第十二週:チェスと木星(土曜日)
「“特に 《サカタッティ》や 《ジバレー》等の種族はこの『落ち損なう』を意識的且つ偶然的に行って――”……って、なに???」
あら、グルッと廻って自分の方に戻って来ちゃいましたね。
「……なんだコリャ?」
だから、この『指南書』は実際の役には立たないってのが銀河もっぱらの評判でして――ちょっと見せて貰っても良いですか?
「ああ、どうぞ――しかし、どうしろってんだろうな?確かに仲間やセイの兄さんに訊くのが手っ取り早いんだろうけど、アイツら一度出て行くと全然戻って来ないしなあ」
えーっと、“――偶然的に行っており、彼らへのインタビュー及び寝食を共にしたフィールドワークを通してそのことを解明した素粒子物理学者ダネイと応用生命倫理哲学者リーの二人組は――”って、インタビューとかされたことあるんですか?
「あー、どうだったかなあ?時々そうやって俺たちの生態調査って言うの?そう云うことするヤツらいたけど――」
あ、なんか写真も付いてますよ、ホラ。
「うーん?こんな禿げたチョビ髭メガネのおっさんは知らねえなあ――」
まあ、写真も古いですし忘れちゃったとかですかね?
「まあ、あとはその本がウソ吐いてるとか?」
あり得るなあ――だってこの後もっとスゴイこと書いてますよ?
「どんなの?」
えーっと、で、二人も飛べるようになったそうなんですが――“そんな彼らが設立した飛行クラブもある。”
「なんでだよ?!」
まあまあ――“そうして、そこに入会すれば、空を飛ぶため勘所、いわゆる『注意取られ』の手伝いをしてくれるのである。”
「……どうやって?」
(続く)