第一週:白い袖と金色の冠(木曜日)
さて。
それではここで、先に述べた三世大帝の父母――コンスタンティウス四世とファウスティナのロマンスについて、西銀河以外の読者のためにも、少し説明を加えておこう。
*
先ず、コンスタンティウス四世は、ランベルト一世とその二度目の妻フレイビアとの間に、四兄弟の三男として生まれた。
コンスタンティウス九才の夏、母フレイビアが彼の異母兄ガイウスと密通したとの告発が宮中に届き、直ぐさま一世大帝はガイウスを裁判に掛け処刑した。
しかし、その数ヶ月後、この告発が実は虚偽で、その出所が当のフレイビア本人であることが発覚、一世大帝は妻のフレイビアをも裁判に掛け処刑することとなった。
そうして、この事件が切っ掛けとなり、一世大帝の人間不信・人間嫌いにも拍車が掛かって行くワケだが、その余波は少年期を過ぎようとしていたコンスタンティウス四世にまでも及んだ。
コンスタンティウス十四才の秋、大帝は彼に西銀河帝国のため人質となって東銀河帝国との境界付近の惑星 《スーザオ》に行くよう命じた。
――表向きは『友好使節団の団長』と云うことであったそうだが、これは明らかな人質工作であり、且つ、体の良い厄介払いでもあったのであろう。
しかし、「死せるパパスグロリにもルリュイセスが涙」とはよく言ったもので、この極寒の地で彼は運命の女性と出会うことになる。
コンスタンティウス十七才の冬、スーザオ王家から与えられた彼の屋敷に出入りの賈人が劇芝居の一座を連れて来たことがあった。年々ふさぎ込みがちになる青年の気晴らしにでも……と考えてのことであったのだろう。
そう。
その日の劇で、パパスグロリの死に悲嘆に暮れる巫女ルリュイセスを演じた少女こそが、幼き日のファウスティナであった。
(続く)