第十五週:ブルースとブラザース(火曜日)
ワワワワ、ワワワワ、ワンワンワン。
と、ドギックス (地球で言う犬みたいな動物)の団体が喜び勇んで公園を駆け回ると、
ニャニャニャニャ、ニャニャニャニャ、ニャンニャンニャン。
と、ウルプレックス (地球で言う小型の狼みたいな動物)の団体もホルダン (地球で言うコタツみたいな暖房器具)で丸くならずに公園を駆け回り始めた。
するとその後ろを、彼ら彼女らに引き摺られるような格好で、ナビ=フェテス少年とシャ=エリシャが公園へ駆け込んで来た。
「なんでこんな時に散歩のバイトなんか引き受けたのよ!」と、手に喰い込む十数本のハーネスの痛みに耐えつつエリシャが訊き、
「だ、だって、実際、」と、日頃の運動不足と体中にまとわりつく十数本のハーネスを妬ましく想いながらフェテス少年が、「あ、“あの人”が歌ってた、のは、こ、このことなんだもん」と返した。
「――多分だけどね」
*
ピー、ガガガ。
と云う使い古しのマイク特有のイヤなイヤーな音がして、
『公園にお集りの善男善女の皆さま方!!』
と叫ぶ 《偉大なる先導者》のイヤなイヤーな声が公園中に響き渡った。
『皆さま方はご存じないかも知れないが!この!我らが美しき 《ブレケレン》の街にも、今まさに!悪の魔の手が迫り来たろうとしているのであります!その魔の手とは――』
*
コーーーーゥォン。
と、グレープフルーツスプーンの発する奇妙な振動音がして、
「ソコニ“抜ケ穴”ガ?」
と、目を (目を?)大きく見開きながらMr.Bが訊いた。
すると、これに対して博士は、
「あるんですよ……」と、床から1m程の高さに開いた“穴”に顔を近付けながら言った。
「オイ、ソンナ近付イテ大丈夫カ?」
「それが……なーんか私たちの知ってる“穴”とは違うっぽいんですよね」
「違ウ?」
「うーん?……「ほかの世界」へ繋がってるワケじゃなさそうなんです」
*
『――そうして、ゲィトンとモディオスと云う男たちの確乎たる愛情があったればこそ、トラヒオスの独裁政権も倒すことが出来たのであります』
と、《偉大なる先導者》の演説は続いていた。
『つまりそれほど、男性同士の愛情は社会にも個人にも利益をもたらすものであるワケですが、これに対して最近流行りの女同――』
*
すると、ここで突然、
ワーワ、ワンワ、ワンワンワン。
と、一匹のドギックスと、
ニャーニャ、ニャニャニャニャニャー。
と、一匹のウルプレックスがどこからともなく飛び出して舞台に向け駆け出して行った。
(続く)




