第十三週:恋人とJJJ(火曜日)
「――それ故、その男にとっては、戦場で持ち場を離れたり、または武器を投げ出したりするところを愛する少年に見られることほど耐え難いことはないであろうし、また彼はそれよりもむしろ敵異民族の持つムジョルニアや風暴破壊斧の雷撃で死ぬ方を選ぶであろう。
ましてや、愛する少年を見捨てて逃げ出したり彼が危地に陥るのを見ても救い出そうとしなかったりするような臆病者は、我々男を愛する者の中には一人もいないのである。
それはつまり、言い方を変えれば、我々男にとって、男を愛しその男に愛されることほど重要且つ名誉で、それにより“勇気を吹き込まれるもの”はないのである」
と、その緑の顔を真っ赤に染めつつ口角泡飛ばしながら――まあ、奇妙な五角形のマスクをしているので実際のところは見えないのだけれど――その壇上の男は言った。
すると、この御高説に対した会場に集いし五角形のマスクマンたちはヤンヤヤンヤの大喝采を彼に送ったのだが、それを受けた壇上の男は冷静を装いつつこれを制すると、
「しかるに!」
と、そのマスクで見えない緑の禿げ頭を真っ赤にしながら続けた。そんなに熱心に何の話をしてるんでしょうね?
「最近、巷を賑わしている女同士の愛者連中と云うのはなんだ!!」
……うん?
「彼の賢人ベタリファトスが語ったように、我々男が男を追い掛けるのは、《全主》族との戦いで失われたその半身を探し出さんがためである!
がしかし!そもそもが全き性である女が女を追い掛けるのは、ただただ快楽のため、好色のためなのである!!」
…………はあ?
「であるからして、我々健全な男を愛する男達の為すべきことは、ただただ快楽の虜となった女達を正しき道へと戻すことである!」
(続く)