創歴元年 異世界建国編 朱雀その2
私は一気に間合いを詰め攻撃を放った。しかし朱雀は私の攻撃を素手で受け止めた刃が全く通っていない。
「灰になれ」
私は半ば強引に体を横に飛ばした、すると私のいたところが一瞬で灰になって消し飛んだ。
「な、なんだこの威力!?邪神の奴以来だ!」
レイノルドの言う事はごもっとも、シン以来だな。ただの魔法でこれだ・・・こいつが上級魔法を使ったらどうなる?
それより気になるのは、こいつのこの殺気の原因、そしてウーネアとクロノスは何処だ?ここまで大暴れしているのに、誰もまだ来る気配が無い。
「レイノルド!!感想言う前に構える!」
「は、はいっ!!」
ポカンとしてる暇はないぞ。朱雀は待ってくれる気はないらしい、もう次の手を出して来てる。朱雀は手元に炎を灯してスタスタと歩いて迫ってくる。
「それで終いか?」
「まだまだ小手調べです」
今度は第八の魔法で攻めるか。
「鞍馬!レイノルド!」
「ぁあ!!」
「うむ!!」
まずはレイノルドと鞍馬が仕掛ける、完全なる隙を作らせるんだ。
まずは鞍馬の炎と朱雀の炎をぶつけ合い相殺させる、これで片手は封じた。
「俺の新必殺技!!くらいな!!」
技名は特に叫ぶ様子もないからどんな技かは知らないが、とりあえず奴の得意とする電撃を槍に纏い攻撃を喰らわせるみたいだ。
「この力・・・てめぇ、仮面の男を?」
「奴は俺自身!なら奴の力は俺のもんだって事だ!」
そして両手を封じた。しかしレイノルド、ここまで強いじゃないか、そこに驚いたわ。
「隙ありですね!」
なんだ?この違和感・・・何でこいつはわざと両手を封じられた?私が来てるにも関わらず。
朱雀、何を企んで・・・
「後ろや!!」
っ!?私は反射的に姿勢を下げた。その瞬間、炎の光線のようなものが私の頭をかすめた。
「この俺の攻撃を破ったのはお前か、女」
「せや、けど焦ったわ。みんな突然明後日の方向に攻撃するんやもんなぁ。うちは幻術に耐性があるもんやからかかってへんかったんやけど、解除するんはえらい疲れたわ。朱雀はん強いなぁ」
玉藻さんか。そしてこれは朱雀の幻術だったのか、引っかかるところだった。
そう言えば朱雀はこの街そのものにも幻術を・・・待てよ?まだこれは幻術か?周囲から誰も来ない理由はもしかしたら・・・
「成る程、中々の術者だな。とは言っても所詮はその程度、この俺の足元にも及ばねぇな」
足元にも及ばないか。やはりシンとは似た者同士だなこの男。
「確かに、私たちは弱いです。けどそれがどうしたです?一人で勝てないなら二人でやれば良い、二人で駄目なら三人で。私たちはそうやって集まった、同じ目的の為にな。朱雀、私はお前を倒さなきゃ駄目みたいですね。どう言う訳か、お前は私が嫌いみたいですから」
考察しろ、こいつが一人の理由を。私たちを憎む理由を、戦いの中にヒントはあった筈だ。そしてそこに朱雀に勝つ方法がある筈なんだ。
こいつは恐らく・・・それしか考えられないか。
「好き嫌いはどうでも良い、この俺にとって重要なのはてめぇらの存在は目障りだって事だけだ。ニヒル アダムス、俺はてめぇを灰になるまで焼き尽くす」
ビリビリ来るこの感情は怒りだ。そしてこの怒りは私自身に向けられたものじゃない。むしろ私と同じか、この世界そのものへの怒りと言った方が良いな。
「そしてその次は永零をですか?」
「え?」
隣でレイノルドが目を丸くして私を見た。
「それがどうした?」
「やっぱりですか。朱雀、どうもすいませんね、永零のやりたい放題に付き合ってもらって。そこんとこは先に謝らせて貰うです」
「あ?」
朱雀は私の謝罪にイラッとした顔を覗かせた。ま、誠心誠意込めて謝ってはいないからな。
「朱雀、お前が私たちを嫌う理由はもうわかった。だから謝ったんですよ。朱雀、お前はそもそも異世界と言う存在そのものを嫌っているですね?そしてその世界から好き勝手やっている私たちは目の敵だ」
「何を急に言い出すかと思えば・・・けど確かに間違ってはいねぇな。なら消える覚悟は出来たって事でいいな?」
「いや、これからも好き勝手ちょっとやらせてもらいたいんですけどね。この世界の力は私の野望の為に絶対いる。朱雀、お前には悪いですけど」
「なら答えは得られたな、この世界から灰の一片まで焼き尽くす」
来る。私は真正面から受けて立った。奴の攻撃を打ち破る!
「消えろ」
「させない!」
私は刀を赤く輝かせ振り下ろした。奴の炎とぶつかりあう。重いな、流石の怒りだ・・・
「俺も!!」
隣からレイノルドが加勢した。
「おいレイノルド。お前は出なくていい、これは私と・・・」
「嫌だね、俺にだってプライドよプの字くらいはあるの。それに、一人で背負い込みすぎだぜ?俺だって役には立てるんだ。ニヒルちゃん、俺はお前を絶対に幸せにしたい。結婚してくれるならせめて俺に出来る事はお前に相応しい男になる事だ。それくらいの努力はさせてくれよ。永零に追いつけなくても、仮面の男に勝てなくても、ニヒルちゃんに負けるようなマンモーニな俺でも、誰か一人くらいの幸せを守れる男になりたいんだ。いや、ならなきゃいけないんだ!」
レイノルドの熱意に私の言葉は遮られた。そうか、何もかも私一人でやっても意味ないよな。こいつに諭される、何て屈辱だ。
「だから教えてくれよ、もう分かったんだろ?朱雀の攻略法がよ」
「攻略とは少し違うなレイノルド、私が理解出来たのはあいつの心、あいつの願いだけです」
「何をごちゃごちゃ言っている」
朱雀は炎の勢いを強めた、私たちは押し返す。
「朱雀!お前の願いはわかったです!」
そして私は朱雀に呼びかけた。
「願い?俺の願いはテメェらを消す事だ」
「その理由が分かったんですよ。朱雀、お前割と純粋な奴だって事がな」
「何だと?」
「朱雀、お前はゾロアスの力を知っているですね。そしてお前は今、あいつに近づきつつあるです。沙羅曼蛇をも超え、神の領域へと近づいている。お前はもう既にこの世界を統べるほどの力を持っているんだ。そしてお前はこの世界の支配者たる存在になり得たです。けど、私たちが突然現れた。この世界の事をろくに知らない私たちは、この世界には無かった力で別の形になって世界を形成していったです。
この世界は順番が飛ばされてしまったんだ。私たちのせいでな。永零が言葉や技術をもたらしたお陰で本来辿るべき道をすっ飛ばしてしまったんですよ」
「っつー事はあれか?朱雀は本当ならこの世界の神になれたのにそれになれなかったから俺たちを消したいって?そんな単純なの?」
「突き詰めればそうかもな、朱雀。当たらずとも遠からずと言ったところか?」
この男はプライドの塊だ。世界と言う庭に勝手に土足で上がり込んでる私たちはそのプライドが許せないんだろう。
「ふっ、正解と言えば満足か?満足したなら消え失せろ」
安定にポーカーフェイスかまされた。そしてまた威力を上げてきた。正直ここまでの力とはな。二人掛かりでも押されて来た。けど、どうやらこれが正解らしいな。
やれやれ、まったく嫌になるよ。朱雀にとってこの世界は誇りだった。本当なら彼がやがてシンを止めて世界に平和をもたらす筈の存在だったんだろうな。
けどその役割を私たちが横取りしてしまった。私たちの勝手な都合だけでな。しかも、私たちはその誇りである世界のあり方全てを変えてしまった。
朱雀にとって私たち異世界の存在は、この世界の誇りそのものを傷つける侵略者なんだ。
「満足とは言い切れないですね。けど、お前の心は理解できた。そして更に謝らせて貰うです。お前のプライドを私は更にズタズタにする事を許せ」
「・・・何を狙ってやがる。ニヒル アダムス」
「ここの結界をぶっ壊す、その算段を立ててただけだ」
「っ テメェ、まさか」
「今だ!!玉藻!鞍馬!レイノルド!」
私たちは全員で一気にここの空間丸ごと吹き飛ぶ威力の攻撃を四方に放った。
こいつとの戦いはこのままでは恐らく私たちが負ける。この空間は朱雀の幻術の支配下、まずはそこを打ち破らなきゃ駄目なんだ。
それはうまく行った。部屋は崩壊し外が見える。
さて、ここまではうまく行っても本番はこっからだ・・・
「い、今の大きな音何よ!?って、あ・・・」
「お早い到着ですね、ウーネア」
幻術が解かれたという事はこういう事だ。ウーネアはすぐそこにいた。気が付かれないように細工されていたんだ。
「こっちもお早い到着みたいだぜニヒルちゃん。よぉ、仮面の男が世話になってるらしいな、クロノスちゃん」
「あなたは逆にもう世話になるつもりはないみたいねレイノルド、とても良いです。これは合格点ですね・・・ん?」
そしてフードを被った女性。クロノスもここにいた。こいつの場合はまるで私がこのタイミングで現れるのを知っていた感じだな。
「やっと、お前にたどり着いたなクロノス・・・」
「この感じ・・・成る程、今の姿はそれですか」
そう言う事、ゾロアスが私たちに協力した目的が今分かった。こいつもクロノスを目指していたみたいだ。
「ど、どうなってるのよこれ。なんでお姉さまが、それにレイノルドあんた。ここで何やってんのよ?ってか、何この空間・・・」
ウーネアが何も分からずキョロキョロしてる。失礼だけど、やっと永零に一泡吹かせれた気がした。
「ニヒル アダムス。テメェ、近くにこいつらがいる事に気がついていたのか?」
「何となくですよ。青龍の時の事もあったからな。クロノスなら私に気がついていてもおかしくはないと最初から踏んでたです。そしてクロノスなら、私に対してまた試練とやらをやるに決まってると分かってたですよ」
最初からここに来た時妙な違和感を感じていたんだ。これはやっぱり気のせいじゃなかったみたいだ。クロノスは最初から私を見ていた。どうせ青龍の時からもあいつと同じ感じで見てたんじゃないのか?
「私の行動を読んでいたのは流石ねニヒル。大分命の女神らしくなってきたじゃない。まずは及第点を差し上げます」
クロノス、こいつはもう私の目的をわかってる感じだな。でもまだこいつを完全にこちら側にはなるつもりはないらしいな。
「クロノスも、一体全体どうなってるのよ!?説明してよ!!」
ウーネアは一人置いてけぼりだ。
「ここは俺が説明するか、ウーネアちゃん。簡単に言うとだな、俺たち結婚する事になったって事だ!ってんぎゃぎゃ!!」
「は?」
この馬鹿野郎、結婚する前に一回殺してやろうか?私はレイノルドの首を絞めた。
「悪いですねウーネア、私は普通に飯綱に会いに来ただけです。まぁ色々あってお前を出し抜く事に成功したって感じです」
「・・・あ、あ〜!そう言う事!お姉さま、流石すぎ、私なんにも準備出来てないわ。こんなに早く来るなんて思わなかったもの。って言うか朱雀、あなた一体何してるのよ。お姉さまが来たら呼んでって言ったでしょ?」
ウーネアは朱雀にごく普通に接している。あの殺気に気がついてないのか?
「ちっ・・・」
「ウーネア、とりあえず言っておくです。朱雀は永零を裏切った」
「はい?」
「朱雀、お前も周りくどい事やってないで本心を出したらどうです?舞台は揃えてやったですよ?」
「全く・・・テメェのそのお節介、後悔してもしらねぇぞ?」
「私は嘘が嫌いです。言いたいことがあるならはっきり言うです。さ、この舞台で続き、やるですか?」
「ふっ、ぶはは!!テメェは中々の馬鹿みてぇだな、面白い奴だ。その馬鹿みテェな行動力に応えて、この俺も全力でテメェをけしてやる!」
「行くぞ!レイノルドも加勢しろ!」
「あいよ」
私たちと朱雀は再び本気の衝突を再開した。
「ちょ!?朱雀!?あんた一体何やってんのよ!?あんたの役割は!!」
「ウーネアはん?まだ分からへんの?朱雀はん、本気でニヒルはんを殺しにきとるんやで?」
朱雀と私たちの攻撃の応酬の合間、玉藻がウーネアに語りかけた。
「本気で殺すって、どう言うこと?」
「朱雀はんはずっと我慢しとったんや、自身の力の本当の使い道を使う機会がうちらや、あんたらに奪われて、永零って言う圧倒的な力にひれ伏せられてしもうたんよ。せやからニヒルはんは今、戦うとるんや。全力を出して、朱雀はんの願いを叶えようとしとるんや」
「願い?」
「そうや、見とれば分かるやろ?それに、これがあんたらの見たかった命の女神とちゃうん?ニヒルはんは今、朱雀はんを救おうとしとるんや。彼の怒りを受け止め、そしてニヒルはんの意志をぶつける。
永零はんはその圧倒的な力で世界を掌握しとるんやろうけど、それだけじゃあの朱雀みたいに心の底まで支配下には出来へん、あいつやと受け止める事が出来へんのや、何もかも神の到達点となって、打ち破ってまうんよ。
さてと、ウーネアはん?うちらの目的は分かっとるんやろ?飯綱の所、案内して貰うで?」
「え、ニ対一なんてひどいわよ?それに、私の相手はそもそもお姉さま、あなたたちの相手をする理由はないわ」
「そないな事言わんといてぇな。理由なんか別にええやないの。それにむしろ、今のあんたは逆にニヒルはんを本気で殺しかなないんやからな?」
「はい?」
「さっきの冗談は冗談やないっちゅうことや。それに、いつまでも永零はんの掌の上っての、うち結構能天気で広い心持っとるつもりやけれど、そろそろ堪忍袋の緒が切れそうなんや。せやからうち、全力であんたを倒させて貰うで?」
玉藻はウーネアに敵意を向ける。
「無理矢理永零の到達点を変えるつもり?そんな事させないわよ」
「いや、案外これが組み合わせになるかもな。この役目は俺たちがやるべきだ。ウーネア、お前をニヒルと戦わせない。相手は俺たちだ」
鞍馬もウーネアの前に立ちはだかる。分かってくれたみたいだな、ウーネアは任せたぞ。ウーネアを止められるのは、私じゃない。第三者のお前たちだ。
さぁ、行くぞ!!




