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1945年 8月9日 大日本帝国・アメリカ合衆国 創暦前 ???年

 創暦 ???年


 よいしょっと・・・お、ごめんねぇ。1945年って世界でも色々あったからさぁ、めっちゃ本の数が多いのよ。あ、先に座ってて、紅茶でもどお?アッサム、カモミール色々あるよ~。ついでにスコーンもさっきス〇バで買ってきたんだ。一緒に食べよ。


 さってと、今日話すのは1945年 8月9日の出来事と、創暦前、前に話した別の世界の(こよみ)を創暦って呼ぶの。創暦が制定されるはるか前の出来事だよ。


 ・


 ・


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 1945年 8月9日 指宿 永零


 僕は長崎に着いた。予想通り、天気は良くはない。小倉の当たりでは到底原爆投下なんかできないだろう。来るならここだ。そして位置はここだ。


 僕はこの数日であらゆることを調べつくした。アメリカ軍の事だけじゃない、世界の全てを調べた。そして別の世界の事も・・・そして見つけた。ワームホール、僕が触れた世界に行くにはそれを作り出さなければならない。


 時空間を歪め、ここではないどこかに転移する。その方法、僕があの日一瞬しか触れられなかったのは、ワームホールに必要なエネルギーが足りなかったからだ。でも今回は違う。この地系、気象条件、ファットマンの持つ威力、そしてそれで死ぬであろう人間の数。それら全てを理解した。そしてその生命の力と原爆の力。それらが集中的にぶつかる座標を見つけた。


 世界には目に見えない魂の流れ道が存在している。原爆で死ぬ瞬間、その道を一気に魂が駆け抜ける事になる、原爆のエネルギーと共にそこを掴む。普通の存在ではつかめない、でも僕ならそれが出来る。理由は簡単だ、僕が特別だからだ。


 そしてワームホールを掴み、僕は今度世界に辿り着く、分かっているんだ。僕ならばそれが出来る。そこへ到達できる・・・


 午前十一時二分。この瞬間だ、僕は・・・到達する!!


 その瞬間、再び空が光り輝いた。


 熱、体がまた溶けていく・・・でも、問題ない。僕はもうこの程度じゃ死なない。


 


 見つけた!!!座標はそこだ!!僕は一気にそこに飛び込んだ。


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 ・


 創暦前 ???年


 「んぐっ!!lっつ!!・・・ふぅ・・・」


 僕はゴロゴロと地面を転がった。痛いな・・・全身血だらけだ。でも・・・僕は地面に手を付いて立ち上がろうとした。


 「草・・・ここは、草原」


 僕は顔を見上げた、そこには草原が広がっていた。成功だ、僕は遂に見つけた。けどここからだ、ここからが始まりだ。怪我が治った・・・やはり、この世界には何かがあり僕はそれを突きとめなければいけないらしい。そうすればきっと・・・


 まずはもう少しこの世界を理解しなくては・・・少し歩こう。


 火?煙が立っている所があるな・・・人がいるのか?僕はまずそこに向かう事にした。


 ・


 ・


 この世界、文明は恐らく弥生時代ぐらいだ・・・僕は集落のようなものを発見した。藁のようなもので囲いを作ってテリトリーを作っている。入り口はどこだ?


 誰かいる・・・まずは隠れよう。そして様子を見るんだ・・・入り口を見つけた。そこから誰かが出てきた・・・衣服は獣の皮で作ったような衣装だ。そして石の槍、あの人たちは今から狩りに行くのだろうか・・・


 今だ、まずはここの集落に潜入する。入る事は僕からしたら造作もない事だ。こう見えて体もそれなりに鍛えているんだ。


 潜入には成功した。畑がある、子供も遊んでいるみたいだ・・・しかし、なにか違和感が・・・そうか分かった。ここの住人会話をしていない、身振り手振りで表している。文字も存在していないのか。


 さて、どうしたものか・・・この世界に文明がまだないのはある意味では救いだ。もし文明があれば文字や言語も学ばなくてはいけない。しかしこの世界に言語が無いのなら、日本語が普通に使えると言う事だ。零から全てを始められる。


 それに第一、僕はこの世界で何故僕が生き延びたかを探る為に来たんだ。どういう理屈で僕は怪我をしてもあっという間に治るのか、見つけなければいけない。


 「うわ!!」


 あ、しまった・・・悪い癖をやってしまった。考え込みすぎて周りを見るのを忘れていた。僕は住人に見つかった。


 どうする・・・この服装、軍服の上に白衣、文化的に有り得ない服装だ。住人は凄い警戒をしているな、証拠に門番のような人は僕に槍を今にも突き刺そうとしている。縄張り意識が強いみたいだ。縄張り意識、それはつまりそれを脅かす存在がいると言う事だ。敵対する何かがいると言う事だ・・・


 ここはまず、手を見せて降伏の意志を示す・・・は、ダメみたい!!僕は槍を避けた。


 「うー!!」


 「やれやれ、持って来ておいて良かったよ・・・この、軍刀をね!」


 僕は軍刀を引き抜いた。これは一応所長の物だ、二振りあって所長が東京に行く際に僕に渡したんだ。研究所の誇りだってさ。


 僕はこの軍刀で石槍を横から切り裂いた。牙を失ったらどうする?とりあえず降伏の意志を見せてくれ。そうしたら僕は何もしない・・・


 「うおー!!」


 一人の男が僕に向かって石を投げた。そして突進してくる。投げたのはただの住人だ、門番の方じゃない。男の後ろには子供・・・そう言う事か。その直後、一斉に他の住人も石を投げ始めた。これは、あの男の攻撃を真似ているんじゃない。男の攻撃が僕に当たるように援護している。


 ここの住人、かなり知恵はある!!そして僕も、あまり呑気に考えている余裕がなくなった。冷静になれ・・・この世界で出来る事、まだあるはずだ。怪我を治すだけじゃないだろ?もっとだ、もっと見つけろ・・・そこに到達しろ!!


 見つけた!!僕は一気に回転切りを放った。それと同時に刀身に炎を纏った、そうだ。この世界ではこれが出来る・・・


 炎を纏った回転切りで石を一気に叩き落し、男もこの炎にビビッて立ち止まった。これならいいだろう。僕は納刀し、再び手に炎を灯した。魔法・・・この世界ではこんなおとぎ話のようなものが出来るみたいだ。主に出せるのは手からか、足からも出せそうだ。そして今のは魔法を刀に伝達した・・・刀の鋼か?鋼が魔法を伝達したのか。それ以外にも、もっと精度を上げれば遠距離でも魔法が使えそうだな。


 「かみ」

 

 「ん?」


 住人が何かを言った。『かみ』と言ったのか?


 「かみ!!」


 別の者も言い始めたそして住人は僕を崇めるように座り込んだ。『神』と言いたいのか?この言葉だけは存在している、そう言う事なのか?


 考えよう、住人は僕の魔法で僕を崇めた。つまり僕のように出来る奴がまだほかにもいると言う事。そしてそれは神と名乗っているのだろう。僕はその神に会わなければいけないみたいだね・・・


 けど、それも重要だが今すぐここの住人がその神の元に連れて行ってくれる感じではないみたいだ。住人は僕を崇めた。この機を逃す訳にはいかない、僕の本当の目的はこの世界をもっと深く知る事。僕一人では限界がある。


 言葉を教え、文字を教え、そして計算程度を教える事が出来れば、ここの住人は大きく飛躍する。ここの住人は僕程とは言わないけど、頭は結構いい。すぐに覚えて助手に出来るかもしれない・・・


 まずはそこから行こう、僕のやるべきことはここの集落に。言葉と文字を与える!!


 ・

 

 ・


 ・


 1945年  ディエゴ


 アメリカ ノースカロライナ州


 この国は正義だ。世界はそう評している、この世界大戦はもうすぐ終わりを迎える。そしてこの国は勝利し賞賛を得るだろう。だとしたら、どうして俺はここにいる?正義の国に俺はいるんだ?


 俺の名はディエゴ。苗字?そんなものは俺にはない、この国はまだひっそりと奴隷制を続けている。表向きは移民の受け入れなんて言ってるけど、そんなのは真っ赤な嘘だ。


 俺の家族は中東のとある戦場から逃げるようにこの国に向かっていた。貨物船を見つけ、両親は乗れるように頼んだんだ。それは思いの外上手く行った。なんでもこの船は難民を受け入れる為の箱舟らしい。しかし、船の環境は劣悪で、食料もろくに無い。長すぎる船旅で両親は死んだ。そして死んだ奴らはみんな海に捨てられた。


 そうだ、この船は難民受け入れを謳った奴隷船だった。そして俺は正に奴隷になっていた。陸地に着くや否や、優しそうな顔をしていた船員は汚物を見るような目で俺を見下し、無茶苦茶な命令を始めた。とても十代に満たない俺にやらせる仕事ではない。


 そして転んだりすると容赦なく蹴りが飛んでくる。そして火の付いたタバコを顔面に押し付けられた。そしてその船員は「ポイ捨ては良くないな、ここに丁度いいゴミ箱がある。食べろ」と無理やりタバコを食べさせられた。


 それが俺の日常だった。逃げる事なんか考えられなかった。それが当たり前だと思っていたからだ。


 そんな中、俺は新聞を拾った。そして写真を見た。そしてこの国も戦争をしている事を何となく知った。そこで俺は新聞を拾ってきて徐々に集めていった。そしてその写真から文字を覚え、言葉を覚えた。


 そして俺は理不尽という言葉を知り、脱走した。脱走は思いの外上手く行った。あいつらは俺は脱走しないものだと決めつけていたからだ。まぁ、半年近く大人しくしていればそう思うだろう。


 そして


 1945年 8月9日 


 アメリカ ニューヨーク州 マンハッタン


 俺は適当に歩いていたらここへと辿り着いていた。身分は分かっていた。俺は肌が褐色だ、ここで大手を振って歩こうものならどういう目に合うのか容易に想像がつく。


 俺は裏路地でひっそりと暮らす事にした。廃棄された食品はタバコを食べるよりもかなり良い。むしろご馳走だ。飢えを凌ぐならば十分だ。


 けど、こういうところは縄張り意識と言うものが強い奴が多い。つまりはここを根城にしているギャングにこびへつらわなければならない。


 ただ、ここは俺のいた場所より居心地が良い。他のギャング連中もほとんどが移民だ。俺のような人種もいた。黄色い奴も、より黒い奴も色々だ。


 俺はこの日、ギャングになった。とは言ってもペーペーだが。


 新聞集めはまだ続けていた、珍しく今日の新聞二部とおとといの新聞を俺は拾った。そこで気になる記事を見つけた。原子爆弾について書かれた記事だ。まずこれは8月7日のだ、ニッポンに向けての原爆投下が書かれている。大統領は興奮気味に話していたらしい、TNT2万トンの爆弾を落としたと。想像がもうつかない。だがこれにより一気に終戦が早まったと言う事らしい。

 

 でも、今日の記事はそれについて何か書かれている。その爆弾、原子爆弾についてだ。まずはこっちだ。原子の爆弾の影響は、そのヒロシマと言う地に70年影響が残るだろうと。しかし一方の記事にはその影響はほんの一時的だと書かれていた。


 嘘ばっかりだ。文字を読む役には立つが結局ここに書かれているのは真実じゃない。それこそこの記事に書かれている通り、原子が目に見えないのと同じ感じだ、目には見えないが恐らくこうなっている、それと同じだ。俺たちは仮説を常に見せられている。それを真実のようにな・・・


 結局、俺たち人間は都合の良い方に流れるだけだ。都合がいいからこの大量殺戮兵器を賞賛する記事を書いても文句は言われない。


 俺も同じだ、お互いに都合がいいから俺はここにいる。そしてボスは俺を利用する。己の都合の為だけに。


 これでいいんだ、嘘でもなんでも。高望みしなければ俺は平穏に暮らせる。例え利用されてようとも、俺はただ生き抜きたい。


 どんな状況になろうと・・・俺は生きる。親のようにみじめに飢え死にしたくないんだ・・・


 ・


 ・


 ・


 創暦 ???年


 さ、今日は永零と新キャラディエゴの二本立てでした!!


 永零は別の世界に飛んじゃったね。にしても永零は相変わらず少しナルシストと言うか、自意識過剰と言うか。あいついい子ぶってるけど結構自画自賛をけっこうするのよね。


 その性格あってか軍上層部からは少し嫌われてたみたいだけど、実際の所は実績もかなりあったから、発言力は意外とあるのよね・・・


 ディエゴっちに関してはまた今度もう少し詳しく話そうね。


 次は日本が終戦の直前、日本軍は最後の手段としてある男の元を尋ねるの。そいつは言ってしまえば日本が持ってる黒船のようなもの。でもその男は・・・おっと、続きはまた今度ね。

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