第十三週:恋人とJJJ(月曜日)
「叔母さんの恋人が妊娠した?」
と、いつもは糸のように細い目を大きく見開きながらシャ=エリシャは訊き返した。
「子宮移植手術をしたってこと?」
この質問に対してナビ=フェテス少年は、
「違うよ、今の叔母さんの恋人は心も体も女の人だもん」
と、バニラとチョコレートのアイスにストロベリーのソースが掛かったカップを彼女に渡しながら言った。
「でも実際、生まれて来る子どもの遺伝子には叔母さんのも半分入っているらしい――詳しいことはよく分からなかったけど」
「ふーーん……あなた、また何かした?」
*
さて。
4230年代後半にジュー・ジュラックス・ジュランが復活した理由については様々な分野の様々な専門家が自説を展開しているが、それでもやはり、これと言った説得力のある説明がなされているとは言い難い。
ある者は二百年以上続く不景気が西銀河全体を覆い続けた結果だと言うし、またある者はエスラグ星ゴドピ族の栄養満点滋養食『願叶七龍珠 (願いを叶えて七龍ボール)』が帝都を中心に大流行したからだと言った。
まあ、スパイスがふんだんに使用された滋養強壮食の流行と青色人種並びに彷徨える尚偉人を社会から抹殺しようとする秘密結社の黄泉帰りにどのような因果関係があるのかはその鈍器にもなりそうなクッソ重い論文を読んでもまったく分らなかったが、
取り急ぎここで重要なことは、ある時期、西銀河のあるエリアでは、相当数の惑星たちが、この非道極まりない秘密結社の虜になってしまったと云うことであり、
また、フェテス少年の暮らす 《フィクスバク》のような青人が八家族、尚偉人が三人 (しかも異星からの長期出張者)しかいないような惑星では、その攻撃対象が女性間同性愛者に移ったと云うことであった。
(続く)