1965年 4月 異世界再始動編 その3
1965年 4月 道山 隆二
何だ?一体何が起こったんだ?頭が痛い・・・
「おい、隆二!」
「ん、将校さん?」
将校さんの声だ、確かなんか凄い衝撃波が来たんだよな。あ、そうだ!なんか声が、アンダーエデンとか。
待てよ、それよりニヒルと善之介は!!
俺は飛び起きた。
「隆二!!よかった!無事ですか!」
「そりゃこっちのセリフだ!ニヒルこそ無事だな!善之介は!」
「俺も大丈夫だ。しかし、なんなんだこれ。テロリズムというやつなのか?」
とりあえず3人は無事か。良かった、いや、安心するにはまだ早いな。
「襲撃者は奴だな・・・」
将校さんの目線の先、分かりやすいな。俺たちのような服装じゃない。どう見ても場違いなフードで顔を隠した奴らが数人。たったこの数なのか?ここの警備の数って確か数百人体制だったよな。
「へっ、いきなりここまでやるのはすげえけどよ。あいつら終わりだな。取り囲まれてやがる」
言わんこっちゃない。奴らは囲まれた。これで安心だな。この件でガイアが別のとこから嫌われてるのは分かった。なら一層提携を慎重に考えなきゃな。
「駄目だ!みんな!すぐに引いて!!」
しかし、永零とかいう男は声を荒げて囲んだ警備員に呼びかけた。そして次の瞬間だった。
俺には何も分からなかった。順序がほぼ無いって言って良いのか?ともかくあの永零は俺の目の前から姿を消していた。それと同時に警備員は全員吹っ飛ばされていた。そしてその時に俺たちの前に二人の男女が俺たちを庇うように立っていた。
「う、ウーネア!?」
「やっほー、お姉さま!」
一人はニヒルの妹だ。そしてもう一人。
「お前!あのピザ屋さんの!」
「どうも、呼ばれて飛び出てじゃじゃーんっ!てな。隆二くんだったよな、危ないからちょっと下がってな」
前に飲み会やった時のイタリア料理店の店主だ。何が何だか・・・
そしてその後はフードを被っていた男はデカイ剣を持ち、そして永零の持つ日本刀とぶつかりあっていた。
「まさかこんな所で来るなんてね・・・」
「流石に驚いたか?お前でも、指宿 永零・・・なら、これで更に驚いてみろ!」
な、会場内に突風が吹き荒れた。視界が、前が見えない!
「っ!!まさか!この世界で魔法、天石の反応がないにも関わらず!もしかして、完全覚醒の方法を?」
「さぁな。残念ながら、俺でも完全覚醒はまだ見つけられていない」
って!そんなあいつらに気を取られてる暇はねぇ!一人こっちに向かって来る!
『ビリビリッ!!バチバチ!!』
「させねぇ!」
と思ったら、今度はあのイタリア料理店の男から放電が・・・それを前方に放った。
そしてこっちに向かって来る奴は炎を身に纏いその一撃を防いだ。そしてそいつの一撃をウーネアとあいつが二人がかりで止めた。
「ちょっとレイノルド!?魔法の許可はまだでしょ!?」
「うるせー!こうでもしなきゃ止めらねぇじゃんか!」
魔法?何を言ってるんだこいつら、俺は夢でも見てるのか?
「ふ、相変わらずじゃのぉお主らは・・・じゃが、今回は容赦せんでな!」
「ちっ!永零!」
「分かった!許可する!」
永零が何かの許可を出した、その次の瞬間。ウーネアの方は向かって来た奴を吹っ飛ばした。
「お姉さま、ちょっと待っててね。すぐに終わらせるから、大丈夫。何も問題ないわ」
「う、ウーネア!?」
「ニヒルちゃん、怖がらなくて良いって。俺を信じて、安心してくれ」
「レイノルドも・・・え、あれ?なんで私、あなたの名前を・・・」
顔からしてニヒルなんて言われてるあいつも流石にこの状況にはビビリまくってるな。仕方ねぇよ、俺も訳わかんないもんな。
ここは俺が何としても守ってやらねぇと。
その一方、永零と戦う男との戦いは更に苛烈さを増している。そんな中あいつらはなんか会話してるみたいだ。
「魔法はこの世界では僕以外は使えない、君のそれは僕と同じ完全覚醒以外に何がある?」
「確かに、俺自身は完全覚醒に到達した。それで彼らは元から魔法を有していた存在。これで意味は分かるか?」
「成程、あの襲撃者は四精霊か・・・けど、一人違うよね。彼は誰?」
「実験は成功と言うところだ。天石も持たず、そしてこの世界の存在でも無い。それでいながら魔法を使う。永零、俺はお前でもなし得なかった場所に俺は到達した。お前が俺を閉じ込めたあの狭間の世界。あそこは何かお前は知っているか?あそこは魂の通り道。ありとあらゆる記憶はあそこを通る。俺は百年、ずっとその記憶を見てきた。そして見つけてきたのさ。俺の答えと、お前に辿り着けない到達点をな」
「その顔、懐かしいけど・・・変わったね、何もかも」
「そうらしいな。世界と言うのはどうも浅黒い肌の俺は気に入らなかったらしい。おかげで今は俺が憎んでいた白人とほぼ同じになってしまった」
襲撃者の首謀者らしき男はフードを取った。銀髪と黒髪の混ざった、白人の男。
「・・・ディエゴ アンダーソン」
ニヒルが呟いた。
「ニヒル、知ってんのか?」
「どうして・・・何故私はあいつを知ってるんだ?」
ニヒルの様子がおかしい。ヤバいかもな。少し呼吸が荒くなっていってる。
「ニヒル、とりあえず落ち着け。今はとりあえずあいつらを信じてみるしか無いだろ。あいつらが何を考えてるかはわからんけど、守ってくれてるのは確かだ。終わったら聞けばいい」
「隆二・・・済まないです」
少しは落ち着いたか。全く、俺も過呼吸で倒れたいよ。けど、これ以上あいつらの好きにはさせられねぇな。
「将校さん。さっき刀貰ってたよな。俺に貸してくれねぇか?」
「何をする気だ隆二、焦る気持ちは分かるがやめておけ。今は下手に動くな」
ごもっともだが、居ても立っても居られない。
「行くぜ!」
「いや、やめた方が良いぞ。道山 隆二君」
視線が合った。何だこの感覚、動けない。全身ちびり上がりそうだ。
「しかし、記憶は呼び起こさなくてはならないからな。少し強引な手段だが、行かせてもらうよ」
「ディエゴ、君は何を」
「座標、指定完了」
「っ!!」
『ヅガガガガガガァァァンッ!!!』
んぐっ!マシンガンでも乱射してんのか!?途轍も無い炸裂音が会場に響き渡る。
けど、何かが蜂の巣になったわけではないみたいだ。代わりに、もっとヤベーのが来た。
「ガルルルル・・・」
「ディエゴ、害獣をこの世界に・・・なんて事を」
「なんて事をか、それはお互い様ではないか?指宿 永零。さて、選ばれし者の楽園の為、犠牲になってもらおうか」
あいつ!俺たちに向かってあの化け物を!!
「ちっ!!!」
その直後、ニヒルが突然立ち上がった。俺が静止をする暇もなく、ニヒルは俺たちの前にたち。そして、炎を目の前で炸裂させた。
「ぐぅあああっー!!」
「そう、それでなくては・・・」
ディエゴは笑っている。まるでこうするのを待っていたかのように。くそ、本当に訳が分からない!俺の知らない所でニヒルに何が起こったんだ。会社を分社化した時、俺はニヒルの側にいてやるべきだったのか?
「・・・許さないです・・・家族を、みんなを、お前は傷つけようとした。隆二、刀を貸すです。善之介!将校さん!少し下がるです!」
ニヒル・・・なんて強ぇ目をしてんだ?なんだか、すっげぇ安心する。何だこれ。
「ニヒル!よせ!」
将校さんは止めた。しかし、ニヒルは優しく俺たちに笑顔を向けてくれた。
「安心するです。私が、みんなを守るから・・・」
ここから先は何も言えなかった。逆らえない感情に俺は支配された。何故、何故だ。
俺はニヒルに、二度と戦争なんて世界を見せたくないと願った。俺はずっとお前に謝りたかったんだ。あの日、戦争が始まる前、お前は俺に会いに来た。そのせいでお前は船に乗り遅れた。俺はお前の人生を狂わせた張本人なんだ。
でも、俺不器用だからさ。その事をいつまでもお前に謝れなかったんだ。だから俺が出来るせめてもの償いは、戦争が終わったこの世界で、平和に暮らして欲しかった。社会の闇は俺が見張るから、お前は平和に暮らしてくれ。俺も将校さんも善之介も、そう願っていた。
でも、なんでこんな事になってるんだ?お前は俺以上にまだ闇を見ている、その目はそんな目だ。
「やめてくれ・・・」
またあの化け物が襲ってきた。ニヒル、立ち向かうな。それは俺たちの役目だ。お前はそんな世界で生きるなよ!
ピタ・・・
化け物の動きが止まった?
「メ・・・ガ・・ミ・・・」
喋った?
「え、今・・・まさか、この感覚は!」
何だ永零が突然冷や汗をかいている。そしてその直後だった。化け物はディエゴとか言うやつに向かっていった。
「やはりな・・・もう半分はお前にいるのか。特異点の転生者・・・ニヒル アダムス君!」
ディエゴは腰の後ろからでっかいリボルバー拳銃を取り出した。その大口径が火を吹くと化け物はその場に倒れた。
「どう言う事なのさ、こんなのはあり得ないよ。転生者が同時に存在してるなんて。しかも、まだ無自覚だけど彼女は彼を認識してる・・・」
永零の顔はかなり追い詰められた表情だ。さっきまで全て悟っているかのような表情の男がだ。それほどまでに今のこの状況は複雑で難解になっていると言う事だ。
安心したよ。これなら俺は何も分かってなくても問題ない訳だ。
『あり得なくはないわ永零、あなたはかつてその到達点で死の運命を回避した』
また今度は何だ?この女どっから現れた?
「クロノス・・・初めましてだな。時間の支配者」
『ディエゴ アンダーソン、あなたもまた特異点が産んだ奇跡ね。永零、知ってましたよね。あなたの神は半分しかないと。そしてその転生者のもう半分は同時に二つは絶対に存在しない。けど、貴方の場合は彼を認識して自覚した。そしてその到達点の力を使い本来死ぬ運命だった出来事を覆してしまった。だからもう一人の転生者と出会う運命を作ってしまった』
「そう言う事か・・・」
ん、また別の化け物が襲って来る。
「ニヒル!」
俺はニヒルの刀を強引に奪い、化け物を切った。
「ふふっ、今のは良い攻撃だったね。道山 隆二君。思いの詰まった良い一撃だよ。しかし、君にかかっている記憶支配を解く事が出来るのは俺には無理なようだな。今の君はここの彼らが君の全てなのだから。さて、俺に出来るのはここまでか」
ディエゴは笑い、剣と拳銃を収めた。
「何言ってるです?逃がさないですよ。お前は私たちの友を家族を襲った。確かに、私は何も知らないかも知れない。けど、ここにいるのは私の大切な家族だ。それを危険に晒したお前たちは私の敵だ」
「そうかもな。俺も、永零も、お前の味方では無いのかも知れない。だから俺は待とう。お前の到達する場所で」
その直後、ディエゴとその仲間たちは再び来た炸裂音と共に消えた。
「帰ったね・・・」
「永零!」
将校さんが大声で永零を呼んだ。
「所長さん。今日は本当に申し訳ありませんでした」
「お世辞にもならない謝罪はやめろ。お前、ここまでの事態は想定していなかったろうが、この襲撃までは予測できていたな?」
「・・・流石に、あなたを騙す事は出来ませんよね」
「やはりか、永零。お前は俺たちの家族を危険に晒した。合理主義なお前ならではらしいが、ニヒルを、隆二を、善之介を危険な目に合わせたお前とは、仲良くは出来ないだろうな」
「業務提携は無しか。あなたの人脈と、流通ルートは何としても確保したかったんだけど、仕方ないね。確かに今はそれが最善かもしれない。でも所長さん、あなたの今日見た景色と今日の判断、それの答えが出るのはそう遠くは無いよ。今日の出来事、記憶は消さないでおくね。メディア方面の根回しはやってある。きっと明日の新聞には、ホテルでガス爆発事故って見出しになってると思うよ」
「永零、お前は一体何処へ向かおうとしてる?」
「僕の最終目的はあなたと同じだよ。将校さん」
『ズガガガァンッ!!』
永零も同じように消えた、炸裂音を出して。ウーネアも、あのレイノルドと言う奴もいない。
残ったのは口をポカンとしていた、中国代表たちと俺たち、そして神和住。
にしても衛府郎のあの表情。あいつも何枚か今回の件を噛んでるな・・・
その後、パーティは中止。そして俺たちはまた元いた場所に帰る事になった。
俺は大阪に、ニヒルは名古屋、将校さんと善之介はここ東京に。
これで良いのか?俺たちは本当にこれで・・・駄目だろ。絶対に駄目だ・・・変えてやる。




