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第十四週:パジャマとニヤケ面(月曜日)

 ジュー・ジュラックス・ジュランの恐ろしさは、その教義の理不尽さ狭隘さもさることながら「誰がその組織に属しているのか?」が――恐らく組織内の人間にも――十分には理解出来ないと云う点にあった。


 彼らは毎年清明の時期になると各主要都市の公園や広場に赴いては恒例のパレードを行う。深紅の衣装に奇妙な五角形のマスクを被り、どこの誰とも分からない 《偉大なる先導者》に導かれて歩み出しては組織の力と威光をその地の者たちに示さんとするのであった。


     *


「どう?何か見える?」と、公園の繁みに隠れながら幼なじみのシャ=エリシャは訊き、


「ダメだね実際」と、首を横に振りながらナビ=フェテス少年は答えた。「全然なんにも見えないよ」


     *


 さて。


 この時彼が持っていたのは八つ年上の従兄の部屋から拝借して来た『XYZ望遠鏡』と云う大変高価な透視用秘密道具であったのだが――


 まあ、何故たった八つしか違わない従兄の部屋にそんな高価な道具があったのかは、一度でも思春期を経験したことのある男性諸氏にならご理解頂けるだろうから省略するとして――


 彼らジュー・ジュラックス・ジュランの衣装及びマスクにはあらゆる透過光線を遮る特殊生地が使われていたため、その 《中の人》を確認することは出来なかった。


     *


 ピー、ガガガ。


 と云う使い古しのマイク特有の嫌な音がして『団員の諸君!』と叫ぶ 《偉大なる先導者》の声が公園中に響き渡った。


     *


「今度は?」と、舞台裏手のフィクスバオオケヤキの下に移動しながらエリシャが訊き、


「こっちもダメ」と、フェテス少年は答えた。「声紋も完全にデタラメなものになってる」


     *


 さて。


 この時彼が耳に付けていたのは、こちらも先述の従兄宅から拝借して来た『聲の形をアナライザー』と云う大変高価な声紋分析秘密道具だったのだが――


 何故たった八つしか違わない従兄がそ(中略)なので省略するが――


 彼らジュー・ジュラックス・ジュランのマスクには特殊な音声変換器が内臓されていたため、その声から 《中の人》を特定することも、これまた出来ないのであった。


     *


「困ったわね」と、オオケヤキの枝を器用に上りながらエリシャが言い、


「実際、《中の人》が分かればやり方もあるんだろうけどね」と、木の下からフェテス少年が応えた。


 と同時に――、


 チャーン、チャカチャ、チャッチャ、チャカチャ、


 チャーン、チャカチャ、チャッチャ、チャカチャ、


 と云う六弦楽器の軽妙な音楽が始まった。



(続く)

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