第十四週:パジャマとニヤケ面(水曜日)
と、まあそんな感じで。
フェテス少年の住む 《フィクスバク》の地方都市 《ブレケレン》にもジュー・ジュラックス・ジュラン (いい加減長ったらしいので、以下、JJJ団と表記)の教義と云うか威光は届いて来ており、その地に住む男性や女性や両性や無性の方々の、何と言うか『世界を敵味方に分けたい!』と云うリビドーに訴え掛けていたワケである。
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「それでは私も繰り返させて頂きますが、私どもの店では、その性的指向によってお客様への対応を変えることは出来ません」
と、穏やかながらも毅然とした声で答えたのはシャ=エリシャの父・シャ=バリストンであり、これは本日七回目の説明でもあった。
するとこれに対して、
『それでは貴方は我々の教義に御反対の立場と云う訳ですな?』
と、亜空間通話の向う側で例のマスクをユラユラさせながらJJJの団員が言った――この質問は本日九回目である。
この物言いがよほど腹に据えかねたのだろうかシャ氏は、少し語気を強めると、
「私どもがどうこう以前の問題です!」
と、腰を椅子から浮かしつつ言った。
「星団法並びに現在の帝国法では、思想や宗教、学問はもちろん、肌の色や性的指向などを理由としたあらゆる差別は禁じられています!」
――ちなみに、この説明は十一回目だ。
『差別ではない!区別だ!』
「入店を拒否することのどこが区別だ!」
『そうカッカなさるな。そもそも、預言者モーシャスが恒星ブルガの位置を変えられた際、そこには青も尚偉も女性間同性愛者も――』
「そんなもんワザワザ本に書かなかっただけだ!!」
ブツン。
と、シャ氏は亜空間通信のスイッチを切ると、
ドスン。
と、椅子に座り直した。
――こんな会話が今週はもう四度目だ。
(続く)