第十五週:ブルースとブラザース(木曜日)
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『今日ここで、この公園で、こんなに素敵な人たちにお会い出来たことを大変嬉しく想います。』
と、ドギックスの 《エル》が言い、
『そして!我々はここで、我々の大好きなご主人さまを皆さまにご紹介出来ることをとても光栄に想います!』
と、ウルプレックスの 《ジェイ》が続けた。
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「ちょっとフェテス、どうしたのよ?!」
と、ハーネスまみれのシャ=エリシャは訊いたが、当のナビ=フェテス少年は口を半開きにしたままで彼女の声すら聞こえない様子であった。
「あ、もう」と、エリシャ。「始まっちゃったみたいね」
舞台の上では問題の 《エル》と 《ジェイ》が、ちぎれんばかりにシッポを振りつつ、《偉大なる先導者》の周りを飛び跳ねては駆けてヨロケテまた駆けていた。
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公園の至る所から拍手と喝采が聞こえ、それに応えるように 《エル》のブルースハープがよく晴れた 《ブレケレン》の空に響く。
『なんて素晴らしいお客さんなんだ!!』そう言って 《ジェイ》は更に観客を煽る。
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会場は爆笑と嘲笑の渦であった。
「おい、ありゃやっぱりジグのところの 《エル》と 《ジェイ》だぜ!」
が一方、
神聖荘厳たる 《偉大なる先導者》は深紅の衣装の中で長い手足をバタつかせながら自分の飼いドギックスと飼いウルプレックスであるところの 《エル&ジェイ・ブラザーズ》を舞台から追い出そうと必死である。
「おい!こら!エル!家へ帰れ!! あ、こら、ジェイ!やめろ!!袖を引っ張るな!!」
がしかし、
この彼の動作がかえって彼らの遊び心に火を点けたのだろう、二匹は一層飛び跳ねては走り回りヨロケ廻ってはまた走り出し、一向に舞台を降りようとしない。
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『だーれもーが、』と、《ジェイ》が歌うと、
『だーれかーをー』と、観客は応え、
『だーれもーが、』と、《エル》が歌うと、
『あーいしたいーー』と、観客の大合唱が続いた。
『ラララ、ラブ! ラブ! ラブ!!
ラララ、ラブ! ラブ! ラブ!!』
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※筆者注:
って、この注を入れるのをすっかり忘れていたが以上の歌は……あー、まあ、その、拙訳の拙さにはそろそろ慣れて下さい。
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「ナア、ナニカ見エテ来タカ?」と、前を這って進む博士にMr.Bが訊くと、
「なんか出口っぽいのが見えて来ました」と、博士が答えた。「あっちはなんか普通の部屋っぽいですね、ライトの灯りが見えますよ」
(続く)