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第三の到達点 別れの時 創歴前 百年

 ディエゴ アンダーソン


 「はぁ!はぁ!どこだ!リリア!!」


 俺は走っていた、思い出した。何故こうなっているんだ、リリア。どうして俺はお前を・・・いや、全員が忘れてしまったんだ。


 まるで、世界には元からあいつがいなかったみたいに、リリアという存在が消え去っていた。


 「リリアァァァッ!!」


 叫ぶように呼んでも、返事は無い。


 「ディエゴさん!!一体何が!?」


 そこは永零が走ってきた、後を追うように他のみんなもだ。


 「永零、お前は覚えているか?俺には妹がいた。リリア アンダーソン、その名字を俺にくれたのはあんただ、永零」


 「え、な、何を言っているの?君の名前は元からディエゴ アンダーソンじゃ・・・」


 「違う!俺に名前なんかなかった!でも俺はあいつと共に生きて来た!一緒に生きて、そして!俺はこの名前をようやく誇りに思えるようになった!思い出せ!アンダーソンは!あいつの名前だ!」


 俺は永零の肩に手を置いた、これが記憶だ。俺たちの見ている今の世界は違う。これが真実の世界!


 「っつ!!? こ、これは・・・何なんだ?まさか、セカンダビリティ・・・くっ!!」


 永零は頭を押さえて苦しい表情を出した。まだだ、まだ見せることがある!


 「仮面の男、これは沙羅曼蛇の記憶だ!奴の目的はお前の抹殺!そして仮面の男の正体は、もう分かってるんだな・・・永零!」


 「・・・僕の記憶を見たんだね、そうか。理解出来た。リリアさん、彼女は・・・死んだ」


 永零の口から聞いてはいけない言葉を聞いてしまった。


 「何を言ってるんだ、永零!」


 「僕の力は、結末の支配。リリアさんの死、それは過程に過ぎなかった。結末に行く為に、リリアさんは死んだ。


 分かったんだ。リリアさんは僕らの、いや、僕が行き着く未来を変えた。そして託した。セカンダビリティを・・・みんなに渡して、彼女の思い描く本当の結末を僕らに、託した」


 「・・・何を言ってんだよ、俺は約束した。そしてお前を信じ、託した。けど、何故だ!!何故!お前は救えると!!」


 俺は永零に掴みかかった。


 「ちょっと!何してるですか!?」


 「ニヒル、お前も覚えていないんだよな。リリアの事を・・・」


 「リリア?」


 「いや、いい・・・覚えて無いのなら、仕方ねえ。けど永零、お前は覚えて無くちゃ行けなかった。あいつを死から救えるのはお前だけだった。けどお前は救えなかった、結末を支配しても、リリアが死んだのはあいつがその死を受け入れた。違うか?」


 「そう、彼女は死を受け入れていた。もっと早く手を打つべきだった・・・あの子が、こんな真似をする前に・・・くそ!」


 永零の顔にあるのは怒り。それに尽きている。


 「永零、リリアはどうしてこんな事をしたんだ?お前なら分かるだろ。何故あいつは俺に力を渡した?」


 「・・・きっと、仮面の男への対策。彼女は僕らに託した・・・夢の中、奴から奪った力で、奴を打ち砕けと・・・」


 そうだろうな、それしか分からねぇよ。だからリリア、何故お前は死を受け入れたんだ?


 お前は、生きたかった筈だろ。俺はお前に、平和の世界ってのを見せたかったのに・・・


 「済まねぇ・・・リリア」


 今の俺があいつに言えるのは、謝る事だけしか無い。でも、謝っても仕方ない。俺が教えた事だ、生き抜く術、その3 謝る行為は無意味だってな。


 謝っても謝っても、俺たちを追い詰める存在は、許すも何も無い。奪いに来るだけだ。


 「ディエゴ・・・」


 永零が小声で僕を呼んだ。


 「なんだ?」


 「僕は昔、誓ったんだよ・・・家族に、もう、誰も苦しむ必要のなくなる世界を創るって。僕が、助けるって・・・犠牲になんてさせないよ。リリアも、他のみんなも、絶対に死なせなんかしない。ディエゴ、僕は約束を果たすよ。リリアは僕が生き返らせる!」


 永零の放った言葉に俺は動揺しなかった。奴ならそれができる、それをやれる力がある。それは分かっていた。


 けど、俺がこの言葉を永零から聞いた時、心の奥底で、否定すべきと考えてしまった。


 「出来るのか?死者の蘇生なんか、本当に神の領域だ」


 「仮面の男は神の領域の存在。それを打ち破る方法は、世界の概念とも呼べるルール、それを壊す事。死者蘇生はその一つ。僕は最初からそこを求めてた。無くした家族を、もう一度・・・そして、永遠に。極限の生命体に僕ら人間が到達すれば、僕らの勝ちだ」


 違う・・・それは、最もやってはいけない事だ、俺は直感でそう感じた。


 死なない身体になる、死者も生き返る。その世界は最早天国だ。そしてこの力、神々の世界へと世界は変わって行く。そんなもの、誰もが欲しいに決まってる。


 けど、本当にそれで良いのか。リリアはそれの為に俺にこの力をくれたわけじゃない。


 人間として、死のある生き物としてリリアは俺に、奴を止めろと言ってるんじゃ無いのか?


 「駄目だ、永零。それだけはやってはいけねぇ」


 「どうして?君はリリアさんを・・・」


 「あぁ、生き返って欲しいさ。俺の望む本当の平和を見せてぇよ。でもな、今あんたが考えてることは、俺の望む平和じゃない。死者蘇生は、言葉じゃ上手く言えねぇが・・・最もやってはいけない事だって感じんだよ。


 リリアは死を受け入れた。純粋な寿命として、生命として最期を全う出来た、俺は今そう考えてる。その為の俺の新たな力だ。リリアが死に物狂いで俺たちに渡そうとしたもの、俺はその意志を継ぐ、そしてそれで闘う。それが人間ってものだろ。


 昔、あいつに聞かれて答えられなかった質問がある。どうして死ぬのが怖いのか?ってな。俺もあの時はわからなかった。でも、今ならわかる。人間が死を恐れるのはその先が分からねぇからだ。そこが怖いから、俺たちは意志を誰かに託すんだ、生きた意味を、誰かにな。その相手は息子か娘か、愛した者か、果ては血の繋がらない兄妹か。


 リリアはそこを見つけたと俺は思ってる。意志を託せる場所をな。だからあいつは死を受け入れた、先の見えない恐怖の先を見る覚悟を決めたんだ。永零、それでもお前は、リリアの意志を踏みにじる気か?」


 らしくない真似だ、俺はこんなに喋るやつではない。


 けど、今は言わずにはいられなかった。永零のやろうとしていることは、リリアを更に殺す。そんな感じがしてならなかった。


 「ディエゴ、君の言葉はよく分かった。確かにこれまでの世界なら、君の言うことの方が正しいかも知れない。でも、僕の目指した真の平和は、天国を超えた世界。これまでの世界のルールは通用しない世界。僕はそれを作りたいんだ。生きる事の意味が違ってくる。


 意志を次に伝える必要はもう要らない、そんなルールは僕が壊す。いるのは必要だった人たち、もう良いんだよ。戦争も、生き残る為の蹴落としあいも。うんざりなんだ。次に伝える必要はもう無い。


 ディエゴ、君が僕に触れた瞬間、リリアさんの一端に触れた。未来を見る力、彼女にはそれがあって僕はそれを見た。僕ら人間の行き着く未来は、破滅しかない。必要なのは今、僕ら人間のこれ以上の歩みは滅亡に向かうだけなんだよ。だから僕は変える、人間のルールも、世界のルールも。あの神の作ったルールを変えて、真の平和を創る。それが僕の今の意志だ」


 蛇足説明の好きな永零も、ここは引けないとばかりに、柄にもなく感情的になって語った。


 今、ようやく納得した。どうやら俺は間違っていたらしい。自分の言葉のことじゃない。


 着く側をだ、永零は自身の神を嫌っている。だからこそあいつはその力を利用し、世界のルールを変えようとしている。


 つまり、あいつ自身の目的は仮面の男と同じ。神を殺すことだ。そして神の力を手にした人間の支配する天国を創ろうとしている。それが、永零の野望。


 させない、させてたまるか。俺はこの世界で幸福を知り、その中で死ぬ。それがそれが俺にとっての平和だった。


 奪い合うじゃない。互いにわかり合う世界の中で、俺はリリアと共に死にたかった。


 永零の目指す世界は、わかり合う事は出来ない世界。


 俺は、不老不死を認めない。


 「その目、どうやら君は僕の意志を認めてはくれないんだ。君が僕を裏切る結末、それは絶対に回避出来ないのかな」


 「当たり前だ、ここはまだ結末じゃない。これも過程なんだよ。けどな、お前の未来は絶対にさせない。俺はお前と一緒には行けない。それだけだ」


 「分かったよ・・・やっぱり世界って複雑だね。僕も君も平和を望んでいるのに、その在り方の違いから、こんな風になった。やっぱり僕は変えてみせるよ。こうやって争いを巻き起こすこの世界のルールそのものをね」


 「そうか、ならニヒルじゃねぇが、互いの意志を懸けて勝負と行こう。永零。俺は絶対に、不老不死は認めない、不老不死ではない世界で平和を作り上げる。それが俺の意志だ」


 「どちらの意志が強いのか・・・だね。いいよ、受けて立つ、僕の平和への意志を証明するよ。誰も傷つかない、傷つけない世界で、平和を創り上げて見せるよ」


 俺と永零の確執は、ここから始まった。求めるのは同じ平和。しかし、真逆の形の平和。俺が正しいのか、永零が正しいのか。これが、長きに渡る戦いの幕開けとなった。


 


 

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