創暦前 百年 八月 白針の洞窟
創暦 ???年
さて、今日話すのは、針地獄へと踏み入ったディエゴたち一行!そこには文字通り尖った白い大きな針のような岩で覆いつくされた神秘的な洞窟があった!その岩は固すぎで壊す事が出来ない!!そんな中洞窟の入り口から再び脅威が!!
あれ?どしたのよ?あ、先に話しすぎちゃった?え、違う?いつもの?あ~、ふっふっふ・・・心配しなさんな。ちゃ~んと用意してあるよ。君もようやく板に付いてきたねぇ。
さぁ食べよう今回はこちらだぁ!じゃん!!ほらどうぞー、針地獄って事で地獄のように赤く尖った、痺れマックス!な、麻婆豆腐だ!手塩にかけて作ったんだよ!
あ、先に話せと、分かりましたよ。まぁゆっくり食べながらどうぞ。
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創暦前 ???年
「おぉ・・・すっごいわねぇ。なんか神秘的・・・」
俺が踏み入った洞窟の中は、長く尖った真っ白な針のような岩がそこら中から伸びている洞窟だった。そしてこの岩の白さが洞窟内をほんのり明るく照らしている、恐らく入り口や僅かな隙間の太陽光がこの岩が反射しているんだろう。
「針地獄とはよく言ったものだね。まぁ確かに尖ってて危険かもしれないけど、それ以上に何とも言えない美しさがあるね。この洞窟」
エイレイが足を踏み入れ岩を触ってみている。俺も中へと入っていった。
『コンコン・・・』
俺は軽く指で弾いてみた。固いな・・・それだけだ。石とか岩は詳しくはない。
「う~ん・・・困ったなぁ」
エイレイがキョロキョロしている。
「何かあったのか?」
「固いのは分かったんだけど、それでどんなものの強度か確かめたいからどこかに欠片でも落ちてないかなと思って見てるんだけど・・・この岩、自然風化もしないらしいね」
本当だ、欠片一つ落ちてない。そして叩いても傷一つ付かない。噂通りマジで固いのかこれ。
「って、リリア?何してんだ?」
リリアはじーっと岩を眺めている。
「いえ、ただ綺麗だなって見ていただけですよ?」
「そうね、この岩宝石みたいに綺麗だものね。リリアちゃんもこういうの興味あるんだ。あ、そうだ今度アクセサリー作ってあげよっか。私じゃなくてこの世界の知り合いなんだけど、アクセサリーショップ開いたのよ。リリアちゃんも女の子だし、ネックレスとかおしゃれしなきゃね」
「いいんですか?」
「いいのよ、女の子はやっぱおしゃれしなくちゃ駄目。お姉さまももう少し気を使って欲しいものよ・・・」
あぁ、一応リリアは女性か。普段は何も言わないがこういうのにも興味があったんだな・・・たまには服も買わなくちゃな。いい加減にボロボロだ。今度連れて行くか、俺には女性服のセンスが分からねぇし。
「うーん、流石に噂通り、固すぎてびくともしないね。どっか根元から引っこ抜ければ・・・流石にまずいかなぁ」
「どうしてだ?」
「いや、ここは一応ウンディーネのものらしくてさ、十年に一回程彼女はここに瞑想しに来るんだって」
「そうなのか。だったら不味くないか?勝手に調査するのはよ。精霊が瞑想しに来るって事は何かしら重要な場所なのかもしれないじゃないか」
「一応彼女には許可は取ってるよ。森羅君が水の国に行ってるのもその兼ね合いもあってだ。それに、彼女曰くだけど、ここで瞑想する理由は何となくなんだって。だから彼女自身にもあまりここの存在の理由は分かってないみたい。ただあまり荒らすなって言われただけなんだ」
適当だな。
『ズボッ!』
「ずぼっ?」
俺とエイレイがそんな会話をしていたら何か変な音が聞こえた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・へ?」
ウーネアがアホみたいな顔で岩を引っこ抜いていた。俺とエイレイは言葉を失って固まっていた。
「いや、へ?じゃねぇよ。話聞いてなかったのか?ここは一応ウンディーネの場所なんだろ?ってかどうやって抜いた?」
「いやぁなんかここだけ色が変だな~って思って、触ってみたら微妙に動いた気がしたから思いっきり引っ張ったのよ。そしたらズボッ!!て」
元気に言うなこのゴリラ。ってかそこ俺も気になってさっき見てたとこだ。どんなパワーで抜いたんだ。
「あ~・・・ウンディーネに今度謝っておこう。多分大丈夫だよ、少し怒られるかもしれないけど、まぁ何とかなる!これを持ち帰るよ!!」
「はーい、ほいこれ」
ウーネアがエイレイに岩を渡した。お前も案外適当なとこあるなエイレイ。と言うか、こいつは研究第一主義と言う感じか。怒られるよりかは研究素材を手にすることの方に天秤が傾いている。
「・・・前から思ってたが、変人ばっかだなここ」
このゴリラをはじめ、ゴリラの姉は言葉づかいが変だし、エイレイは言動が心の中見られるみたいで気持ち悪いときがあるし、あのレイノルドはうるさいし、イズナとか言うのも狐なのに喋るし、比較的まともな性格なシンラも訳の分からない拳を使うし。
そんな奴ばっかりだ。志と実力は認めるが、もうちょっと普段の性格なんとかならんのかな。
「さてと、そろそろ切り上げて帰ろうか・・・と、思ったけど」
ん?あぁ・・・入り口か・・・
「さっきの報復って所かしらね。さっきのあれで仲間を呼んでたのね」
入口をさっきの害獣どもが陣取っている。俺たちは袋のネズミにされたわけだ。
「そうみたいだね。ここは僕がやろうか、魔法で一気に片づける」
お手並み拝見といこう、魔法自体俺もまだ上手く使いこなせる訳じゃない。そしてエイレイの魔法もそこまで見た事は無い。本気のこいつはどんなもんなのだろうか。
「お願いしまーす」
「グルルルルルゥ・・・・」
入り口から唸り声が聞こえる。獰猛などうやって仕留めてやろうとでも言っているかのようだ。
「ごめんね、君たちに恨みはないけど・・・自然界は弱肉強食だから、君たちは殺させてもらうよ」
「グゥアアアアアア!!」
一斉に攻め入る気だ。数はさっきよりも多い、本当に出来るのか?
「喰らえ・・・って、あれ!?」
ん?なんだ?あの岩に炎が・・・なんか、ヤバい気がする。
「伏せろ!!」
俺はリリアとウーネアを地面に伏せさせた。
『バッゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!』
洞窟が・・・大爆発を起こした。
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「何だったんだ・・・今の」
周りを見る、何か焦げた跡はあるが、凄いな・・・洞窟は何も崩れていない。
「ケホ・・・」
エイレイが実験に失敗した科学者みたいになってる。正直、間抜けだ。
「ひぇぇ・・・永零やりすぎよ。巻き込まれる所だったじゃないのよ。リリアちゃんも大丈夫?」
「えぇ。ディエゴさんがかばってくれたおかげで、わたくしも怪我はなんとか」
ウーネアがリリアを起こし、体に付いた汚れをはらってる。
「で、エイレイ。今のはなんだ?お前が魔法のコントロールをミスったってのか?」
「いや、今までコントロールを間違えるなんてことはしたことなかった。この岩、恐らくこれが原因だ。この岩には魔法を爆発的に威力を高める効果があるんだよきっと。魔法の効果を高める方法は、鋼に魔法を与えるとその魔法の効果が1.1から最大1.5倍にまで増幅されることは分かっていたんだけど、これはもはや累乗のような勢いで跳ねあがる。これは凄い大発見だ!これでまた一歩研究が進むぞ!」
解説したかと思ったら嬉しそうに岩を抱きかかえた。やっぱ変な奴だ・・・
「永零、研究が進むのは良いけど、この岩の名前はどうするのよ?岩だけじゃパッとしないじゃない?」
まぁ、それはごもっとも。針地獄の岩なんて呼びづらい。
「うーん・・・このどんな刃をも通さぬ最早完全物質、ってとこでオリハルコンってのはどうかな?」
うん、誇張表現かもしれないが、良い呼び方じゃないか?
「え~、なんかグッと来ないわねぇ。金剛石のように美しく硬い水晶みたいな石って事で金剛水晶石ってのは!?」
何で純粋なフランス人のお前が和名なネーミングセンスなんだ。ちぐはぐだな・・・
「金剛水晶石か・・・呼びにくくない?」
「カッコイイじゃない!そっちの方が!じゃあこうしよう、お姉さまに相談するってのはどう?オリハルコンか金剛水晶石か!」
何故あいつなんだ?いや・・・こいつの事だ、この石の自慢と名前の事を建前に会いに行きたいだけだ。
「まぁ、いいか。名前は彼女に任せる事にしよ。ニヒルさんならセンスもいいだろうし」
「そうね!!じゃあ行きましょう!!お姉さまの元へ!!そんで・・・ウヘ、ウヘヘ・・・ウェッヘッヘ」
顔がキモイ上に声もキモイぞ・・・
「じ、じゃあ帰ろうか・・・」
エイレイも顔が引きつってる。俺たちはこの岩を持ってサラマンダの国へと帰った。
「ディエゴさん」
帰る道中リリアが俺に話しかけた。何か考えている風だ。
「どうした?」
「おねえさまとは・・・なんですか?」
「・・・は?」
「いえ、ウーネアさんがいつもニヒルさんの事をおねえさまとばかり呼んでいるので。どういう意味なのかと」
そう言えばリリアの奴、ウーネアが喋る度に考えたような顔をしていたな。最初はただ単に引いてるだけかと思っていたが・・・
「言ってなかったか?あの二人は姉妹だ。ニヒルが姉、あいつが妹だ」
「それは存じてますけど、何故肩書きで呼ぶのでしょうか?あの方は姉ではなくニヒルさんですよね?」
「そりゃぁ、家族同士で姉妹だったらそう呼ぶんじゃないか?お前だって母の事を母さんって呼んでたろ?」
「いえ、わたくしは母の名前を知らないですからそう呼んでいただけですよ?」
俺はあまりリリアの過去に干渉はしなかったからな。ともかく今を生きる。そう教えて生きてきた。今思えば、どうして家族って肩書きどうしで呼ぶんだ?
「・・・そこは俺にも分からん。俺にも家族はいない、ただ言えるとすればその呼び方の間には俺たちには分からない血の繋がりから来る絆みたいのがあるんだろうな」
「そうですか、ではわたくしたちではそういう風にはなれないって事ですね」
「だな、俺とお前は家族じゃねぇからな」
そんな会話を続けながら俺たちは帰った。
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そして・・・
「おっねぇさっま~!!」
「何です?」
「実はうんたらかんたら・・・」
帰るなり真っ先にニヒルの元に向かった。それでどうでもいい話も含めてウーネアは大暴走だ。ニヒルは一応聞いてはいるが途中ため息を吐いている。
で、俺とリリアはまだ何言ってるのか全然分からない為ただ後ろで様子を眺めている。
「で、どう思う?」
「どっちでもいいですよ。まぁ強いて言うなれば最上級の物質であるのなら、天上とでも付ければどうです?天上金剛水晶石、これならば略して天石と呼びやすいですよ?」
「あ~・・・」
「あ、いいかも。さっすがお姉さま!!ネーミングセンスも光るぅ!!」
何となくわかったのは、ニヒルの案が一番と言う感じだな。オリハルコンだと誇張表現過ぎるしな。
「じゃ、私は行くです。飯綱がお腹すいたとさっきから騒いでるですから、後・・・レイノルドの馬鹿も戻って来るなりしつこいですから逃げるです」
「あ、お姉さま!?いずこへ!?」
ニヒルはすたこらさっさと消えた。何となくウーネアの変な気配も察したんだろうな。ウーネアはニヒルの後を追いかけて消えた。
「うん、天石か・・・いい名前だね。呼びやすくその名にも相応しい」
で、こっちは名前を納得し眺めている。
「で、それをどうするんだ?」
「これはちょっとやそっとじゃ壊れないからね、とりあえず思いつく全ての実験をやるよ。そして加工方法を探る、何か方法はあるだろうからね。あ、その件で少し手伝って欲しいんだけどいいかな?」
「俺はこの世界に強くなるために来たんだ。特にやることも無いのならやるよ、リリアもやるか?」
「はい。わたくしはいつもどこでも、ディエゴさんについていきます」
「ありがと、じゃあついて来て」
俺たちは天石の加工実験につき合わされた。ただ、これは思いの外どきつかった。
数か月間つき合わされ、エイレイ自身も悲鳴を上げていたくらいだ。
しかし、その成果は得られた、天石の加工方法だ。ただ、今はまだそれを作る時ではないと言う事だがな。とは言っても、持ち帰ったあの天石は一つの剣に加工した。
その剣の名前は・・・
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創暦 ???年
『流血光刃』これが天石による武器製造の試作品第一号。天石の持つ効果と加工方法はまた別の日に話すとしようか。今は天石の武器が作られたのはこの時と言う事だけを覚えておいて。
さて、次は歴史の特異点について話そう。特異点は何かって?そうだねぇ、言うなれば・・・本来起こるはずじゃなかった出来事かな?永零の能力をも退ける力、それはこの世界にはあったのよ。




