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第一の到達点 集いの時 1955年 5月15日

 やぁ、今日はちょっとしっかりと聞いてもらいたいから、お土産はまた今度ね。早速話していこうかな、第一の到達点のお話を・・・


 ・


 ・


 ・


 1955年 5月15日 ニヒル アダムス・ウーネア アダムス


 名古屋駅 


 「良かった!来てくれたんだねお姉さま!」


 ウーネアはぴょんぴょん跳ねて私の到着を喜んだ。


 「で、合わせたい人とは?どこにいるです?」


 「ダメ、まだ会えないよ。最後の最後に聞いておきたいことがあるの。お姉さまは真の平和が目の前にあるとしたら、今までの全てを捨ててそこに命を賭ける事が出来る?」


 「・・・昨日少し考えていたです。私の生き方は間違ってはいないと、そこには私の誇りと名誉があると。しかし、それでは全てを変える事は出来ないだろうとも考えていたです。私が本当に目指したかったのはこの程度ではない。けど、人一人の力の限界はここまでしか至れなかった。そう考えていたです。あなたのその目には、その限界は存在しない何かがあると私は見たです」


 「じゃあ」


 「私はこの目で確かめるだけです。未来は誰にも分からないのだから・・・」


 「分かったわ、じゃあついて来て。今から東京に行くよ」


 「と、東京!?今からですか!?」


 その単語に思わず大声を出してしまった。一体どうやって行く気なんだ?

 

 「そうだよ、覚悟は決まった?券は丁度二人分ある」


 あの切符って・・・まさか、つばめ号の、一等・・・


 流石はセレブ・・・とんでもないものを持っているな。


 「・・・私は昔から、一度決めた事は何があろうと貫き通すと決めてるです。迷いはない・・・行くですよ」


 私たちはホームに上がった。


 『まもなく、東京行き特別急行列車つばめ号が発車いたします・・・』


 名古屋近郊に住んでいる私でも聞き慣れない行先と列車名。


 「さぁ、早く乗らないと」


 「わ、分かったです・・・」


 妙にタジタジな気分で乗車した。豪華絢爛とはこの事だろう、あまり高くないスーツで乗るのは気が引ける・・・緊張して中々景色が見ていられない。


 「お姉さま、落ち着いて・・・ただの列車だよ?」


 「お前には分からないです。私は結構ケチな性格故にこう言うのには慣れねぇです・・・」


 「フフッ・・・お姉さまにも可愛いとこあるのね」


 「余計なお世話です!」


 「ハハハ、ゆっくり話そうと思ってたけどこれは無理そうね。展望室でも行きましょうか」


 「そうするです・・・」


 駄目だ・・・周りの視線が気になる・・・ならば食堂車。あぁ、なんだかこっちは比較的まだましか・・・でも、値段が安くて二百円台・・・たっか・・・


 結局休まる事なく十七時、東京駅に到着した。


 「列車に乗ってこんなに疲れてる人初めて見たよ・・・しかも一等・・・」


 「はぁ・・・はぁ・・・もうちょっと大衆向けの列車運行してくれませんかね・・・私はやっぱり三等で構わないです・・・」


 東京駅


 私は列車を降り、ホームに降り立った。


 「で、合わせたい人はどこにいるですか・・・」


 「改札を出て少し行った所、こっち」


 私は案内されるがままに歩いた。


 「あっ!!君たち!ちょっと良いかい?」


 「ん?」


 突然声をかけられた。なんだこいつ?


 「私、とある芸能事務所の者で・・・」

 「あ〜、今日は空手の稽古があるの、付き合えないわー。行きましょお姉さま!」


 「ん、んん?」


 私はウーネアに無理矢理引っ張られた。成る程、都会は怖いって事か、こんなのがうじゃうじゃいる東京ね。そう考えると名古屋もまだまだ田舎だな。


 「おーいね~ちゃんたち~」


 やれやれ・・・次はナンパか。そう言えばそろそろ仕事が終わる奴もいるか・・・


 「って、外国人?」


 声かけてきたのは黒髪だがこの堀の深い顔、どっからどう見ても西洋顔だ。


 「私は忙しいので、じゃあ」


 私はそそくさと行こうとした。けど・・・


 「いや!ちょっと待って!!お願いだから行かないで!!!」


 「あ?」


 「俺!イタリアの田舎から日本食作りたくってここまで来たんだけどさ!そんでここで働いてんの!でも俺どんくさくてさ!いつも親方にどやされてんの!!んで寂しいから彼女作ろうとしてもさ!なんかみんな俺の事怖がってさ!逃げられちゃうのよ!!あんたたちフランスだろ!?フランスと言えばイタリアと隣同士じゃん!!これきっと運命だよ!!だから置いてかないで~!!」


 ・・・駄目だこいつ・・・聞いたことがある、マンモーニとか言う奴だな。何か?この私に母みたいに甘やかして欲しいと?


 「お姉さま・・・」


 「うん、行くです」


 「あ!ちょっと待って!!奢るから!夕食奢ってあげるからぁ!!だからせめて俺の話を聞いてくれぇ~!」


 無視するに限る・・・と、言いたいところだがあまりに喚き散らかすものだから、ウーネアが憐みの感情を覚えている。


 「まぁ、少し可哀そうかも・・・お姉さま、済まないけどちょっとこの方のお話だけ聞いてあげよ?じゃないと、なんだか・・・哀れで・・・」


 「はぁ・・・ま、私も戦時中は人助けの旅をずっとしていたですから。その時に身寄りのなくした人たちとよく会話してましたですね。人助けと思ってやってやるですか・・・でも、一時間だけですよ」


 「あっりっがっと~!!!俺!レイノルド!レイノルド!ビル!ルーカス!!ってんの!!」


 「ニヒル アダムス」

 「ウーネア アダムスよ」


 「この恩は忘れないよ~!!そう言えばここの近くにイタリア人が出店したイタリア料理の店があるんだってさ!!そこ行こうよ~!!」


 ぐいぐい引っ張るな、私は正直お前みたいな奴は嫌いなんだ。嘆く暇があるのなら努力しろ、虫唾が走る。


 で、肝心なイタリア料理は私自身初めて食べた。これがスパゲッティと言うのか、煮込んだトマトなんて初めてだ。そしてこの葉っぱ、食べられる・・・なんだこの爽やかな味わいは・・・バジルと言うのか。初体験だ・・・私は日本に誇りはあるが、世界も世界で己に誇りと名誉があるのだな。これはその意志がなければ出せない味だ・・・


 「ふぅごっちそ~さま~!!悩み聞いてくれてありがと~」


 あ、ごめん。食べるので夢中で何も聞いてなかった。私は適当に相槌を打っていただけだ。ウーネアもそんな感じだったけど、このレイノルドとか言う男、口から口が出てくる勢いで話し続ける。喉が渇かないのか?


 「ウーネア、行くぞ。私はここで油売ってるつもりはない」


 「分かってるわ。行きましょ・・」


 「でぇっ!?」


 突然レイノルドが大声を出した。今度は何だ・・・


 「財布が・・・俺の財布が・・・ない」


 あ~あ・・・


 「だー!!どーしよ!!どーしよ!さっきまではあったんだよ!?あったんだって信じてくれよ~!!」


 はいはい、財布はさっきまではあったんだな。けど失くしたんだな、それは分かった・・・なら、


 「だったら・・・探すなりなんなりしろ!!」


 「ふべぇ!!」

 

 「あっちゃ~・・・」


 あまりの情けなさに堪忍袋の緒が切れ、ヨタヨタしていたレイノルドの顔面を蹴っ飛ばした。


 「私は!お前みたいな奴が大っ嫌いなんですよ!!財布を失くしたとかで何情けなく喚いてるですか!!無いなら無いなりの誠意を見せるですよ!レイノルド!お前に今出来る事は何か!!答えろ!!」


 「え、ごめんなさい・・・」

 

 「ち・が・う!!何私に向かって謝ってるですか!!謝るのは店員に向かってに決まってるでしょうが!このマンモーニが!!」

 

 「んがっ!!ま、マンモーニ・・・」


 「い、言いすぎ・・・」


 「良いんです。こんな奴にはこれぐらい言ってやらなければ。ウーネア、私は私の分を払うです。お前は何とかして払う方法を見つけるですね」


 やれやれ、とんだ時間を喰った・・・私たちは店を出た。


 ・


 ・


 そしてようやく探していた男に、いや、男たちに出会った。多種多様な人種、肌が浅黒い青年に、可愛らしい女の子、鷲鼻が特徴のソ連の軍服を着た男に。和服の似合うガタイの良い長い三つ編みの男。そしてその中に一際目立つのが白い髪の少年だ。子供・・・なのに、異様なほどに強い貫禄がある。


 「初めまして、と言うべきですよね。なんだかんだ僕はあなたと会った事は無いですから。僕の名前は、指宿 永零です。あなたの事は実は戦時中、所長・・・いや、将校さんからよく聞かされていたんです」


 指宿・・・指宿・・・どっかで聞いた事が、


 「え、確か指宿 永零って・・・あの時、広島に・・・」


 「へ?お姉さまと知り合いだったの?」


 「会ったのは初めてだけどね。僕は確かにあの日、あの場所にいた。でも、偶然が僕を生かしたんだ。あの日僕はワームホールを開き、別の世界に触れた。それが僕を生き長らえさせたんだ。その生き長らえさせた原因、それは異世界にある特殊な物質。僕は零祖細胞なんて読んでる」


 「零・・・」


 私はどうにもこの単語を聞くと、はらわたが煮えくり返る程の怒りがこみあげてくる。


 「どうかしたのお姉さま」


 「気にしないでくれです。どうにもゼロと言う単語が嫌いで、その言葉を聞くと昔を思い出すんです」


 「そうなんだね、でも零祖細胞は我慢してくれ、それでみんなに通しちゃったんだ」


 「構いませんよ。慣れれば大丈夫ですから」


 「零祖細胞はこの世のあらゆる現象を引き起こす。つまり、魔法のような性質があるんだ。そしてそれはどんな怪我をも治せる。僕が生きている理由はそれなんだ。そして、それを強く引き出せる存在を僕たちは探していた。そしてそれは君だ。将校さんから聞いてた時から思っていた。善之助さんや隆二さんとは何かが違うのが電話越しにも分かったんだ」


 「電話越しに分かったですか?」


 「半分はね。決め手はウーネアさんがあなたを探している事を知った時だった。僕は一度僕自身であなたを探そうとした。でも、あなたは中々見つからなかった。でも、そんな中もう一人あなたを探そうとしている人を見つけたんだ、それがウーネアさん。ウーネアさんはあなたが日本の名古屋にいると言う情報を手に入れ、行動してくれたおかげで僕はこうしてあなたに会えた。僕が求めていたのはこの存在しないであろう繋がりすら繋ぎ合わせる精神を持った人たちだったんだ。あなたたち姉妹は僕でも到達できない不思議な力がある。だから僕は君を呼んだ」


 成程、突拍子の無い話だが、妙に現実味がある話し方をする。作り話だとしたらちゃっちいが、現にこの時代でこれ程の人種の人間を集めたと言う事は間違いない出来事だ。


 「で、具体的に私に何をしろと?」


 「あなたの目指す世界を、一緒に創らないか?今の世界は無意味に人が死に過ぎる、今の世界には信念がない。だから無意味に争って、言葉をめんどくさがって暴力に訴える。そしてまた誰かが死ぬ。僕たちなら、この世の中を変えられる」


 指宿 永零・・・こいつは何者だ、まるで私の求める答えを既に知っているような口ぶりだ。そして、それを実現できる程の器があると思えてしまう。


 出来るのなら・・・


 「創りたいに決まってるです。この世の中・・・あの日の屈辱を、世界はもう既に忘れかけている。そしてこの私も忘れかけていた・・・無駄に殺すしか能の無いこの世の中を・・・変えてやる・・・」


 私は初心に帰った。私がこうして生きてきたのは理不尽に死んだ両親の為だった。それが原動力だった。今もう一度その原動機を回す。ただ人助けしただけでは意味がない・・・その先も、あの人たちが平和に暮らせる世の中を!!


 「凄い良い目だよ。ニヒル アダムスさん、じゃあ一緒に行こう・・・さてと、僕が求める存在は後一人・・・」


 「あ!!!いった~!!」


 私が永零の手を取ろうとした時だった。後ろからやかましい声が聞こえた。


 「ん?」


 「あんたですか・・・なんですかこんなとこまで追っかけてきて、通報されたいですか?」


 「いや!!そうじゃないって!!財布が見つかったんだよ~!!あの時蹴っ飛ばされた時に思い出したんだよ~!だからお礼を言わなくちゃって思ったんだ~!!あの時俺を蹴ってくれてありがと~!!」


 気色悪っ!!蹴られて喜ぶなんて・・・


 「俺決めたよ~!!きっとあなたは運命の人に違いない!!俺と結婚してくれ~!!」


 「あ゛!?」


 口が軽いなこの男・・・結婚とか言う大切な言葉を、易々と使いやがって・・・


 「まずい・・・」


 永零が何かを呟いた。


 「なぁニヒルちゃん!!俺と結婚してくれよ~!!俺にはニヒルちゃんしかいないよ!!絶対にそうに決まってる!!」


 「この、くっつくなです!!警察本当に呼ぶですよ!!」


 「嫌だ~!でもこの出会いだけは諦めきれねぇ~!!」


 「ピキピキ・・・」


 隣でウーネアが血管を浮き出している。あの時は温和だったがこいつですら相当頭に来てるみたいだ。


 ・

 ・


 「永零、時間が・・・」


 「うん、まさかこの僕に・・・こんなイレギュラーが。でも、何か妙だね。あの男・・・イタリア人かな、森羅さん」


 「少し褐色気味の堀の深い顔、そして僅かにイタリア語らしい発音になる事がある・・・恐らくそうだろうな」


 「うーん・・・座標と時刻はクラークに任せてるし、今からずらすのは危険すぎる。彼を巻き込むしかない・・・けど、耐えられるのか?」


 「分からん・・・だが、こうなってしまってはやるしかない」


 ・


 ・


 「頼むからぁ!!俺もうニヒルちゃんがいないと生きていけないんだよ~!!!」


 「この野郎!!いい加減くたばれです!!」


 「お姉さま・・・少々私も参加させてくれません?懐は広いと自負してたのですが・・・この男、最低過ぎますねぇ!!」


 「はぎゃぁ!!いったいよ~!!でも、なんでか幸せだ~!!」


 うわ・・・


 「・・・ニヒルさん、ウーネアさん。時間です!」


 「この・・・ゴミクズがぁ!!!」


 『バガアアアアァァァァァン!!!!!』


 私がプッツンとしたと同時に謎の大爆発が起こった。


 ・


 ・


 ・ 


 創暦前 ???年


 「はれ?ここどこ?って、いっててててててて!!!いったいーーーー!!」


 レイノルドは激痛でもだえ苦しんでいる


 「これが・・・異世界」


 私も相当体が痛い・・・だが、治っていく・・・立てる・・・


 「立てるの?凄いね、ニヒルさん。僕もしばらく最初は地面を這いつくばったよ。さぁ着いたよ。ここが異世界・・・沙羅曼蛇(さらまんだ)の国だ」


 中世の街とでも言うのだろうか、馬車が多く行きかい、服装も皮から作ったような住人を多く見かける。


 「ぎゃああああ死ぬうううう!死んじゃうよおおおおお!」


 と、感想を言いたいところだが・・・隣がうるさ過ぎてそれどころではない。


 『ガンッ!!』


 「んぎゃぁ!!!」


 私はもう思い切り奴の顔面を踏みつけ、かかとを口に押し付けた。これで黙るだろう。


 「これで静かになったですね」


 「お姉さま、流石です」


 「まぁ・・・僕としたことが計算外だったけど、成功だね。彼は後で僕が送り返すよ・・・」


 永零は申し訳なさそうに私に伝えた。

 

 「いや!!待って!!俺も!!俺もやるよ!!!」


 レイノルドは私の足を強引にどかした。


 「でも・・・君の精神力じゃ・・・」


 「俺こう見えてもやる時はやるんだよ!!マンモーニだって舐めんな!!これでもな!料理の腕に自信があるんだよ!!日本料理はまだ駄目でも!!本場イタリアンなら!あの店に負けないんだぜ!!俺は、何が何でもニヒルちゃんを離さないもんね!!」


 これにはあの永零も肩を落としていた。


 「やれやれ・・・僕の予想だと、君は一か月が限度だと思うけど・・・君もなんだかんだ異常な感情を持ち合わせてるのは間違いない。ここは賭けてみようか・・・僕は指宿 永零」


 「俺!レイノルドだ!レイノルド ビル ルーカス!!」


 「え、レイノルド?」


 一瞬、永零が不思議な顔をした。


 「どうかしたですか?永零さん」


 「いや・・・何でもない・・・とりあえず、これで揃ったみたいだ。ここが一つ目の到達点だ」


 ・


 ・


 ・


 創暦 ???年


 レイノルド、変な奴だったねぇ~。これが本当にクラークの言っていた化け狐の噂を知っていたって言うあの男なのかなぁ。イメージと全然違うでしょ?


 そうそう、ディエゴとリリアがあそこにいたのに何も話さなかったのはね、あの二人日本語が話せないから何言ってるのか分からなかったんだよ。


 さてと、次からは沙羅曼蛇の国でも出来事だね。馬車が行きかう異世界屈指の大国、沙羅曼蛇の国。そこで起きていく事件を離していこうかな。

 

 

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