第一週:白い袖と金色の冠(水曜日)
さて。
占い師の言に従いファウスティナは、生まれたばかりの赤子を――多分、涙ながらに――林の奥に棄てて来るよう侍女に伝えた。
そうして侍女は、ファウスティナに命じられたとおり、林の奥深くにその赤子を置いて来たのだが、どう云う偶然の巡り合わせか、丁度そこを住処としていたイイニシモハシブトオオトカゲの番いが、この赤子をその背に乗せて屋敷まで運んで来た。
不思議に想った侍女は今度は別の山中へと赤子を棄てに行ったが、これもどう云う偶然の巡り合わせか、ちょうどその日その山中には宙から大型の宇宙円盤が墜ちて来たところで、赤子を捨てるどころの騒ぎではなかった。
困った侍女は、その帰り道、偶然見つけた小さな池の、厚い氷の張ったその上に赤子を棄てたが、そこに、これもどう云う偶然の巡り合わせかまったく全然皆目見当も付かないが、一匹のパーセルヒラドライチョウのメスが飛んで来て、その純白のつばさで赤子を覆い暖め始めたのである。
ここまで来てこの侍女は『ああ、もう、ワテほんまによう言わんわ』と、親類縁者もいなければ立ち寄ったことすらない南西銀河特有の方言で独り言つと、ことの一部始終をファウスティナに伝えた。
これを聞いたファウスティナは、この赤子を神の皇子と想い、ついに収養して育てることとし、パーセルヒラドライチョウのメスが彼を助けたことにちなんで、名を 《フラウス》とした。
――《フラウス》とは、彼女の故郷の神話に出て来る不死の鳥の名で、一説によればパーセルヒラドライチョウの始祖とされる鳥だそうである。
三世大帝の髪は夏季のパーセルヒラドライチョウのような褐色で、壮年を過ぎてからは冬季のそれと同じ純白へと変わった。手足は身体と比して大きく、まぶたには生まれつき朱が入っていたと云うことである。
(続く)