創暦前 百年 八月 沙羅曼蛇の国
創暦 ???年
ぼーりぼーり、さっくさく・・・ふぁっ!!もう来てたの!?今日はいつになく早いねぇ・・・え?そんな変わんない?あ、時計止まってる。
あー、散らかっててごめんよ~。今片づけるからさ。ん?何食べてたのかって?あの尖ったコーンスナックだよぉ。今日はずっとゴロゴロしてたもんだからね。特に何も買ってきてないよ。
あ、そうそう。今日話すお話も尖った物が出てくるんだ。んしょっとぉ!!押し入れに押し込み片づけ完了!!んじゃ、続き話していこうか!
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創暦前 百年 八月 ディエゴ
「オハヨウゴザイマス・・・?」
「何をしてるのですか?ディエゴさん」
「この国の・・・いや、世界の言葉を学んでいるんだよ」
俺は今も毎日のように、発行される新聞を読んでは言葉を学び、書いてある出来事を読んでいる。しかし、それにしたってこの世界の言語。難しすぎるだろ・・・ひらがな、カタカナ、漢字に加え、発音の多さ、そしてイントネーションの差。更には和製英語なんてものもある。よくこんな訳の分からない言語を当たり前のように使うな。
「大変そうですね」
「暇つぶしには丁度いい。さてと、今日はこれくらいにしておくか」
「いつものですか?」
「あぁ、いつものだ」
今の俺に出来る事、それはただひたすらに力を付ける事だ。ニヒルは言葉で世界を変えると言っていたらしいが、世の中それだけでは変わらない。この世界の奴らがあの王に従っているのも、エイレイを認めているのも力を持っているからだ。
最後に物を言うのは、結局は物理的な力だ。
俺は兵舎に向かい、いつものように練習用の大剣を担いだ。
「おぅ、今日も生が出てんな!」
「・・・ドウモ・・・」
「お!お前やっと話してくれた!てっきり口が聞けない奴ばかりだと思ってたぜ!!」
「コトバ・・・ワカラナイ・・・」
一気に言われても翻訳が追いつかない。何だって?
「あ~・・・そう言う事。頑張れよ!!」
兵士はそれだけ言った。頑張れか・・・何を頑張ればいいんだろうな俺は。
俺は森へと向かった。数か月前に同盟を組んだと言う水の国近くの森だ。ここの木は無限に成長を続ける為、定期的に伐採をしなければならないと言う事だ。
木は資材になり、薪の原料にもなる。俺はともかく木をぶっ倒せばいい。日本の言葉で言うところの一石二鳥だ。
「はぁぁぁぁああああ!!」
『ズズン・・・』
この世界に来て俺の体は人間の限界は超えた。幹回りが数メートルにも及ぶ大木も今の俺ならば一撃で一刀両断出来る。しかし・・・まだまだだ。
「また一段と大きな木を切れるようになりましたね」
リリアが遠くに座って俺の修行を眺めている。ついて来なくても良いといつも言っているが、リリアは何があってもついて来る。雨の日だろうが雷が鳴ってようがな。
「あぁ、だがエイレイには遠く及びそうもない。ましてやサラマンダにもな」
「そうですかね、わたくしはもうエイレイさんにも匹敵するくらい強くなったと思いますよ?」
「前に手合わせした時の事か?確かに、あのエイレイにならば勝てるようになったかもな。だが、奴は実力の数パーセントしか出してはいない。剣を交えた奴にしか分からないだろうがな。奴はこの世界と一体化する事であの力を引き出している。俺はまだ、この世界の理解が出来てはいない」
力を手に入れるには、この世界を理解するのが最も有効だ。エイレイはそれが出来ている。一度以前に奴と手合わせをした。魔法を組み合わせ、異常すぎる程の見切り速度で常に俺の先を読む。それに対して俺は奴の動きを何も読めず、目で追う事も出来なかった。奴に追いつくには、もっとこの世界を熟知し、力を手にしなければならない。
「いや、僕だってまだこの世界を完全に理解出来た訳じゃないよ?」
突然声が聞こえた。
「エイレイ・・・」
「やぁ。確かにこの世界で強くなるには、この世界を理解する事はとっても重要だ。でも、決してそれだけで強くなれる訳じゃない。第一僕自身の実力はそこまで強くはない、まだまだだ。でも・・・」
『ズバババババ!!』
「っ!?」
「強くなりたいって言う意志は、誰にも負けはしない」
エイレイは俺の切った木を一瞬で持っていたカタナで粉々にした。それだけじゃなくて炎の魔法を応用し、一気に乾燥させ薪に仕上げた。途轍もなく繊細な魔法と力のコントロールをやらなければこんな芸当は出来ない。
意志の強さ、それがこの絶妙なバランスを生み出すのか。
「ふん、で?何しに来たんだ?」
「言ったでしょ?僕にもまだ分からないことがあるって、水の国の噂で聞いた話があってね。ここの森の何処かに洞窟があってそこには針地獄のように尖った岩が何本もあるらしいんだ」
「針地獄?そんなものがどうかしたのか?」
「気になるのはその岩はどんな手を使っても砕けないって言われてるんだ。もしかしたらその物質って言うのはまだ僕らの世界で発見されていない特殊な鉱石かもしれないって思ってね。一緒に行かないかい?」
「俺とか?他の奴は?」
「森羅君は水の国に、飯綱さんはパヴァロフとクラークと一緒に実験を、それの付き添いにニヒルさんもそこにいる。飯綱さんはニヒルさんにとても懐いてるみたいだからね。一緒にいれば暴れる事も無い。そしてレイノルド君は一応一か月経つからって事で念のため元の世界に帰ってもらったんだ。頃合いを見てまた呼ぶつもりだよ」
「あのウーネアとか言う女は?」
「ここにいるじゃないのよ」
俺の後ろにいた・・・お前はニンジャか。少しびっくりした。因みにこの女は英語が話せる。
「脅かすな、下手したら切りかかってたぜ?」
「相変わらず物騒なギャングだこと。でも、こう見えて私結構鍛えてんのよ?何なら勝負する?」
自信ありげだな、こいつの実力は見た事ないが・・・まぁ今は別にやり合う理由もない。
「今は無駄にデカい奴に興味はねぇな。やるとしたらエイレイとだな」
「なんだと!?もういっぺん言ってみなさいよこら!!」
「んが!!いでで!!」
腕長っ!避けようと思ったら思いっきり掴まれてヘッドロックかまされた。成程、言う通り強いな。
「駄目ですよディエゴさん?すぐに喧嘩腰になるのは。すみませんウーネアさん。ディエゴさんが失礼な事を」
「あぁ良いのよ。あなたが謝らなくたって」
「いえいえ、昔から小柄な体型を気にしてか、無駄に図体の大きい人には喧嘩腰な所がありまして、ちょくちょく喧嘩をしてしまっていたので」
「リリアちゃん・・・地味に今のが一番傷ついたわ・・・確かに身長が異様に高いのは認めるけど、そこまでかなぁ」
「君の身長は確か188センチだったよね。フランス人の基準は大体25歳で160センチ程、平均身長より30センチ近くは大きいね」
「この~!永零は余計な一言が多いわよ!!」
「あ、ごめん!いたい!いたい!!」
今度はエイレイに向かってヘッドロック。と言うか、あのエイレイに向かって一撃与えるのか。今のも俺から奴へとかなりの早業だ。
「む~・・・みんなして~、もう早く行くわよ!今度お姉さまに言いつけてやる!」
ウーネアはプイっと歩き出した。
「おねえさま・・・」
「はいはい、じゃあ行こうか。あ、リリアさんはどうする?」
「え?わたくしは、もちろん行きますよ?」
エイレイの質問にリリアは即答した。
「即答だね」
「わたくしは、何があろうともディエゴさんと一緒に行動すると決めていますので」
って言うと思ったよ。リリアにとって俺とは生きる為の導って前に自分で言ってたからな。だからここにも付いてきた。
「ん?何があろうとも?ねぇねぇリリアちゃん。まさかお風呂も一緒に入ってるとか?」
「はい?今はそれは無いですよ?別々に入れさせてもらってます」
「へ?今は?」
何なんだ?ウーネアの奴は何故そんな事を聞きたがる?
「はい、ここに来る前までは一緒にシャワーを浴びてましたね。水道代がもったいないので、週に一回だけ入れさせてもらってました」
「・・・こ・の!やろ~!!羨ましいなぁ!!お前!いっつもこんな美少女と一緒にシャワー浴びてたんだって!?」
「んがががあ!!何をそんなキレてんだよ!別に何か問題でもあんのか!?一応は俺たちは家族なんだぜ!?」
こいつは何なんなんだ。俺がリリアに何をするってんだ?
「前にお姉さまの背中流してあげようとお風呂に突入したらさ、お姉さまったら『親しき中にも礼儀ありですので結構です』って追い出されたのよ。あー!!お姉さまの裸が見たいよー!!」
あぁ、こいつは変態か。
「ディエゴ君・・・そろそろ行こうか」
「だな、リリア、行くぜ。後あんまりこいつに近づきすぎるなよ。こいつは変態だ。生き抜く術、変態と出会ったらどんな相手だろうと近づくな」
「はい!ディエゴさん!」
「ちょっとぉ!?リリアちゃんに何教えてんの!?私は変態じゃないって!あ、ちょっと待ってよもう!!」
そんな訳で俺たちはプチ旅行開始だ。
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「えっと、確か噂ではここら辺だったっけ」
「ん?あそこじゃないのか?ほら、そこの茂みの奥、風が流れてるぜ」
この冷たい風、近くに気温差のある空間がある証拠だ。それでもってこんなとこに人工物なんてないだろうしな。あるとしたら洞窟だ。
「あ、本当だあったわ」
ウーネアが茂みをかき分け洞窟の入り口を見つけた。
「うん、見つけたね。さてと行こうか」
「ん?ちょっと待って」
エイレイが洞窟に入ろうとした瞬間、ウーネアはそれを止めた。
「どうかしたの?」
「何か聞こえない?奥の方から・・・」
ウーネアは耳を澄ませている。
「風の反響音か何かじゃないのか?このゴーッって音だろ?」
「違う違う、その音の中よ。足音?ぴちゃぴちゃって聞こえてこない?」
「・・・いるね、確かに。どうやら身を潜めて僕らをさっきから見ていたらしい。そしてひっそりと囲んできてる。この洞窟、害獣たちの縄張りだったみたいだね」
エイレイは目を瞑り、地面に手を置いている。まさかそれで敵の位置を把握してるのか?
「あらほんと、ざっと・・・1、2・・・20くらいかな?徐々に取り囲んでいってるわね」
言われてみてようやく察知出来た。ったく、こいつらの聴力や視力はどうなっているんだ?俺も10年以上裏社会で生きてきたというのによ。若干傷つくぜ・・・
「うん・・・どう?この数、何とかなりそう?」
「いいわよ、最近体が鈍ってたし。ディエゴ、ちょっとその剣貸してくれる?」
「あ?あぁ・・・」
「どうもー」
ウーネアは俺の持っていた練習用の大剣をひょいと背中に担いだ。
「何する気だ?」
「あんたは見てなさいよ。後、動かないでね~・・・っしゃ、いっちょやろっか。イッツ!!ショウタイム !!!」
「はっ!?」
ウーネアは俺の剣を片手で軽々と扱い、一気に襲い掛かろうとしていた害獣を蹴散らした。
「イヤッハァァァァ!!」
そしてウーネアの攻撃は激しさを増していった。掴んでは投げ滅多切り、打ち上げた害獣が落ちてくるところに扇風機みたいに剣を回転させてミンチ。
「ヘイヘイ!!カモンベイビー!!」
煽って向かってきた奴を串刺し、からの真っ二つにして奴をまるで武器のように振り回す。
「フィニィィィィッシュ!!イエァッ!!」
分かった、このゴリラに喧嘩売るのは止めよう・・・
「ウーネアさん、昔からスポーツ万能で、ハイスクール時代はフェンシングの全国大会で優勝してるんだよ」
「エイレイ、俺はフェンシングはあまり知らねぇが、あんな競技じゃねぇだろ。あれって騎士道云々が重要な競技なんじゃねぇの?」
「うん・・・まぁね。彼女スイッチ入るとすんごいからねぇ・・・」
「女性ですらねぇもんな。ゴリラだなありゃ・・・」
「確かに・・・」
今初めてエイレイと意見が一致した気がする。
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「ふぅ、これで片付いたわね」
「お前・・・ギャングの俺が言うのも何だけどよ、他の生き物への慈愛の心持った方がいいぜ?」
「?」
まるでスポーツを終えたかのようないい笑顔で戻って来るな。
「さ、さぁこれで脅威は無くなったわけだし、探検と行こうか」
「おー!!」
「はぁ・・・」
俺たちは洞窟へと足を踏み入れた。
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創暦 ???年
ちょーいと、今日の話はショッキングだったかな。ウーネアは他にも幼少の頃から色んな学び事とかをやっててね、フェンシングをはじめ、バスケ、水泳とかのスポーツに加え、ピアノにバレエ。その全てにおいてウーネアは好成績を収めて、リーダー的な立ち位置にいたのよ。
これは親が学ばせたんじゃなくてね、ウーネア自らがやった事なんだよね。その理由はそこから人脈を形成してニヒルちんの情報を探る為って言うのが本当の理由。世の中誰か一人の為にそこまでやる人ってのはいるものなのよ。
さてと、次のお話は洞窟探検。針地獄と呼ばれる場所でディエゴたち一行が見たものとは!?
また、おいでね~。




