第十三週:恋人とJJJ(水曜日)
「ちょっとフェテス、それはアンタが食べちゃダメなヤツよ」と、少年の叔母ハビ=ヤハビは言った。「子どもが『願叶七龍珠』なんか食べたら眠れなくなっちゃうわ」
そう叔母に言われて少年は、その“何だかよく分らないケモノ”の肉塊が入った鍋に入れ掛けていた指を離すと、
「じゃあこれ全部、叔母さんとお姉さんだけで食べるの?」と、訊いた。
「今日一日で食べるワケじゃないけどラハリは身重だからね、しっかり食べないと」
少年の問いに叔母はそう返すと、指で“何だかよく分らないケモノ”の肉の固さを確かめてから、両手に持ったゴドピ獣刀包丁でその肉塊を七つに捌いていった。
「美味しそうだね」と、少年は言い、
「言ってもダメよ」と、叔母は答えた。「食べさせたら私が姉さんに叱られるわ」
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さて。
先日も書いたとおり、4230年代後半になってジュー・ジュラックス・ジュランが復活した理由については「まったくもって意味不明」としか言いようがないのだが、それに輪を掛けて意味不明なのは、本来彼らが迫害対象として来た青人や尚偉人がいない・少ない惑星において彼らは、また新たな迫害対象を探してしまうと云う点であろう。
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「《フィクスバク》を第五の 《ソディム》にしてなるものか」
「女性間同性愛者たちは西銀河帝国の乗っ取りを企てている」
「彼女たちの集会所の地下には惑星破壊爆弾が隠されており、彼女たちは集会のあとその前で乱交にふけっているのだ」
等々の流言飛語が彼らの中ではまことしやかに語られたそうだが、先の大戦から二十年、憎むべき対象を必要とする連中は、その数を日に日に増やして行ったようであった。
(続く)




