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【本編完結】三丁目の大賢者さん〜異世界の大賢者ルーラーは、地球でのんびり過ごしたい〜  作者: 呑兵衛和尚


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23/30

レンタル23・魔導具生産中止、そして

『三丁目の大賢者さん〜異世界の大賢者ルーラーは、地球でのんびり過ごしたい〜』は、毎週月曜更新とかいう不定期更新です。

 無電柱化。

 正式には電線類地中化計画と言い、電線および関連施設を地中に埋設することである。

 ルーラーの住む札幌市は、おおきな幹線道路を中心に無電柱化を進めており、空を見上げても邪魔な電線が見えなくなっている場所が多いのが特徴である。

 そして、この無電柱化により、ルーラーの仕事が一つ増えたと言うのも事実。 それは何かというと。



「……新規納品が二十本? はぁ?」


 オールレントのカウンターでコーヒーを飲んでいたルーラーは、ひばりが取り出した書類に目を通して、思わず頭を捻っている。

 そこに記されていたのは、『汎用二型・飛行箒』通称『魔法の箒』の新規注文。

 そして別紙として添付されている仕様書を見て、ルーラーは絶句する。

 そこに記されていたのは、普段ルーラーが使っている『特型飛行絨毯』てはない、『高速タイプ・レース仕様』のスペックである。

 使用者の魔力に合わせた加速、コーナリング性能。

 それらが全て網羅された、『実に自分勝手な仕様書である。


「……なあ、ひばりや。日本政府は何を考えておるんだ?」

「簡単に説明しますと。競馬・競輪…競艇に次ぐ第四の公営ギャンブルとして、スカイレースを行う計画があります」

「ふむ……そのための騎手育成学校を建設し、魔法を使えるものを育成するのか……誰が講師をやることやら」

「その講師枠にも、師匠の名前が上がっているのですが」


 申し訳なさそうに告げるひばりに、ルーラーは心底嫌そうな顔をして見せる。


「これは断る。日本国政府との約定には、このようなことに対しての協力は行わないと最初から取り決めているからな」

「ええ、それで構わないと思います。所詮は、ルーラー師匠の魔術を外交政略に使いたい派閥の勇足ですから」


 そう説明してから、ルーラーに渡した書類のチェック欄にサインを入れて、ひばりはファイルにしまい込む。

 そして代わりに取り出したのが。


「こちらが本命だそうです。魔法の絨毯の追加注文、中東諸国への輸出用だとか」

「はぁ。以前にもあった、アラブの大富豪とやらか?」

「はい。今ですね、世界各国のセレブの間では、ルーラーさんの作った魔法の絨毯や魔法の箒を使って、ドライブするのがトレンドなんですよ」


 そうは言われても。

 魔法の絨毯や箒を作るには、それなりにレアな素材を必要とする。

 中でも貴重な素材が『ドラゴンティアー』という、小さな宝石。

 これはそのものズバリ、ドラゴンの涙を錬金術によって加工したもので、重力制御に必要な核の一つである。


「ふぅ。しかし、随分と無茶な注文を……と、おや、これは参ったな」


 アイテムBOXに保管してあった小さな袋。

 その中にはドラゴンドロップが収めてあったのだが、残りがかなり少なくなってきた。


「師匠、どうかしましたか?」

「ドラゴンドロップが残りわずか。魔石もミスリル鋼糸もかなり減ってきたわ。こりゃあ、しばらくは注文を受けても生産不可能じゃな」


 魔石、ミスリル鋼糸は、こっちの世界では手に入らない希少素材。

 特に魔石は、全ての魔導具の核となる術式を刻み込むのに必要なものである。

 それが少ないとなると、今後の日本政府からの注文も受ける事ができない。


「ち、ちょっとまってください。今の発注書分は足りるのですか?」

「それは避けてあるから問題はないが……追加注文は全て停止じゃな。というか、生産不可能じゃよ」


 こればっかりは仕方がない。

 ひばりも仕方ないと断念して、すぐに魔導省に連絡を入れることにした。


………

……


──四日後。

 最後の注文分を全て作り上げたルーラーは、それらを収納ポータルバッグに全て収める。


「ほいひばりや。これが最後の魔導具になるぞ」

「ありがとうございます。それで、このポーション関係も、生産不可能になりますか?」


 棚に並べられているスキルポーションを指さしつつ、ルーラーに問いかける。


「植物系素材は、裏庭で栽培しているから問題はない。じゃが、収納ポータルバッグの追加は不可能。ベヒモスの皮の在庫はもうないからな」 


 そのほかにも、作り出す事ができない魔導具を一つずつチェックするが。

 ほとんどの魔導具が生産不可能になってしまった。

 やはりネックとなったのが魔石不足。

 

「政府からは、どうにか素材を手に入れる手段はないのかとせっついてくるんですが。流石に異世界の物品を取り寄せるものなんてないですよね?」

「ないのう。小説のように、異世界から魔道具や素材を手に入れるようなチートスキルとやらがあれば、苦労はしないのじゃが」


 そんなものは夢まぼろし、小説やおとぎ話の世界。

 現実はもっとシビアである。


「ちなみにですけど。そういった素材って、どうやって手に入れていたのですか?」

「レア素材とかは、魔物の中でも上位種と呼ばれている奴らから入手する。魔石は、大体の魔物の体内に存在する器官のようなものじゃよ」


 大気中の魔素を吸収して、体内で魔力に変換する。

 その時の魔力の残滓が固まったものが魔石。

 それ故に、どんな生物の体内にも存在する。

 ルーラーが使えていた王国でも、魔術師の体内から高濃度魔石を取り出して売買するという違法犯罪が横行した時期があるくらい、上質な魔石は手に入らない。


「それはまた……私たちの世界の生物の体内には存在しない器官ですね」

「そもそも、大気に魔素がほとんど含まれておらぬからなぁ」


 ここにきて、完全に手詰まり。


「ダンジョンがあったなら、運良くミスリルとかも手に入る事ができたかもしれんが。この世界にダンジョンがあったりすると、少々厄介なことになる」


 ルーラー曰く、ダンジョンは魔族の生態兵器。

 そんなものがもしも地球に存在したとなると、魔族がこの地にやってくる可能性がある。


「例の、魔族侵攻ですか」

「うむ。と言うことで、この世界で魔導具を作り出すのは、そろそろ終わりとなるようじゃ」


 ルーラーの作り出す魔導具は、対外国政策の切り札でもある。それが手に入らないとなると、他国も強気に出てくる可能性がある。


「では、もう魔導具は作れないと?」

「ふむ……いや、ちょっと待て、ひょっとしたら、多少はどうにかなるかもしれんが」

「どうにか? 何か裏技のような策があるのですか?」


 ひばりの言葉に、ルーラーは静かに頷く。

 ルーラーのアイテムBOXの中には、魔導具に使う素材は底がつきそうであるが。

 ヒカル・トウヤのアイテムBOXの中なら?

 勇者である彼と一緒に、あちこちのダンジョンや魔族領を転戦していた時。

 その時に回収した素材の一部は、ヒカルのアイテムBOXの中にも収められてる。

 今のヒカルがそれを使いこなす事ができたら……。


 そう考えてから、ルーラーは頭を振った。


「いや、やはり不可能じゃな。やはり日本国政府には、断りの連絡を入れておいてくれ」


 今の光瑠は、勇者ヒカルではない。

 今、彼の記憶を呼び起こすことは、彼にとっても本意ではない。

 そう考えて、ルーラーは魔導具作成を諦めた。


 まあ、普段出荷している量の魔導具を作り出すことはできないが、多少は作れるだけの素材はある。

 それでも緊急時以外は、魔導具を作ることを断念することにした。


………

……


──オールレント・裏庭

世界樹の下で、ワーズが静かに目を閉じている。

 彼女は普段からこうして、地脈までマナラインを伸ばして変化がないか様子を見ているのだが。

 その日、ワーズはほんの僅かな変化に気がついた。


「……ダンジョンコアが生まれている……」


 それが何を示しているのか、ワーズはすぐに理解する。


「とうとう、魔族がこの地を見つけたね……」


 すぐさまルーラーに状況を説明するために、ワーズは立ち上がって店舗へと駆けていった。




いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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