第十二週:チェスと木星(金曜日)
え?なに?今日はお便りの紹介から?――久しぶりだねえ。
えーっと、なになに……、
『カシヤマ先生!こんばんわ!!』
はい。こんばんわ!!
『いつも楽しくお話読ませて頂いております!愛しのロクサーヌッ子 (*ペンネーム)と申します!永遠の17才でっす!!』
えーっと、はい。元気があって良いですね!
『今日は博士たち (博士がメメメΣ (●´д`●)メチャカワァー)の乗っているボックスについて質問┐(♉。♉)┌???があり、お便りさせて頂きました!!』
うーーん?……はい、なんでしょうか?
『箱の中で雨がふったり博士がシャワールームから出て来たりと、とってもおっきなボックスのようですが、森の中を飛んでる感じなんかを見ると、そんなにおっきいようにもおもえません。…………どうなっているのでしょうか (●´・×・`●)?』
え?
……ひょっとして第一部読んでない?
*
さて。
何週間か前のこの連載でも触れたかと想うが、博士たちの乗っている 《タイムボックス》は、第一部で登場したMr.Blu‐Oのポッドのパクリ・模造品である。
が、そこはそれ、TP技術部の不断の努力と熱意により、ジムⅡとМkーⅡの間ぐらいのレベルにはパクれた模造品である。
であるが、そんな中でも特にTPの技術者たちが最も悩みながらも最も見事にパクれたのが、Mr自身“昔の地球のドラマからパクった”と言っていた『次元超越機能』所謂『なんで外より中が広いの?!機能』である。
この詳しい理屈は 《時主》族の次元工学を知らない人間には全くの意味不明であるし、しかも例の 《四次元内ポケット》とも異なる技術だと云うのだから、正直この作者にもチンプンカンプン全くもって意味不明なのでバッサリ端折らせて頂くが、要は『外よりも中を広くするための機能』のことである。
なので、TPのタイムボックスで言うと、その外見は縦1.0~1.5m×横1.0~1.5m×高さ2.5~3.0mを行ったり来たりしているぐらいの大きさで、その中の方は…………まあ、その時の予算と所有者のキャラクターによって様々である。
ちなみに、博士のボックスで言うと、その予算をどこからかすめ取って来たのかは永遠の謎ではあるが、メインコントロールルーム (直径約20m)の他に、四畳半の書斎、バベル的図書室、シャワールーム、バスルーム、トイレ、ランドリー (コイン式)、婦人用クローゼット、クリケット練習場、昼寝用の寝室、二段ベッド付きの寝室、来客用の寝室、キッチン兼食糧保管室、部品製造工場、等々が装備されており、これでいつまた 《宇宙の終わりの直前》に飛ばされても暫くの間は楽しく陽気に暮らせるように出来ていたりする。
*
「博士ーー!!」と、そんなバベル的図書室の七つある出入口の一つでストーン女史が叫んだ。「そろそろ本部に戻りますよーー!!」
すると、この声に応えるように博士が、
「分かりましたーー!!」と、『太陽系の歴史』コーナーから叫び返した。「この調べ物が終わり次第そっちに戻りまーす!!」
*
「アレ?博士ハ?」と、Mr.Bが訊き、
「調べ物が終ったら来るって」と、ストーン女史が答えた。「運転は私に任せるって」
「大丈夫カ?」
「大丈夫よ。“この子”とは仲直りもしたし、この前みたいなことにはならないわ」
そうストーン女史は言うと、優しく“この子”のコントロールパネルを撫でつつ、「ね?そうよね?」と言った。
――が、直後、
ギギギギギギギギギーーーーーギャース。
と云う盛大なブレーキ音と共に、
ガックン。
と、“この子”は急停止を起こした。
(続く)