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第二の到達点 変わりし時 創歴前 百年

 創歴 ???年 


 ぽんっと、これがニヒルちんたちの経験したこの世界での最初の事件。


 この時は誰もが何も分かってなかったの、本当に何もかもが分かっていなかった。


 そして既にあの男が動いていたなんてね、蛇の仮面の男。え?あいつの本当の名前?


 うーん、それはまた今度の方が良いよ?なんせあいつだからねぇ。気になるのは仕方ないけど、それは追って話すって。


 さてと!食後のラーメンがてら、あの後の話をちょっとしよっか。そして始まる創歴前百年最大の事件。そのプロローグの話をね。


 ・


 ・


 ・ 


 創歴前 百年 九月 ニヒル 


 沙羅曼蛇が突然消えた。痕跡は一切と言って良いほど何も無い。


 私たちはシンが犯人と言う説も考えたが、いなくなったあの日、あの日は雨と雷、氷の気配は全く無い。そして、ニンフの説も浮かび私たちは後日、直接ニンフを探し出した。が、ニンフは何も知らなかった。むしろ、どうやって消えたのか逆に質問された。


 奴らでは無い、そもそもシンとは分からんがこの世界で奴に匹敵する、超える力を持っているのは私たちの知る限りいない。


 そして、一番永零がこの状況を呑み込めなかった。


 「何故、仮面の男・・・蛇、僕は奴を知らないはず。そんな存在はいないはずなのに、どうして僕はそいつを・・・」


 「永零、何を一人でぼやいてるですか?何か分かってるのなら教えるです」


 私は考え込んでいる永零の肩を叩いた。


 「ニヒルさん・・・そうだね、邪神が僕たち教えた蛇の仮面の男の話は覚えてる?」


 「覚えてるですよ」


 「僕はどう言う訳かその仮面を知ってるんだ。見たことも無いのに、その話を聞いた次の日からぼんやりとじゃなくてはっきりと覚えてる形で夢に出てきた。はっきりとしすぎて、こうやってスケッチ出来る程にね」


 永零はスケッチブックを私に見せた、口元だけ見える仮面を付けフードを被った青年。夢で見たにしてはなんか現実味があるようなないような。


 「これが、シンの言った裏切り者という事ですか?しかし、こんな体型の男はここにいないですよ?」


 「うん、そこは大した問題じゃないんだ。問題はこの仮面の男をリリアさんも知っていた事にある」


 「っ!?」


 「彼女も夢で見たんだ、そして夢で彼はリリアに語りかけたらしい。『もう一つの力、セカンダビリティを使いこなせ』って」


 永零から初めて聞く単語を聞いた。


 「せ、せか?」


 「セカンダビリティ、あなたにも話しておく必要があるね。魔法とは違うもう一つの力について。


 ここに来た時、僕の力と君達の力、ほとんど同じだけど違うのは話したよね」


 あぁ、永零だけは向こうの世界でも魔法が使えるとかの。


 「はいです、魔法のメカニズムの違いという奴ですね」


 「そう、僕の魔法は自分自身で零祖細胞を作るのに対し、君たちのは世界にある零祖細胞を使うところ。でも、違いはまだあるんだ。それが僕のもう一つの力、これは確定じゃなくて仮定だったから今まで話してなかったんだけど、これは事実だ。心して聞いてほしい、僕には僕では無い誰かが精神の中に居る。そしてそいつは恐らく神を名乗る者らしい。


 僕はその神の力の片鱗を使っているんだ。その力と言うのが到達する力。ニヒルさんも不思議に思ってたでしょ?この世界の技術の進歩の速さが異常な事を」


 到達する力、そう言う事なのか?


 「まさか、それは永零が仕込んでいたと言うですか?」


 「そう、では僕がなんでこれほどの速さでこの世界の実験が上手くいくのかも」


 「永零は、予め実験が成功する到達点を決めたから?」


 「そう、これが僕の中の力なんだ。実験は何度も失敗をしてその中からようやく成功を収めるもの。しかし、僕はそれをすっ飛ばした。決めたら運命の力と言うのかな、それが強制的に成功の道を示すんだ。


 信じ難い事だけど、僕にはそれがある」


 確かに信じ難いが、けど永零の行動を見ると未来をあたかも分かっているような行動をしたり、決めた事には必ず到達した。


 何故か妙に納得がいく。


 「ではその力、せかんだびりてぃ?でしたか?それが永零と私たちの違いの差と言いたいですか?それで、リリアさんも永零と同じと」


 「いや、リリアさんは前に調べて変わってない事が分かってる。僕とはやはり違うんだ。だからその力に関して僕と君達は関係無いと考えてる」


 相変わらず前置き長いなこの人。


 「で、何が言いたいです?」


 「あ、ごめん。つまり僕が言いたいのはリリアさんの夢と、仮面の男にあるんだ。簡単に僕の考察を纏めるよ。


 仮面の男は僕と同じようにセカンダビリティを持ってる、その力はどんな力かは分からないけど僕の能力を阻害するほどと言うのは分かった。そして次に、根拠は無いけど、このセカンダビリティと言う能力は譲渡、若しくは分散が可能という事。


 僕が考えるに、仮面の男はなんらかの形でリリアさんに夢を支配する力を与えたって思うんだ。夢を通して彼は彼女に言葉を教えた。そして代わりに彼はそこから僕らを見ているのかもしれない」


 「だとしたら、何故リリアですか?」


 「まだ分からない、僕の考えも間違ってるかもしれないからね。でも、兎に角言えるのは仮面の男は僕のたちに近くにいて、いつでも僕たちを終わらせることが出来る。そう言っているのは確かだと思う」


 そこは確かにそうだな、つまり私たちは今リリアを人質に取られていると受け取った方が良い。


 「だとしたら、まず第一護衛対象はリリアです」


 「うん、でもくれぐれもバレないようにね。僕はまだみんなを信じたい。下手に教えて疑心暗鬼な状態は最も避けたいから」


 「そうですね・・・とりあえずは私たちの間のことにしておきますですね。にしても、セカンダビリティとはなんなんですか?なんというか、概念そのものを自在に操ってしまう力」


 「これは僕が思うにセカンダビリティは、支配の力、そう考えてる。僕の力は言うなれば目的までの道のりを強制出来る力、道順支配とでも言おうかな?そして、リリアさんが君も知るように夢の支配、夢想支配。きっと世界の概念を支配下に置く、因果律の操作等と言った力なんじゃ無いかと僕は思う」


 めちゃくちゃだ、しかしそうでもなければ説明はつかないか。ん?そう言えばさっき永零は・・・


 「永零、一つ疑問があるです。さっき永零は、このセカンダビリティ、の能力は譲渡出来ると言った。では、永零のその到達する力を他のみんなに分ける事も出来るのでは?」


 「そうだね、仮面の男に対抗するにはそれが一番だと思う。能力の譲渡の出来る世界、それを到達点としようか」


 そうやって力を使うのか。しかし、いくら全てが上手く行くのが分かっているとは言っても、順序は必ず辿らなきゃ行けない、それは絶対か。


 「まず、どうするです?」


 「力を使うと言っても、これは僕が考え、根拠を導き出し、実行しなければ行けない。そう簡単にパパッとは行かないんだ。しかも、仮面の男のせいで到達するのを阻まれる可能性もあるしね」


 大変だな。しかし、何故本当にリリアなんだ?ここに来て、戦争しても、まだ分からない事の方が圧倒的だ。


 「沙羅曼蛇の消失、リリアの能力、仮面の男。セカンダビリティ」


 私も考えよう、分からないなりにだけど。


 「あ、そう言えばさっき、リリアは夢で仮面の男がセカンダビリティを使いこなせと言ってたですよね?」


 「うん。そうだけど・・・ん、待てよ、そうか、それは夢でリリアさんに言った訳じゃ無い。僕に向けてのメッセージだとしたら、使いこなせ、僕はまだ完全にこの力を目覚めさせてはいない?そしてもし、この状況になるのを奴が分かっているのなら・・・僕が話した対象全てに言える事。つまり、あなたにも言っているのかもしれない」


 え・・・え?


 「どういう事です?」


 「失礼かもしれないですけど、ニヒルさんは人の心を読むのが上手いです、それって昔からでしたか?」


 「いや、ここに来てから努力と言うか、戦いの中で相手を理解しようとしてただけです」


 「もしかしたら、あなたのそれは人の心の支配のセカンダビリティなのかもしれない。つまり、あなたも持ってるんです、セカンダビリティを」


 「い、いやいや。流石にこじつけじゃ・・・」


 と、否定したけれども今思えば、なんであそこまで人の心の奥底が簡単に分かったんだ?ここでの経験のおかげだと思っていたけれど、まさかな。


 

 「いんや、その可能性はあっかもよ?」


 訛り?


 「想像すればだ・・・ニヒルさんは初めてでしたね、彼がユルグ。またの名は稲荷、彼も僕と同じ神の一人でお狐様と呼ばれる人だよ」


 ユルグ?と言う事は、こいつが。でも何故今現れた?


 「神としての地位は天と地だけんどもな、それに今はユルグって言うたべ、穢れのおらにはそんな名前はいらねぇっぺよ」


 「永零、ずいぶんと親しくみたいですけど、これはどう言う状況です?」


 「これも、君には言っておかなきゃね。最初は確かに僕は彼と敵対関係にあった。彼にとって僕は邪魔だったからね。神の復活、それが意味するのは、かつての、今はほとんどいなくなってしまった神の一族の再編を意味するんだ。要するに、神々の入れ替えみたいなものらしい。けど、僕はそんな気は一切ないからね。僕は僕だ、神ではない。人間として神の力を使わせてもらうってだけだ」


 「おん、最初は焦ったべ。神はおっかね〜もんでな、家族みんなで堕天的なことすりゃ、どうせ神の力もねぇし、無駄に寿命の長い狐としては生きれると思ってたのよ」


 堕天って・・・こいつ家族に何しようとしたんだ?


 「かつて神が作ったシステム、彼からはそれらの事を色々教えてもらったんだ。それも含めて僕らは世界を変えなきゃ行けないってね。因みに彼の妹が君によく懐いてる飯綱だよ」

 

 あ、そうだったのか。喋る狐の時点で不思議に思っていたが、お狐様なら納得・・・って、むしろなんでそっちで納得できるんだ、なんか一気に話が飛んでて喋る狐自体が遠い過去に思えるよ。


 ま、異世界って時点で常識は捨てた方が良いか。神でも悪魔でなんでも来い。


 「ほぇ〜、妹がいつも世話になってるみてぇっぺな。あいつ相変わらず大食いだべか?」


 「まぁ、よく食べるですね」


 「はっは!そりゃいがった!!ニヒルさんよ、悪りぃけど、これからも妹の世話頼むべ」


 妹と思いの兄だな。


 「分かったです、飯綱は私がちゃんと世話しておくですよ」


 「あんがとな」 (でなければ、あいつを墜としても意味が無くなるからな)


 なんかボソッと言ったか?


 「それより、本題入って良いかな?ユルグ、君は仮面の男に会ってるんだよね」


 「あぁ、けどおらもあいつの正体まではわかんねぇべ。けんど、目的はわかった。あいつぁ、あんたの抹殺を目的にしてるみてぇだべ?」


 どうりで、真っ先に探せば良いものをずっとユルグを永零が探さなかった訳だ、そう言う事、ユルグは工作員だ。今のやりとりでやっとわかった。しかも、シンと仮面の男、両方のか。こいつも大変だな。


 「だよね、これまでの様子から僕の邪魔をしようとしてるのは明白。問題は、彼の正体と能力だ、情報が無いと対策出来ないからね」


 「とりあえず奴は最上級魔法を軽々扱うべ、んで、これは奴から聞き出したけんど、セカンダビリティについてだ。やっぱり予測通りリリアちゃんの力は奴の一部らしいべ」


 「という事は、つまり能力の譲渡は可能」


 「譲渡ってぇより、分散だべな。元々創造主の力、つまり全ての支配の力ってのがあってな、それをいくつにも分けて分散したのよ。昔の神話に色んな神様いて、それぞれ違う力持ってたんは、おらもわかんねぇけどコレなんじゃねぇべか?おらは神としてもまだ若ぇから、父ちゃん時とかの世界創造の時代はしらねぇのさ」


 あー、しれっと神話とかやめてくれ、もう仕方ない。飲み込んでまとめて行こう。


 「つまり、永零の神の力と仮面の男の力はですよ?それは創造主の力でそれぞれが持ってる。それからその力は分散させて、私たち人間、いや覚醒者に渡せると、そういう事ですか?」


 「んだ。いや〜呑み込みはんやいなぁニヒルさん」


 合ってて良かったわ、とりあえずついて来れているんだな私は。


 「成る程ね、ユルグ。ここから彼の正体は推測出来る?流石に僕でも神話について行くのはまだ結構厳しいんだ」


 「皆目見当もつかねぇべな。とりあえず解ってんのは、奴は恐らく神の力を有する誰かだ。んで奴はお前の命を狙ってる、奴の力は想像を絶している、それから奴は同じ存在だとおらの事は認めている。その四つだべ、まぁ神の事が嫌いな誰かだろうけんど、割とあいつ嫌われてんのやなぁ・・・誰だろ。んじゃ、おらは引き続きあいつのスパイやっとくべ」


 「気を付けてね、彼はこの僕ですら想像が付かないんだ」


 「わかってんよ」


 そう言い残すのユルグは姿を消した。


 「で、どうするです?」


 「先決すべきはリリアさんだね、そしてセカンダビリティの修行。それと同時並行でその力を分散させる研究をしよう」


 「確かに、それも重要かもです。しかし沙羅曼蛇がいない今、この国で永零の不在はかなり危ないと思うですよ」


 「あー、そうだね。とりあえずシルフさんやウンディーネさんに要相談か」


 もし、これからの戦い。セカンダビリティが重要になるとしたら、私はそれを極めなければならないだろう。概念の支配、そんなもの恐ろしすぎる力だ。悪用すれば世界の支配なんて簡単なんだから。力の欲望に簡単に呑み込まれてしまうかもしれない。


 それに譲渡が可能なら、奪う事も出来るかもしれないしな。既に仮面の男は動いている、この世界の防衛と、私たちの修行。それの両立にはまず四精霊の協力は必須だな。


 

 

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