。の、前にだ。念のため、暴れたりしないようにっと・・・まずは手足を縛らせてもらうか」
俺はその時ちらっと女の子をみた。手足の拘束具を見た瞬間に何とも言えない表情を面に出した。トラウマって言う奴か。何度も見た、嫌だと叫び散らかす奴だ。そんな奴がいるとうるさくて仕方ないんだ。
大丈夫かあいつら、さっきから上の空だったけどあのままじゃ暴れるぞ?
「いや・・・いやだ!!!いやだ!!いやだ!!いやぁあああ!!」
「な、何だこいつ!!いきなり!!!おい!抑えろ!!」
あーあ、やっぱり暴れ出した。船の中にもいた。突然気が狂いだして暴れ出す奴が。
「殺さないで!!殺さないで!!死にたくない!!」
死にたくないか。俺もだ、俺も死にたくないからこうしてここにいる。運が悪かった事を呪え、お前の両親とかをな。
「おいディエゴ!!手伝ってくれよぉ!!」
「えー・・・俺、新聞読んでるんですけど。と言うか、三人がかりならいらないでしょ?」
「それがこいつ!!思いのほか馬鹿力でよぉ!!多分!相当手錠にトラウマ持ってるみたいだぜ!!」
「ぃぃぃぃいいいやああああだああああああ!!!」
女の子を見たら目を血走らせながら叫び、暴れている。爪がはがれようがお構いなしだ。ここまで拒否反応するのは初めて見た。大体の奴はしばらくするとぐったりして動かなくなるのに・・・
「おい!麻酔打て!!」
「ひぃっ!!!それやだ!!!」
女の子は麻酔を無理やり蹴り飛ばした。
「殺さないで!!生きたい!!生きたい!!生きたい!!!」
「うごぉああ!?」
そして一人をぶっ飛ばした。でも、女の子は暴れ続ける。こうなったら最早怒り狂って女の子を殺すだろうな。
「てめぇ!!!」
「ふぅぅ!!!!」
「んがっ!!がっ!!!」
なっ!?俺は立ち上がった。女の子は、押さえつけられた体を強引に起こし、そしてさっきの麻酔の注射器を手に取り、一人の首元に突き刺した。
「お、おい!!」
「生きたい・・・わたしは、生きていたい・・・」
あいつのあの目・・・
「このやろ・・・ぶっ殺す!!」
「がっ!!」
女の子はバットで殴られて地面に倒れた。でも、まだ動いている・・・這いつくばって。
「死にたくない・・・わたしは・・・死にたくない・・・」
「このクソガキ、こいつはここで殺す!!なに調子乗ってんだこの負け犬の家畜が!!てめぇには、反撃する権利なんかねぇんだよ!!大人しくしやがれ!!この家畜以下のメスブタがよぉ!!」
もう一人は完全にブチ切れ、長い銀髪を鷲掴みにし腹部を滅茶苦茶殴っている。でも・・・あの女の子、まだ反撃を・・・分からない、なぜあそこまでして反抗するのか。
普通、ここまで痛めつけられれば、その痛みの恐怖でもう殴らないでと懇願するはずなのに。あいつはそれをしない。あいつにとって手足を縛られるのは死ぬことよりも恐ろしいと言う事なのか?
違う、恐れているんじゃない・・・あの目は、俺と同じ。何があろうとも生き抜きたいと言う意志が強すぎるんだ。だからあそこまでされても生きようとする意志で反抗する。
ちっ・・・これが戦勝国のすべき事なのか?敗者はどっちだ、生き抜きたい意志を見もせずに、無理やり押さえつけて・・・それでどれだけ奪ってきた?
俺も奪われた。この国に、こいつらに・・・俺は、奴隷なんかじゃない。本当は・・・自由に暮らしたい。生き抜いた先にある自由を手に入れたいんだ。今の俺は自由ではない。
結局俺はここで理不尽に屈していた・・・けど、こいつは違う。どんな目に合おうともこの理不尽に対抗している。
俺は・・・
こいつを・・・
救う!!
「死にやがっ・・・!!」
俺はほぼ無意識だった、無意識のうちに手に持っていたナイフをこの男に突き刺していた。
「ディ!!てめ、何してんだ!!」
「ボス・・・どうやら、俺は看守の言う通りどうしようもないクズだったみたいです。俺は自由になる、自由になっていつか・・・平和に暮らして見せる!!おい!お前!!生きたいんだろ?生きたいんなら、俺に付いてこい!!」
「え?」
「付いてこないなら勝手にしろ!!俺はお前を連れ出しはしない!!俺は俺が生きる為にここから逃げる!!」
俺は別に女の子の手を引きことも無くその場から逃げた。でも、その子はすぐに俺の後ろに付いてきた。かなり息を切らしている。でも、それでも俺に食らいついてきた。
俺は何度も引き離すように逃げた、けど、こいつはどこまでも付いてきた。ボストンまでだ、ここまで来ればあのギャングのテリトリーの外だ。俺はかなり体力に自信があるのに、こいつはここまで付いてきやがった。
「なんで付いてきた?」
「生きられる気がした・・・ごめんなさい」
「謝る理由が分からん。俺は一応付いてこいとは言った。お前は俺に生きる希望を見出したんだろ?それは俺もだ。お前に何が何でも生にしがみつく根性を見た。だから裏切れた。そしてお前は付いてきた・・・なら教えてやる、生き抜く術を。俺はディエゴだ。お前は?」
「リリア・・・アンダーソン」
「わかった、リリアだな・・・リリア、俺一人ではこれから生き抜く事は難しい。生きたいのなら俺に協力してくれ。まずはそこからだ、生き抜く術その1、決して1人にならない事。いいか?」
「うん、わかった」
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創暦 ???年
さて、これにて終戦。いや、ここからが本当の戦争の始まりなのよね。
ここまでが序章、そして物語が動き始めるのが十年後、1955年。日本が驚異的な速度で復興を続けているその中で、永零はこの世界に戻って来る。異世界を理解し、新たな力を求めてね。やがて素質ある者が揃っていく。
ここから歯車は回り始めていく、ここからは覚悟がいるよ。君はこの先を見る覚悟はある?
あるのなら、またおいで・・・