第十二週:チェスと木星(水曜日)
ブブブ。
グオン。
シュン。
ギギギギギギギギギーーーーーギャース。
星団歴4006年――と云うか今回も西暦の方が分かり易いかな……えーっと、西暦2001年。
太陽系。
火星と木星の間の何処か。
くるくるくるくる。
と、派手な黄色の物体が宇宙の暗闇をいずこかへと向け飛んで行っている。
多分、このまま放っておけばエッジワース・カイパーベルト辺りまで行って1000年後ぐらいに彗星捕獲船とかに発見されたりするのだろうけれど、それはまた別の宇宙でのお話なので省略させて頂くとして、こちらの宇宙では、そんな遠くまで行く代わりに、緑と云うかピンクと云うか間違ったクラゲオバケみたいな不定形生物が、そのくるくる廻る黄色の物体――二百年以上前の地球製宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士――に接近、ピタッとくっつくと、後ろの方でホォーン。と浮かんでいるタイムボックスに向け手を振った。
すると、その合図を受けたタイムボックスの中から、ピョッ。と云う感じに超強化炭素繊維のウェブが打ち出され、そのクラゲオバケの所までフワフワしつつ飛んで行った。
*
「えーっと、」と、運び込まれた黄色い塊の中の顔を覗き込みながら博士が言った。
「名前はフラなんとか・プール。宇宙飛行士で木星探査船『大発見号』――だっさい名前ですね――の乗組員だったんですが、機械の故障で宇宙に放り出されて凍死――のハズだったんですけど、別に助けても歴史には影響ないってことで今回の救助対象となりました。いやあ、それにしても派手な宇宙服ですね」
それから彼女は、四次元内ポケットの中からタイムパトロール特製『復活カンタン!蘇生美肌クリーム』を取り出すと、
「てことでライリーさん、服を脱がしてこれを塗って上げて下さい」と、続けた。
(続く)